[2月13日22:00.天候:晴 東京中央学園上野高校新校舎・宿直室]
私達は黒木先生が教師として勤めていた時、よく寝泊まりしていたという宿直室を調べていた。
宿直室は和室だったので、畳が敷かれている。
今度は畳を剥がして、その下を調べることにした。
国税庁も査察に入る時は畳の下も調べるというからな。
愛原:「うん?」
和室は6畳間である。
つまり、畳が6枚敷かれているということだな。
全部の畳を剥がすつもりでやってみたのだが、そのうち、1枚の下から茶封筒が見つかった。
だいぶ前からあったのか、かなり色あせている。
愛原:「何だこれ?」
中を開けると、透明のビニール袋に入れられた手紙が入っていた。
ビニール袋に包まれていたからか、中の手紙はそんなに劣化していなかった。
手紙は手書きではなかった。
パソコンのワードで作成されたもののようだ。
愛原:「『白井伝三郎には気をつけろ。奴はサイコパスだ。人の命を何とも思っていない』」
高橋:「怪文書みたいっスね」
私達にとっては何を今さら的な内容であるが、少なくとも私達の他に白井の異常性に気づいた者がいたというわけだ。
他の紙には、『科学準備室倉庫の中から呻き声が聞こえるという噂は本当だ』ともあった。
斉藤秀樹:「そうなんです。私もこの噂を聞いたことがあります。それで当時の新聞部長が、あの中で何の実験をしているのか暴いてやろうと考えていたらしいですね」
そして最後の紙を見た時、私は背筋に寒い物が走るのを感じた。
それだけ赤茶色の文字で書き殴られていたからだ。
『それはおれだ またまん月 まただれか食べたい』
斉藤:「こ、これは……!?」
リサ:「……うん。ほんの微かに血の臭いがする。それも……人間の血の臭いじゃない……」
愛原:「ええっ!?」
高橋:「先生、ここ!ここの板が外れます!」
畳の下の床板の2枚が簡単に外れるようになっていた。
しかしいくら和室だからといって、鉄筋コンクリート造りの校舎で、畳の下が木の床とは?
それとも、これでいいのか?
私は高橋に床板を剥がさせた。
そして、今度こそ床下の地面が現れる。
そこにあったのは……。
愛原:「な、何たるちゃあ……」
高橋:「こ、これは……!」
斉藤:「そ、そうか……。そういうことだったのか……」
坂上:「け、警察に電話してきます!!」
床下にあったのは、おびただしい白骨死体の数々だった。
斉藤:「黒木先生は……人間じゃなかったんですよ。恐らくは……白井が造ったBOW。満月……というのは……」
リサ:「ハンターやタイラント君が暴れやすい夜があったの。確かそれは……満月の時だって」
そして、またリサの記憶が戻ったようだ。
リサ:「『7番』が言ってた。『あいつ(恐らく白井)が言ってたけど、男を素体にすると満月が来る度に捕食欲が高まるから使い物にならない。だから、キミ達女の子に期待しているんだよって。ンなワケないよねー。どうせエロい目的なだけでしょーに』って」
愛原:「そういうことだったのか……」
しばらくして坂上先生が戻ってきた。
坂上:「警察に通報しました!」
斉藤:「坂上、キミが旧校舎から追い出された時、満月だったかい?」
坂上:「えっ?な、何だい?唐突に」
斉藤:「いいから!キミ達が“トイレの花子さん”のことを調べようとして黒木に旧校舎から追い出された時、空は満月だったかい?」
坂上:「そ、そんなこといちいち覚えてないよ。ただ……もしかしたら、そうだったかもしれない。もう夜だったのに、校庭は意外と明るかった記憶が残ってる。それだけ月明りが強かったってことだから、もしかしたら満月だったのかもしれないな」
愛原:「でも、坂上先生は助かってますよね?」
坂上:「いや、それが……。私の回の時も、1人参加者が来なかったと言いましたよね?」
愛原:「ええ」
坂上:「その後も、その参加者は行方不明のままなんです」
愛原:「ええっ!?」
恐らく黒木が書いたであろうこの文書も警察が調べるだろうから、私はこの紙を今のうちにスマホで撮影しておいた。
これも恐らく善場主任への報告案件になると思ったからだ。
しばらくしてパトカーのサイレンの音が聞こえ、警察がやってきた。
警察の事情聴取に素直に応じながら、私はふと考えた。
白井は恐らくどこかで生きているだろう。
恐らく、ヴェルトロの残党と何か企んでいるのかもしれない。
少なくとも、五十嵐元社長達とは関係を断っているだろう。
しかし、黒木はどこに行ったのだろうか?
これがアメリカのアンブレラであれば、用済みとなった者は躊躇なく殺処分しているだろうが……。
[同日23:08.天候:晴 同地区内 コインパーキング]
私達は1時間ほど警察に状況説明と事情聴取を受けた。
まあ、なかなか説明するのが大変だった。
何しろメンバーに大製薬企業の代表取締役社長と、前科数犯の元凶悪少年が一緒にいるのだから。
それが“学校の七不思議”を追って来たというのだから。
もしも床下で発見されていた死体が、まだ新しいものだったら、間違い無く疑われていただろう。
当然あの怪文書も警察に押収された。
ようやく解放された時には、23時を過ぎていた。
一番可愛そうなのは坂上先生か。
ヘタすると学園の暗部が暴かれた原因にもなったのだから。
斉藤社長は、いざとなったら自分が味方すると強く言ったが……。
学校を後にして、車を止めていた駐車場に向かう時だった。
愛原:「疲れたかな……。目まいが……」
リサ:「違うよ、先生!揺れてるよ!」
愛原:「!?」
私は近くの電柱を見た。
確かにその上の電線が風も無いのにユラユラ揺れている。
そして、下から突き上げるような地鳴りがした。
愛原:「お、お、お!?」
斉藤:「皆さん、早く車へ!落下物に気を付けてください!」
愛原:「そ、そうですね!」
駐車場までは目と鼻の先だ。
私達は揺れが収まるのを待つことはせず、急いで駐車場へ走った。
幸い、周りで何か落下物が落ちて来るようなことはなかった。
駐車場の横に置かれている自販機も無事である。
新庄:「旦那様!皆様!」
私達の姿を確認すると、運転席にいた新庄さんが降りて来た。
斉藤:「少し強い地震があったようだ。震源地と震度を確認してくれ」
新庄:「かしこまりました!」
幸いこの辺りは停電も無かった。
私は自販機に行って、飲み物を買い求めた。
斉藤絵恋:「ん……リサさん……」
リサ:「サイトー、お待たせ」
絵恋さんは待ちくたびれたのか、シートを倒して寝ていた。
寝落ちしていたのか、地震があったことは覚えていないようだ。
車内のカーナビはテレビも映るタイプなので、それでNHKを映す。
通常の番組から、緊急放送に変わっていた。
愛原:「発覚した事件に、この地震か。何だか、意外な展開がありそうだ」
高橋:「はい」
斉藤秀樹:「愛原さん、家まで送りましょう。私達はその後で帰ります」
愛原:「ありがとうございます」
駐車料金を払った新庄さんがまた戻ってきて、それから車が出発した。
テレビからは震源地に近い福島県や宮城県が大変なことになったと報じていた。
一応、後で実家や公一伯父さんには連絡しておこう。
それにしても、白井は一体何がしたいのだろうな。
多分、完璧で完全な生物兵器でも造りたいのだろうが……。
そんなんでノーベル賞でも取れると思っているのだろうか?
秀樹:「愛原さん、お気づきになりましたか?」
愛原:「何がです?」
秀樹:「あの白骨死体の山……あの下に丸い鉄板が見えました。あれは多分マンホール。……いや、隠し通路の入口だったのかもしれません」
愛原:「……あの白骨死体の山のせいで、しばらくは探索は無理でしょうな」
もちろん警察はそのマンホールと思しき丸い鉄板も調べるだろう。
もしそれがマンホールだとしたら、中も調べるはずだ。
マンホールの中に死体が隠されていたという事件も過去にはあったからだ。
私達は黒木先生が教師として勤めていた時、よく寝泊まりしていたという宿直室を調べていた。
宿直室は和室だったので、畳が敷かれている。
今度は畳を剥がして、その下を調べることにした。
国税庁も査察に入る時は畳の下も調べるというからな。
愛原:「うん?」
和室は6畳間である。
つまり、畳が6枚敷かれているということだな。
全部の畳を剥がすつもりでやってみたのだが、そのうち、1枚の下から茶封筒が見つかった。
だいぶ前からあったのか、かなり色あせている。
愛原:「何だこれ?」
中を開けると、透明のビニール袋に入れられた手紙が入っていた。
ビニール袋に包まれていたからか、中の手紙はそんなに劣化していなかった。
手紙は手書きではなかった。
パソコンのワードで作成されたもののようだ。
愛原:「『白井伝三郎には気をつけろ。奴はサイコパスだ。人の命を何とも思っていない』」
高橋:「怪文書みたいっスね」
私達にとっては何を今さら的な内容であるが、少なくとも私達の他に白井の異常性に気づいた者がいたというわけだ。
他の紙には、『科学準備室倉庫の中から呻き声が聞こえるという噂は本当だ』ともあった。
斉藤秀樹:「そうなんです。私もこの噂を聞いたことがあります。それで当時の新聞部長が、あの中で何の実験をしているのか暴いてやろうと考えていたらしいですね」
そして最後の紙を見た時、私は背筋に寒い物が走るのを感じた。
それだけ赤茶色の文字で書き殴られていたからだ。
『それはおれだ またまん月 まただれか食べたい』
斉藤:「こ、これは……!?」
リサ:「……うん。ほんの微かに血の臭いがする。それも……人間の血の臭いじゃない……」
愛原:「ええっ!?」
高橋:「先生、ここ!ここの板が外れます!」
畳の下の床板の2枚が簡単に外れるようになっていた。
しかしいくら和室だからといって、鉄筋コンクリート造りの校舎で、畳の下が木の床とは?
それとも、これでいいのか?
私は高橋に床板を剥がさせた。
そして、今度こそ床下の地面が現れる。
そこにあったのは……。
愛原:「な、何たるちゃあ……」
高橋:「こ、これは……!」
斉藤:「そ、そうか……。そういうことだったのか……」
坂上:「け、警察に電話してきます!!」
床下にあったのは、おびただしい白骨死体の数々だった。
斉藤:「黒木先生は……人間じゃなかったんですよ。恐らくは……白井が造ったBOW。満月……というのは……」
リサ:「ハンターやタイラント君が暴れやすい夜があったの。確かそれは……満月の時だって」
そして、またリサの記憶が戻ったようだ。
リサ:「『7番』が言ってた。『あいつ(恐らく白井)が言ってたけど、男を素体にすると満月が来る度に捕食欲が高まるから使い物にならない。だから、キミ達女の子に期待しているんだよって。ンなワケないよねー。どうせエロい目的なだけでしょーに』って」
愛原:「そういうことだったのか……」
しばらくして坂上先生が戻ってきた。
坂上:「警察に通報しました!」
斉藤:「坂上、キミが旧校舎から追い出された時、満月だったかい?」
坂上:「えっ?な、何だい?唐突に」
斉藤:「いいから!キミ達が“トイレの花子さん”のことを調べようとして黒木に旧校舎から追い出された時、空は満月だったかい?」
坂上:「そ、そんなこといちいち覚えてないよ。ただ……もしかしたら、そうだったかもしれない。もう夜だったのに、校庭は意外と明るかった記憶が残ってる。それだけ月明りが強かったってことだから、もしかしたら満月だったのかもしれないな」
愛原:「でも、坂上先生は助かってますよね?」
坂上:「いや、それが……。私の回の時も、1人参加者が来なかったと言いましたよね?」
愛原:「ええ」
坂上:「その後も、その参加者は行方不明のままなんです」
愛原:「ええっ!?」
恐らく黒木が書いたであろうこの文書も警察が調べるだろうから、私はこの紙を今のうちにスマホで撮影しておいた。
これも恐らく善場主任への報告案件になると思ったからだ。
しばらくしてパトカーのサイレンの音が聞こえ、警察がやってきた。
警察の事情聴取に素直に応じながら、私はふと考えた。
白井は恐らくどこかで生きているだろう。
恐らく、ヴェルトロの残党と何か企んでいるのかもしれない。
少なくとも、五十嵐元社長達とは関係を断っているだろう。
しかし、黒木はどこに行ったのだろうか?
これがアメリカのアンブレラであれば、用済みとなった者は躊躇なく殺処分しているだろうが……。
[同日23:08.天候:晴 同地区内 コインパーキング]
私達は1時間ほど警察に状況説明と事情聴取を受けた。
まあ、なかなか説明するのが大変だった。
何しろメンバーに大製薬企業の代表取締役社長と、前科数犯の元凶悪少年が一緒にいるのだから。
それが“学校の七不思議”を追って来たというのだから。
もしも床下で発見されていた死体が、まだ新しいものだったら、間違い無く疑われていただろう。
当然あの怪文書も警察に押収された。
ようやく解放された時には、23時を過ぎていた。
一番可愛そうなのは坂上先生か。
ヘタすると学園の暗部が暴かれた原因にもなったのだから。
斉藤社長は、いざとなったら自分が味方すると強く言ったが……。
学校を後にして、車を止めていた駐車場に向かう時だった。
愛原:「疲れたかな……。目まいが……」
リサ:「違うよ、先生!揺れてるよ!」
愛原:「!?」
私は近くの電柱を見た。
確かにその上の電線が風も無いのにユラユラ揺れている。
そして、下から突き上げるような地鳴りがした。
愛原:「お、お、お!?」
斉藤:「皆さん、早く車へ!落下物に気を付けてください!」
愛原:「そ、そうですね!」
駐車場までは目と鼻の先だ。
私達は揺れが収まるのを待つことはせず、急いで駐車場へ走った。
幸い、周りで何か落下物が落ちて来るようなことはなかった。
駐車場の横に置かれている自販機も無事である。
新庄:「旦那様!皆様!」
私達の姿を確認すると、運転席にいた新庄さんが降りて来た。
斉藤:「少し強い地震があったようだ。震源地と震度を確認してくれ」
新庄:「かしこまりました!」
幸いこの辺りは停電も無かった。
私は自販機に行って、飲み物を買い求めた。
斉藤絵恋:「ん……リサさん……」
リサ:「サイトー、お待たせ」
絵恋さんは待ちくたびれたのか、シートを倒して寝ていた。
寝落ちしていたのか、地震があったことは覚えていないようだ。
車内のカーナビはテレビも映るタイプなので、それでNHKを映す。
通常の番組から、緊急放送に変わっていた。
愛原:「発覚した事件に、この地震か。何だか、意外な展開がありそうだ」
高橋:「はい」
斉藤秀樹:「愛原さん、家まで送りましょう。私達はその後で帰ります」
愛原:「ありがとうございます」
駐車料金を払った新庄さんがまた戻ってきて、それから車が出発した。
テレビからは震源地に近い福島県や宮城県が大変なことになったと報じていた。
一応、後で実家や公一伯父さんには連絡しておこう。
それにしても、白井は一体何がしたいのだろうな。
多分、完璧で完全な生物兵器でも造りたいのだろうが……。
そんなんでノーベル賞でも取れると思っているのだろうか?
秀樹:「愛原さん、お気づきになりましたか?」
愛原:「何がです?」
秀樹:「あの白骨死体の山……あの下に丸い鉄板が見えました。あれは多分マンホール。……いや、隠し通路の入口だったのかもしれません」
愛原:「……あの白骨死体の山のせいで、しばらくは探索は無理でしょうな」
もちろん警察はそのマンホールと思しき丸い鉄板も調べるだろう。
もしそれがマンホールだとしたら、中も調べるはずだ。
マンホールの中に死体が隠されていたという事件も過去にはあったからだ。