報恩坊の怪しい偽作家!

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“ユタと愉快な仲間たち” 「富士宮での一夜」

2014-10-01 02:16:15 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月29日15:00.静岡県富士宮市 富士急富士宮ホテル 稲生ユウタ、威吹邪甲、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]

「はい。じゃあ、ユウタ君、マリアと2人ね」
「ええっ!?」
「冗談よ」
「ユタをいちいちからかうなっ!」
 というわけで、ツインが2部屋確保されていた。
「あの、本当に宿泊代はいいんですか?交通費も……」
 ルームキー片手にエレベーターに乗り込んだ4人。
 その時、ユタが口を開いた。
「ユウタ君の家に泊めてもらったからね。本当はまだ足りないんだけど……」
「いえ、そんな!十分ですよ」
「本当は、もっと請求した方がいいくらいだがな」
 と、威吹。
 ユタにとっては、マリアと1つ屋根の下で過ごせたことが何よりの……だったようで。

[同日16:00.同市上条 日ノ出山荘 藤谷春人、栗原江蓮、蓬莱山鬼之助、蓬莱山魔鬼]

「大石寺裏門の……新町駐車場のすぐ目の前ですか」
「そうだよ。さあ、降りた降りた」
 埼玉からここまでこんなに掛かったわけではない。
 確かに渋滞などもあったが、観光しながら来ただけのことだ。
「これなら丑寅勤行出れそうだな」
 藤谷は最後に車のドアをロックした。
「藤谷さん、今から行けば六壺の勤行出れそうだよ?」
 江蓮が自分の荷物を肩に掛けながら言った。
「おー、そうだなー。部屋入ったら、行ってみるかー」

 で……。
「オレ、江蓮と同じ部屋な!」
「ざっけんなっ!」
 部屋は和室2部屋確保だが、そこへ鼻息荒くしてキノが乗り出した。
 当然、江蓮本人と藤谷は猛反対。
「2人部屋だぞ?キミが栗原さんと入ったら、オレが妹さんと同室になっちゃうぞ?」
 するとキノはポンと手を叩き、妹である魔鬼の肩に手を置いた。
「魔鬼。ヘタすりゃ今夜、お前は処女膜を失うことになるかもしれねぇ。ケツの穴の処女も無くなるかもしれねぇ。だが、これは鬼族としての修行だ」
「うん。ウチ、頑張るのん!」
「妹を売る気か!てか、オレを何だと思ってるんだ!?」
「変態」
「ヘンタイ野郎」
「ヘンタイさん」
「ぐぐぐ……!」

 で、キノを宥めすかし、藤谷とキノ、江蓮と魔鬼の部屋割に落ち着いた頃には、六壷の勤行は終わっていたという。

[同日16:30.同市内ひばりヶ丘“富嶽温泉 花の湯” ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

 ホテルにチェック・インした後、少し休んでから4人は温泉施設に向かった。
 富士宮駅から発着している“宮バス”に乗れば楽に行ける。
「こうしてみると、仙台に行った時を思い出すね」
 建物の中に入って、イリーナが言った。
「あー、そうですね」
 しかしその会話にマリアが参加することは無く、俯いただけだった。
「まあ、ここは仙台のそこと違って、トラブることは無さそうですよ」
 ユタは取り繕うに言った。
「……ありがとう」
「じゃあ、夕食もここで取るからゆっくりしよう」
「はーい」

「キノ達は既に着いてるのかい?」
 湯船に浸かりながら威吹が聞いてきた。
「班長達は大石寺近くの民宿だよ。客殿で丑寅勤行出るとか言ってたな」
「丑の刻に勤行やられたんじゃ、周辺の魍魎達も形無しか……」
 威吹は肩を竦めた。
「あいつのことだから、栗原さんと同じ部屋に泊まるとかで騒いでるんじゃないか?」
「想像つくな」
 この時、キノは3回ほどくしゃみをしたという。
「キノの妹さんも一緒だって言ってた」
「蓬莱山魔鬼か。小娘だからと言って油断すると痛い目に遭う年齢だな」
「確か、もう中3だよ」
「食われる人間がいないか心配だ。……おっと。ユタは心配しなくていいよ」
「分かってる」
 ユタは大きく頷いた。
 妖狐&魔道師の護衛付きなんぞ、そうあることではない。

[同日18:00.同施設内レストラン ユタ、威吹、イリーナ、マリア]

「カンパーイ!」
 4人全員、20歳以上なので飲酒OKである。
 但し、マリアにあっては(ユタより年上であるにも関わらず)見た目が小柄で童顔ということもあってか、一瞬店員に怪しまれたが……。
「マリアの杖もできるし、あとはもうしばらく問題は無いね。さあさあ、食べて飲んで!」
「ありがとうございます」
 ユタはビール片手に、夕食の刺身に手をつけた。
「これもお前持ちか。ならば、頂くとしよう」
 威吹はお猪口を片手に箸を持った。
「マリアもガンガン食べて、ガンガン飲みなさい!」
「はあ……」
「顕正会員が見たら、『御遺命違背の堕落した法華講が』って言われそうですね」
 既にハイテンションなイリーナに、ユタは苦笑いした。
 もっとも、ここで信仰者はユタだけであるが。
(あれ?そういえばマリアさんて、あんまり酒飲まなかったような……?)
 ユタがテーブル挟んで向かい側に座るマリアに目をやると、グラスに入ったワインを口にしていた。
(そうでもないか)
「威吹君、はい。魔道師に酌してもらうんだから、貴重な体験よ?」
「へいへい。おありがとう。(頼んで無いけどな)」
「結構、イリーナさんて幹事向きですね?」
「そう?まあ、私はこうして皆でわいわい宴会するのが好きだからね」
「ポーリン師はウザいらしいけどな」
 マリアがニヤッと笑った。
「静かな所で飲み食いする方がいいらしい」
「なるほど……」
 ユタは頷いたが、少し違和感を覚えた。
 結構、マリアが痛飲している。
 イリーナが勧めるというのもあるのだろうか。
 フランス人形を駆使する魔法使いが、自身もフランス人形みたいな肌色をしているが、それが顔だけでなく肌全体が赤く染まっているように見えた。

[同日同時刻 同市内上条 日ノ出山荘・食堂 藤谷、江蓮、キノ、魔鬼]

「藤谷さん、私もビール一口」
「あと3年待ちなさい」
 藤谷は江蓮の希望をかわしながら自分で瓶ビールを注いだ。
「キノ兄ィ、ウチもビールぅ~♪」
「お前はあと5~6年待て」
「えー?ウチ、鬼族だよ?15歳で元服……」
「人間界の高校に通いてェとか言ってるヤツが何言ってんだ。ほら、江蓮」
「あいよ」
「ガンガン飲めよ」
「さりげなくビール勧めんな!栗原さんも飲んじゃダメ!」
 ここで飲める資格があるのは30代の藤谷、人間換算年齢25歳のキノだけである。
「キノ兄ィ、酔い潰してヤっちゃう作戦だったんだね♪」
「中学生がそんなこと言っちゃダメ!」
(本当に最近の中学生は【お察しください】。中等部、高等部登山の任務回って来なくて良かったぜ)
 そう思いながら、グラスを口に運ぶ藤谷だった。

 それぞれの1日は、こうして更けて行くようであった。

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1 コメント

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つぶやき (作者)
2014-10-01 10:06:47
差し当たり、小説の更新だけはしておこう。
仏法の話するとロクな事が無い。
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