報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「新しい仲間と敵と」

2015-10-10 15:25:59 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明(室内の時計によれば5時12分)天候:曇 洋館3F 井辺翔太]

 井辺はメイドロイドのダニエラから渡されたスーツを着ると、その足で洋館探索に向かった。
 何としてでも、ここからの脱出ルートを見つけ出さなくてはならない。
 或いは、連絡手段か。
 外に出て洋館の周りを探そうとするが、正門だの裏門らしき場所には行けなかった。
 もう1度部屋に戻り、今度はそこからメイドのダニエラが出て行った廊下を行くことにする。
 所々照明は点灯しているものの、廊下は外からの明かりが差し込まなくて薄暗い。
「!?」
 廊下の角に、大きな人影を見つけた。
 それは、ゆっくり井辺の所へやってくる。
「わっ!?」
 廊下を曲がってきたのは、井辺の身長よりも更に大きい体躯のバージョン3.0。
 赤いレーザーポインターのような光を井辺に向ける。
「わ、私はその……」
 井辺が何か言い掛けた時、3.0は大きな右手を挙げた。
「うっ!?」
 ドンッとそのまま、井辺に『壁ドン』してくる。
 身の危険を感じた井辺は、その場からの避難を決意した。
「お、追って来る!?」
 3.0の特徴はゾンビのような足取りで歩く。
 その為、あまり動きは速くない。
 振り切るのが目的なら意外と簡単だ。
 3.0は4.0のように武器を換装していることは少ない。
 その代わり体躯を利用したタックルや怪力を利用した攻撃をしてくるのだと、前に敷島から聞いた。
「くっ!」
 件のスイートルームに戻る。
 しかし、廊下からはガチョンガチョンと3.0の歩いて来る音が聞こえた。
「どこか、隠れる場所を……!」
 井辺は咄嗟にベッドの下に隠れた。
 直後、鍵の掛かっていないドアを開けて、3.0が入って来る。
「……?……??」
 ウィィン、ウィィィィンとモーターの唸る音が聞こえる。
 いるはずの井辺の姿が無いため、辺りをスキャンしているのだろう。
 敷島の話では3.0の機器はそんなに性能が良くないという話だが……。
「キュルキュルキュルキュル……」
 3.0にはサーモグラフィとかは無いのだろうか。
 ベッドの下の井辺を発見することができず、外へ通じるドアから外に出て行ってしまった。
「ふう……助かった……」
 背中には46という数字がペイントしてあった。
 46号機という意味だろうか?
 井辺は再び先ほどの廊下に出ることにした。
 3.0は歩く音が特徴的だから、接近してくれば分かるだろう。

[9月18日13:00.東京都江東区・敷島エージェンシー 敷島孝夫&3号機のシンディ]

「アタシのGPS検索では、プロデューサーの居場所が分からないよ」
 シンディは久しぶりに困った顔を見せた。
「もし仮にロボット・テロ組織の犯行だったら、各研究所を経由して電波を張り巡らせば、どこかでヒットするんじゃないか?という作戦だ」
「いやー、ちょっとムリがあると思うよ、それ」
 実際に電波を張り巡らせる役のシンディが首を傾げた。
「偽タクシーの行方は追えないの?」
「どこにでもいる普通のタクシーだったわけだし、途中で普通の乗用車に戻ったり、また別のタクシー会社のタクシーに化けたりを繰り返していたらしい。計画的な犯行だ」
 その都度、ナンバープレートを付け替えたりしていたわけだ。
「ネット回線も使って、やってみてくれ」
「……了解」

[期日不明 場所不明 天候:曇 洋館1F 井辺翔太]

「薄暗くなってきた。もうすぐ夜か……」
 1Fから再び庭に出る。
 もうすっかり薄暗くなっていた。
 いい匂いがして、煙突から煙の出ている部屋があった。
 入ってみると、そこは厨房。
 メイドのダニエラがそこで夕食の支度をしているようだった。
「あの……すいません……」
 井辺がダニエラに声を掛けると、
「お客様……。只今・食事の・仕度中で・ございますので、どうぞ・お部屋で・お待ち・ください」
「部屋で待ってろって……。いや、何かさっきからバージョン3.0に追い回されてるんですよ。だいたい……」

 バンッ!

「うわっ、来たっ!」
 井辺が入ってきた非常口から、あの46号機も入ってきた。
 すっかり井辺をロックオンしたのか、バタバタとやってくる。
 ダニエラのことは関係者だとちゃんと認識しているのか、ダニエラの方は一瞥だにしない。
 そして、ダニエラも46号機のことは全く関心が無い様子だった。
「くそっ!」
 井辺は厨房から逃げ出した。
 当然、3.0の46号機も追い掛けて来る。
 厨房の隣は大きな長テーブルのある食堂があった。
 テーブルの上の燭台がやけに目立つ。
 そこを過ぎると、今度はまたもや石造りの廊下になっていた。
 途中に石段があって、
「うわっ!?」
 躓いて倒れてしまう。
 どういうわけだか、46号機は先ほどより少し動きが速くなったような……?
 追い付かれてしまった。
 右手にはどこで拾ったか、鉄パイプを手にしている。
 無愛想ながらも客人扱いはしてくれるダニエラと違い、こちらは完全に侵入者と誤認しているようだ。
 両目を赤く光らせながら、鉄パイプを振り上げる。
 すると、
「やめろ!46号!直ちに立ち去れ!!」
 どこからか男の声が響いた。
 46号機も首を前後左右、そしてグルッと360度回転させ、どこから聞こえて来たのか確認している様子だった。
「も、申し訳ありません、お客様!お怪我はございませんか?」
 井辺とは反対方向から、まるでホテルのドアマンのような恰好をした男がやってきた。
 但し、丸い帽子には鍔がついており、深く被っているのと薄暗い場所のせいか、顔はよく見えない。
 男に恫喝された46号機は、プシューとエアを排気させると、慌てて来た道を引き返していった。
「さ、お手を……」
 ドアマンのような恰好をした男に手を貸してもらい、井辺は立ち上がった。
「当館も古い建物でございます。多少、床の悪い所がございますので、お歩きの際は十分ご注意のほどを……」
 井辺が躓いた理由は、石畳の床のうち、たまたま井辺が乗ったタイルがグラついていたからであった。
「あの……あなたは……?」
「申し遅れました。私、このスペンサー卿のお屋敷を預かる執事のエリオットと申します。以後、お見知り置きを……」
「私がここに来た理由が分からないのです。メイドさんからお客扱いでしたが、今のバージョン3.0からは敵扱いのようですし……」
「私共も驚きました。今の46号機が森の中でお客様を発見されまして、侵入者と認識し、地下牢へ収監したということなのです」
「森の中!?いや、しかし私は東京で……うっ……!」
 フラッシュバックに襲われる井辺。
 タクシーで移動中、急な眠気に襲われて意識を無くす所から……。
「お客様、体調が優れないようでございます。今夜はもうお休みください。3Fにスイートを用意してございます」
「し……しかし……早く……帰らないと……」
「ご案内致します。こちらへどうぞ」
 エリオットは物言いは丁寧だが、有無を言わさぬ圧力を感じた。
 とにかく、これでもう3.0が襲って来ることはないのだろうか。

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