報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

原案紹介 2

2013-10-11 14:56:59 | 日記
 玄関には呼び鈴もインターホンも無かった。来訪者など、全く想定していないのだろう。しょうがないので、ドアをノックする。
「こんにちはー!稲生ユウタと言いますが、どなたかいらっしゃいますかー!?」
 何度かノックをして呼び掛けてみたが、中から応答は無かった。
「……留守かい?」
 威吹は藁製のブーツを脱ぎながら、訝しげにユタを見た。
「いや、どうだろう……?」
 試しにドアを開けてみた。すると、開いた。
「鍵が開いてるよ」
「居留守は困るなぁ。こっちは遠路はるばる武州から訪ねてきたってのに……」
「まあまあ」
 文句を言いたげな威吹に、ユタはなだめた。クイズ形式の道標に辟易していたのが、ここに来て文句という形になって出てきたか。
「とにかく、入ってみよう」
「うん」
 ドアを開けて、中に入る。
「お邪魔しまーす」

 玄関ホールは薄暗く、中に人の気配は無かった。向かって正面には吹き抜け形式の、2階に上がる階段がある。
「この場合、洋館の主人ってのは2階に住んでるんだったっけか???」
 ユタは首を傾げた。威吹はフンフンと鼻をヒクつかせる。
「誰かが住んでいるようだな……。空き家ではない」
 と言った。
「そりゃそうだろ」
 ユタも空き家だとは思わない。屋敷の周りや屋根の除雪はしっかりされていたし、ホールは薄暗いが、埃っぽいわけでも、朽ちているわけでもない。
「まあいい。奥の方へ行ってみよう」
 と、威吹。
「奥?」
「霊力は2階じゃなく、奥から感じる」
「おお、そうか」
 階段ではなく、左奥のドアを開けてみた。

 こんな森の奥に、電気は通っているのだろうか。左のドアを開けると奥に続く廊下があって、こりゃまた薄暗いのだが、まるで人感センサーの如く、廊下のランプが灯った。
「ユタ、気をつけて」
 威吹は髪の中から刀を取り出し、それを左の腰に差して言った。
「さっきから霊気が強くなってる。いきなり襲ってくるかもしれない。ボクから離れない方がいい」
「あっ、ああ……」
 ユタは緊張しながら頷いた。その時、何かを踏んづけた。
「うわっ!」
 ユタはびっくりして、威吹の手を掴んだ。
「……人形だな」
 威吹はユタの足元を見て言った。
「はー、びっくりした……」
 それはフランス人形によく似ていた。似ていたというのは、ユタはその人形を見てもっと別のものを連想したからである。
 緑色の長い髪をツインテールにしているその人形は、
「初音ミクみたいだ」
 と、思った。
「はつねみく???何だい、それ?」
 当然知らない威吹は首を傾げる。
「いや、別に……」
「全く。邪魔な人形だ。廊下のど真ん中で寝てやがって」
 威吹は無造作にその人形を掴みあげると、壁際に放り投げた。
「ダメだよ。人んちのもの、勝手に……」
 ユタは呆れて威吹に突っ込んだ。
 その時、威吹の耳には聞こえた。風を切る音が!
「くっ!」
 威吹が刀を抜くのと、奥から高速で武器を持った人形が飛び掛ってくるのは同時だった。
 ヒュウッ!と、威吹が刀で風を切る音がユタの耳にも聞こえた。
「何奴!?」
 そこにいたのは、フランス人形の衣装を着た人形が3体。しかし人形らしく、表情は固定的で変わることはない。しかし、手に持っている武器は、およそ人形には似つかわしくない大型でゴツいものだった。死神が持つような鎌と、西洋の騎士が持っていたようなスピア、そしてサーベルである。
「出ていけ。ここからすぐに」
 更に奥から、別の大きな人形が現れた。宙に浮かんでいる先ほどの3体の人形と違い、大きさが人間と等身大のせいか、ちゃんと廊下を歩いて……って!
(いやいや!人形じゃなくて人間だ!)
 ユタはそれに気づいた。表情が無く、また見た目も人形みたいな容姿をしていたからか、つい見間違えた。
「特に、そこの汚らわしい妖怪」
「何だと!?」
 威吹は無表情で冷たい目をしている女を睨みつけた。
「あ、あの、すいません!勝手に入ってしまって!僕達、ここに住んでいると言われてる魔女の人に会いに来たんです!あなたがそうでしょうか?」
「帰れ!」
 だが、ユタの質問に答えることもなく、ただ退出を勧告するだけであった。その言葉に応じるかのように、更に人形の数は2体増えた。
「ユタ、危ない!」
 刃物がユタの頭上をかすめた。
「来訪者の歓迎がなってないな、ここの屋敷の主は!」
 威吹は刀を抜いて、宙を舞う人形の1体に斬りつけた。
「!?」
 威吹の妖刀は人間は斬れない。なので江戸時代、人間の侠客と斬り合う機会にあった時は脇差を使用していたという。脇差は妖刀ではなく、本物だからだ。
 その妖刀が、弾き返された。
「愚かな妖怪め」
 女は右手を挙げて、威吹を指差した。手の空いている大鎌を持った人形が、それを威吹に振り落とす。
「ま、待ってください!すぐに出ますから!」
 だが、人形が攻撃する方が先だった。ところが、人形は刃のある方ではなく、反対側のハンマーになっている部分で、威吹を殴りつけただけだった。
 威吹は床に倒れこみ、意識を失った。
「2度と来るな!」
 威吹を抱えて逃げる刹那、背後から屋敷の主人と思しき女の冷たい声が背中に突き刺さった。
(威吹が簡単に負けるなんて……)
 ユタは絶望的になってしまった。
 そして、命からがら屋敷の外へ飛び出したのだった。

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3 コメント

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前回の解答 (ユタ)
2013-10-11 19:58:52
 ①B ②A(創価教育学会という名前でした) ③A ④A(厳密には元創価学会員を中心に、と言った方がいいのか) ⑤A(もはや都市伝説化している) ⑥A(ポテンヒットさん、すいません) ⑦6隊(私が御受戒したら、当時の隊長が飛ばされた。H隊長、どうもすいませんでした) ⑧B(多摩急行なら実在します) ⑨B(全国の私鉄の中でも珍しい両数だったもので) ⑩C
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訂正 (ユタ)
2013-10-11 20:02:44
 ⑦で、私が当時お世話になっていたのはT隊長でした。失礼しました。今どこで何をされているか不明ですが、ご健在でしたら1度お詫び申し上げた上で、法華講員として折伏させて頂きたいですね。
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補足 (ユタ)
2013-10-12 10:53:45
 こちらスマホだと文字化けがヒドいようです。記事の作成はPCで行っているもので、どういう文字を使えばスマホで文字化けするのか、まだ分かっておりません。それは、それだけまだスマホが使いこなせていないという醜態の証でありまして、やはりPCでの閲覧をお勧め致します。
 ガラケーの時は文字化けしなかったんで、多分そっちは大丈夫だとは思うのですが……。
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