[4月26日10:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
朝食を終え、出発の準備を整えた稲生達はフロントに鍵を返した。
オーナー:「ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
稲生:「お世話様でした」
と、ホテルの外に1台の車が止まる。
黒塗りのベンツGクラスだ。
あの車に乗っている知り合いは1人しかいない。
藤谷:「おー、やっぱりいた!」
車から降りて急いでホテルに入って来たのは藤谷春人。
顕正会員だった稲生を折伏し、法華講へと導いた教化親である。
所属支部では壮年部の班長をやっている(正証寺では、基本的に40歳を過ぎたら青年部員は壮年部員になる)。
仕事は土建会社の役員。
但し、社名が藤谷組で、藤谷自身が強面ということもあり、『そっちの組』の人だと思われることが多々ある(最近は山口組以外は『○○会』の方が世間的にはよく聞かれるので、顕正会もややもすれば【お察しください】)。
で、藤谷自身も“魔の者”との戦いに巻き込まれたクチであり、“魔の者”(の眷属)の手に堕ちたイリーナを救い出した功績から、『協力者』となっている。
稲生:「藤谷班長、どうなさったんですか?」
藤谷:「いやあ、稲生君の御両親から、このホテルに泊まってるという話を聞いてねぇ。急いで駆け付けたんだよ」
稲生:「それで、何の御用ですか?僕達、これから出かけるんですけど……。(街頭折伏の手伝いだけは勘弁よー)」
藤谷が街頭折伏をする度に警察がやって来る件について。
藤谷:「これから魔界に行くんだって?だったら、お土産にこれを持って行ってくれよ」
稲生:(魔界が最早、海外旅行の行き先レベルw)
実際、魔界とはいうが、地獄界のようなドロドロした所でもなければ、冥界のように静まり返った闇の世界というわけでもない(でも、そこにゴルフ場とカジノを作った元・大魔王バァル)。
正にファンタジーゲームの世界なのである。
稲生:「何ですか?」
藤谷:「まあ、見ててくれ」
藤谷は助手席から台車を降ろすと、車のハッチを開けた。
そこには段ボールの山が積まれている。
それを慣れた手つきで台車に降ろして行く。
稲生:「何か、デカ過ぎません?」
マリア:「中身は何?」
藤谷:「賞味期限あと1週間で切れる保存用ビスケットと乾パン、それから缶入りのパンに、缶入りカップヌードルもあるぞ!」
イリーナ:「ははぁ……。おおかた、会社の備蓄倉庫を整理していたら出て来たってことね?」
藤谷:「ガチです。日本の美味しい保存食を、魔界の恵まれない子供達に……」
稲生:「いるのかな?」
イリーナ:「あのアルカディアシティにもスラムはあるからね。そういう所に持って行けばいいか」
稲生:「でも、こんなデカい段ボール何箱もどうやって持って行くんですか?」
イリーナ:「まあ、見てなさいって。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
イリーナが呪文を唱えると、空間の中から宝箱がいくつか出て来た。
イリーナ:「この中に入れちゃって」
藤谷:「うっス!」
藤谷は宝箱の1つを開けた。
中身は空である。
大きさは段ボール箱が1つ、スッポリ入るくらい。
藤谷:「おお~、サイズがピッタリっスね~」
イリーナ:「でしょ?」
マリア:「師匠!この宝箱、勝手にちょこっと開いて牙を覗かせましたよ!?」
ミミック:「ニヤ……」( ̄ー ̄)
イリーナ:「あ、ゴメン!これ、ミミックだったわ」
マリア:「何やってるんですか!危うく死傷者を出すところでしたよ!」
イリーナ:「すぐに交換するわね」
イリーナ、宝箱に交じって召喚してしまったミミックを強制送還した。
代わりに、本物の宝箱の空き箱を召喚する。
イリーナ:「これで手ぶらよ」
藤谷:「いいですねぇ!」
イリーナ:「スラムの炊き出し代わりにしてもいいし、確かあの町にも児童養護施設はあるから、そういう所に寄付してもいいかね」
稲生:「……ですね。それじゃ、魔界まで行って来ます」
藤谷:「おう、パスポート持ったか?」
稲生:「海外旅行じゃありません!」
しかし、もはや魔道士達にとっては海外旅行レベル。
オーナー:「皆さん、地下に行けるようにしましたので……」
稲生:「ああ、どうもすいません」
オーナー:「エレーナ達はまだ寝てるみたいなので、お静かにお願いしますね」
イリーナ:「昨夜は大変だったものねぇ……。ねぇ、2人とも?」
稲生:「す、すいません……」
マリア:「何で私達に振るんですか……」(←稲生の部屋で【イチャイチャ】【ラブラブ】していたので、強気に反論できない)
エレベーターに乗り込んで地下階へ向かう。
そこでエレベーターを降りて、奥へと歩いた。
稲生:「まずはどこへ行かれるんですか?」
イリーナ:「やっぱり魔王城かしら。一応、ポーリン姉さんに挨拶しておこうと思って」
エレーナ:「ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁぁっ!」
バァンといきなりエレーナは自室のドアを開けた。
慌てて起きて来たのか、上は白いTシャツに下は黒い短パンだけである。
マリア:「何だよ?せっかく静かに歩いてやってるってのに……」
エレーナ:「イリーナ先生、これをうちの先生に渡して頂けませんか?昨夜の報告書です」
イリーナ:「あら?報告書なんて書いたの?偉いわねぇ」
A4サイズの封筒をイリーナは受け取った。
エレーナ:「逆に、私から報告書を預かったと言えば、うちの先生も会ってくれると思います」
イリーナ:「それもそうね。じゃあ、これは預かっておくわ」
エレーナ:「よろしくお願いします。私も仕事が終わったら、魔界に行きますから」
マリア:「オマエも行くのかよ……」
エレーナ:「行っちゃ悪いのか、あぁ?」
稲生:「まあまあ」
イリーナ:「それじゃ行きましょう。魔法陣借りるわね」
エレーナ:「ういっス!」
イリーナ組が地下室の奥に進むと、清掃用具などに隠されるようにして魔法陣が床に描かれている。
これを退かそうとすると……。
上記写真と同じ物が現れた。
マリア:「…………」
マリア、それを無言で破壊する。
マリア:「師匠、障害物は退かしましたので、どうぞ呪文の詠唱を」
イリーナ:「マリア、あなた最近ちょっと怖いわよ」
イリーナは冷や汗をかきながら答えると、呪文の詠唱を始めた。
イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
魔法陣がマゼンタ色に光る。
イリーナ:「はい、いいよ。中に入って」
稲生:「はい」
マリア:「はい」
最後にイリーナが魔法陣に入ると、3人は光に包まれ、そして人間界から姿を消した。
朝食を終え、出発の準備を整えた稲生達はフロントに鍵を返した。
オーナー:「ご利用ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
稲生:「お世話様でした」
と、ホテルの外に1台の車が止まる。
黒塗りのベンツGクラスだ。
あの車に乗っている知り合いは1人しかいない。
藤谷:「おー、やっぱりいた!」
車から降りて急いでホテルに入って来たのは藤谷春人。
顕正会員だった稲生を折伏し、法華講へと導いた教化親である。
所属支部では壮年部の班長をやっている(正証寺では、基本的に40歳を過ぎたら青年部員は壮年部員になる)。
仕事は土建会社の役員。
但し、社名が藤谷組で、藤谷自身が強面ということもあり、『そっちの組』の人だと思われることが多々ある(最近は山口組以外は『○○会』の方が世間的にはよく聞かれるので、顕正会もややもすれば【お察しください】)。
で、藤谷自身も“魔の者”との戦いに巻き込まれたクチであり、“魔の者”(の眷属)の手に堕ちたイリーナを救い出した功績から、『協力者』となっている。
稲生:「藤谷班長、どうなさったんですか?」
藤谷:「いやあ、稲生君の御両親から、このホテルに泊まってるという話を聞いてねぇ。急いで駆け付けたんだよ」
稲生:「それで、何の御用ですか?僕達、これから出かけるんですけど……。(街頭折伏の手伝いだけは勘弁よー)」
藤谷が街頭折伏をする度に警察がやって来る件について。
藤谷:「これから魔界に行くんだって?だったら、お土産にこれを持って行ってくれよ」
稲生:(魔界が最早、海外旅行の行き先レベルw)
実際、魔界とはいうが、地獄界のようなドロドロした所でもなければ、冥界のように静まり返った闇の世界というわけでもない(でも、そこにゴルフ場とカジノを作った元・大魔王バァル)。
正にファンタジーゲームの世界なのである。
稲生:「何ですか?」
藤谷:「まあ、見ててくれ」
藤谷は助手席から台車を降ろすと、車のハッチを開けた。
そこには段ボールの山が積まれている。
それを慣れた手つきで台車に降ろして行く。
稲生:「何か、デカ過ぎません?」
マリア:「中身は何?」
藤谷:「賞味期限あと1週間で切れる保存用ビスケットと乾パン、それから缶入りのパンに、缶入りカップヌードルもあるぞ!」
イリーナ:「ははぁ……。おおかた、会社の備蓄倉庫を整理していたら出て来たってことね?」
藤谷:「ガチです。日本の美味しい保存食を、魔界の恵まれない子供達に……」
稲生:「いるのかな?」
イリーナ:「あのアルカディアシティにもスラムはあるからね。そういう所に持って行けばいいか」
稲生:「でも、こんなデカい段ボール何箱もどうやって持って行くんですか?」
イリーナ:「まあ、見てなさいって。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
イリーナが呪文を唱えると、空間の中から宝箱がいくつか出て来た。
イリーナ:「この中に入れちゃって」
藤谷:「うっス!」
藤谷は宝箱の1つを開けた。
中身は空である。
大きさは段ボール箱が1つ、スッポリ入るくらい。
藤谷:「おお~、サイズがピッタリっスね~」
イリーナ:「でしょ?」
マリア:「師匠!この宝箱、勝手にちょこっと開いて牙を覗かせましたよ!?」
ミミック:「ニヤ……」( ̄ー ̄)
イリーナ:「あ、ゴメン!これ、ミミックだったわ」
マリア:「何やってるんですか!危うく死傷者を出すところでしたよ!」
イリーナ:「すぐに交換するわね」
イリーナ、宝箱に交じって召喚してしまったミミックを強制送還した。
代わりに、本物の宝箱の空き箱を召喚する。
イリーナ:「これで手ぶらよ」
藤谷:「いいですねぇ!」
イリーナ:「スラムの炊き出し代わりにしてもいいし、確かあの町にも児童養護施設はあるから、そういう所に寄付してもいいかね」
稲生:「……ですね。それじゃ、魔界まで行って来ます」
藤谷:「おう、パスポート持ったか?」
稲生:「海外旅行じゃありません!」
しかし、もはや魔道士達にとっては海外旅行レベル。
オーナー:「皆さん、地下に行けるようにしましたので……」
稲生:「ああ、どうもすいません」
オーナー:「エレーナ達はまだ寝てるみたいなので、お静かにお願いしますね」
イリーナ:「昨夜は大変だったものねぇ……。ねぇ、2人とも?」
稲生:「す、すいません……」
マリア:「何で私達に振るんですか……」(←稲生の部屋で【イチャイチャ】【ラブラブ】していたので、強気に反論できない)
エレベーターに乗り込んで地下階へ向かう。
そこでエレベーターを降りて、奥へと歩いた。
稲生:「まずはどこへ行かれるんですか?」
イリーナ:「やっぱり魔王城かしら。一応、ポーリン姉さんに挨拶しておこうと思って」
エレーナ:「ちょぉぉぉっと待ったぁぁぁぁっ!」
バァンといきなりエレーナは自室のドアを開けた。
慌てて起きて来たのか、上は白いTシャツに下は黒い短パンだけである。
マリア:「何だよ?せっかく静かに歩いてやってるってのに……」
エレーナ:「イリーナ先生、これをうちの先生に渡して頂けませんか?昨夜の報告書です」
イリーナ:「あら?報告書なんて書いたの?偉いわねぇ」
A4サイズの封筒をイリーナは受け取った。
エレーナ:「逆に、私から報告書を預かったと言えば、うちの先生も会ってくれると思います」
イリーナ:「それもそうね。じゃあ、これは預かっておくわ」
エレーナ:「よろしくお願いします。私も仕事が終わったら、魔界に行きますから」
マリア:「オマエも行くのかよ……」
エレーナ:「行っちゃ悪いのか、あぁ?」
稲生:「まあまあ」
イリーナ:「それじゃ行きましょう。魔法陣借りるわね」
エレーナ:「ういっス!」
イリーナ組が地下室の奥に進むと、清掃用具などに隠されるようにして魔法陣が床に描かれている。
これを退かそうとすると……。
上記写真と同じ物が現れた。
マリア:「…………」
マリア、それを無言で破壊する。
マリア:「師匠、障害物は退かしましたので、どうぞ呪文の詠唱を」
イリーナ:「マリア、あなた最近ちょっと怖いわよ」
イリーナは冷や汗をかきながら答えると、呪文の詠唱を始めた。
イリーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」
魔法陣がマゼンタ色に光る。
イリーナ:「はい、いいよ。中に入って」
稲生:「はい」
マリア:「はい」
最後にイリーナが魔法陣に入ると、3人は光に包まれ、そして人間界から姿を消した。
「足りないと 嘆く者ほど 浪費する」(By神羅電気動力株式会社代表取締役社長 プレジデント神羅)