[2月15日13:00.天候:雨 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は13日に発見した白骨死体のことについて、善場主任に報告に行った。
午前中は高野君の所に面会に行っていた為、午後になった。
善場:「少しまた真相に近づけたようですね」
愛原:「はい。地震の方は大丈夫でしたか?」
善場:「このビルは耐震構造になっておりますので大丈夫です。それより、愛原所長の御実家の方とかは如何でしたか?」
愛原:「全員無事ですよ。公一伯父さんなんか、暢気に鳴子温泉に泊まっていたみたいです」
善場:「さすがですね。では双方無事が確認できたところで、本題に入りましょうか」
愛原:「はい」
善場:「現在の所は警視庁が捜査しておりますので、まだ私達はお呼びではありません。ですが、本部を通じて、ある程度の捜査情報を手に入れることはできます。本当は他言無用なのですが、愛原所長にはお話ししましょう」
愛原:「ありがとうございます」
善場:「まず、愛原所長が発見した白骨死体は、行方不明になった東京中央学園の生徒達である可能性が高いとのことです。骨格から、ほぼ10代の少年少女であることが分かりましたので。身元の確認に関しては、これから行われます」
愛原:「マジか……」
善場:「それと愛原所長が発見された文書については、まだ黒木氏が書いたものかどうかは分かりません。2枚はワープロで書かれ、残り1枚は書きなぐられていましたから」
愛原:「ワープロ?パソコンじゃないんですか?」
善場:「いえ。昔のワープロのようです。それも、1990年代に製造されたタイプです」
愛原:「そんなもの、まだ学校にあったんだ……」
善場:「ワープロは2003年まで製造されていました。ですので、一般家庭などではまだ残っている所があるかもしれません」
一部の小説家は未だにワープロで作品を手掛けているのだという(尚、作者は2000年までワープロを使用していた。その時に書いていた作品は皆没してしまったが、当時登場したキャラクターや設定の一部が現在も流用されている。……と思いきや年始に帰省した時、納戸の整理を手伝わされたが、その時に作成したと思われるフロッピーディスクを発見した。何の作品だったか確認したいが、フロッピードライバーが無い……。でも、“私立探偵 愛原学”の原型のような気がしてならない。まだ愛原が1人で探偵をやっていた時の話)。
善場:「なるほど……」
高橋:「先生!」
愛原:「な、何だ!?」
高橋:「ワープロって、デッカいノートパソコンみたいなヤツですか?」
愛原:「あ、ああ。そうだな。90年代以降のタイプだと、そんな感じだろう。で、背後にインクリボン式のプリンターが付いたヤツな」
そうか。
2003年で製造中止になった物だから、高橋みたいな20代の青年はあまり覚えていないし、ヘタしたら見た事すら無いかもしれない。
私みたいなアラフォーが、タイプライターの現物を見たことが無いのと同じだ。
あと20年もしたら、ノートパソコンも過去の遺物になるのだろうか。
高橋:「それ、ありましたよ!宿直室に!」
愛原:「マジか!どこだ!?」
高橋:「押入れを漁った時、下段の段ボール箱の中に入ってました。何か、デッカいノートパソコンだなとは思ってましたが……」
愛原:「あったのか!」
善場:「私が学生の頃、当時の先生から聞いた話ですが、宿直制度があった時、泊まり込みの先生は、ワープロでテストの作成とかプリントの作成とかしていたそうです。見回りをしたら、あとは何もやることが無いので」
愛原:「なるほど。それなら、東京中央学園の宿直室にもワープロくらいあってもおかしくないですね」
今ならノートパソコンでも置いているのだろうが、そもそも今は宿直制度自体が廃止されている。
代わりに警備員が泊まり込むような所なら、警備室にそれが置かれているだろう。
しかも黒木は率先して宿直をしていたくらいだから、そこにワープロがあれば使っていただろう。
いつ作成されたかはまだ定かでは無いが、最初の1枚目や2枚目は文章として成り立っている。
恐らく、自分の悪事について自省することがあり、それで告白手記でも書こうとしたのだろうか。
しかし、やっぱり悪事が露見することを恐れて、途中で書くのを止めたか。
いや、でもだったら、わざわざ印刷する必要は無いな。
3枚目の紙は、たまたま印刷用の紙の上に書き殴ったものだろう。
血文字とも思えるような感じだったが、BOWとして鼻の利くリサはすぐにそれが血の臭いだと分かった。
そして、それが人間の血の臭いではないということも。
あの時は第0形態(人間形態)だったから、そこまでしか判別できなかったが、第1形態(鬼娘形態)であれば、もっと細かく判別できたのではないか。
善場:「もしもあの文書に書かれていることが本当だとしたら、黒木先生という存在は白井伝三郎が造り出したBOW。元が人間だったのかどうかは定かではありませんが、恐らくそれで間違いないでしょう。未だかつて、アンブレラが0から人造人間を造り出した記録は存在していません」
愛原:「アンブレラ製ではないでしょうが、新型BOWエブリンはどうなんですか?」
善場:「BSAAの情報によりますと、あれはヒトの胚に特異菌を注入して造られたものだそうです。生きている人間を人体改造したわけではありませんが、それでもヒトの細胞を素体にしているという時点で0から造ったとは言えないでしょう。1から造ったとは言えるでしょうが」
愛原:「なるほど……」
善場:「ヴェルトロはFBCというアメリカ合衆国政府の主導によって設立された組織に騙され、瓦解しました。当時のFBC長官だったモルガン・ランズディール受刑者は、ヴェルトロのボス、ジャック・ノーマンにこんなことを言っていたそうです。『Tアビスはまだ途中段階に過ぎない。最終的にはキミ達が神となり得る肉体を手に入れることができるだろう』と」
愛原:「何か、中二病みたいな発言ですね」
善場:「ですが実際、Tアビスには人間の寿命を延ばす効果があったそうです。モルガン受刑者に騙されたことを知ったジャックは、『何年でも何十年でも真実を守り通す!』と叫んでいたそうです。70歳に近い高齢者のジャックがそんなことを言えるのは、偏にTアビスにそのような効果があることを知っていたのでしょう。現に、それ以前のウィルスを保有しているリサ・トレヴァーでさえ、そうなんですから」
愛原:「あ……!」
善場:「黒木の事件、真相が分かればもっと白井に近づけるはずです。捜査結果を待ちましょう」
愛原:「はい!」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は13日に発見した白骨死体のことについて、善場主任に報告に行った。
午前中は高野君の所に面会に行っていた為、午後になった。
善場:「少しまた真相に近づけたようですね」
愛原:「はい。地震の方は大丈夫でしたか?」
善場:「このビルは耐震構造になっておりますので大丈夫です。それより、愛原所長の御実家の方とかは如何でしたか?」
愛原:「全員無事ですよ。公一伯父さんなんか、暢気に鳴子温泉に泊まっていたみたいです」
善場:「さすがですね。では双方無事が確認できたところで、本題に入りましょうか」
愛原:「はい」
善場:「現在の所は警視庁が捜査しておりますので、まだ私達はお呼びではありません。ですが、本部を通じて、ある程度の捜査情報を手に入れることはできます。本当は他言無用なのですが、愛原所長にはお話ししましょう」
愛原:「ありがとうございます」
善場:「まず、愛原所長が発見した白骨死体は、行方不明になった東京中央学園の生徒達である可能性が高いとのことです。骨格から、ほぼ10代の少年少女であることが分かりましたので。身元の確認に関しては、これから行われます」
愛原:「マジか……」
善場:「それと愛原所長が発見された文書については、まだ黒木氏が書いたものかどうかは分かりません。2枚はワープロで書かれ、残り1枚は書きなぐられていましたから」
愛原:「ワープロ?パソコンじゃないんですか?」
善場:「いえ。昔のワープロのようです。それも、1990年代に製造されたタイプです」
愛原:「そんなもの、まだ学校にあったんだ……」
善場:「ワープロは2003年まで製造されていました。ですので、一般家庭などではまだ残っている所があるかもしれません」
一部の小説家は未だにワープロで作品を手掛けているのだという(尚、作者は2000年までワープロを使用していた。その時に書いていた作品は皆没してしまったが、当時登場したキャラクターや設定の一部が現在も流用されている。……と思いきや年始に帰省した時、納戸の整理を手伝わされたが、その時に作成したと思われるフロッピーディスクを発見した。何の作品だったか確認したいが、フロッピードライバーが無い……。でも、“私立探偵 愛原学”の原型のような気がしてならない。まだ愛原が1人で探偵をやっていた時の話)。
善場:「なるほど……」
高橋:「先生!」
愛原:「な、何だ!?」
高橋:「ワープロって、デッカいノートパソコンみたいなヤツですか?」
愛原:「あ、ああ。そうだな。90年代以降のタイプだと、そんな感じだろう。で、背後にインクリボン式のプリンターが付いたヤツな」
そうか。
2003年で製造中止になった物だから、高橋みたいな20代の青年はあまり覚えていないし、ヘタしたら見た事すら無いかもしれない。
私みたいなアラフォーが、タイプライターの現物を見たことが無いのと同じだ。
あと20年もしたら、ノートパソコンも過去の遺物になるのだろうか。
高橋:「それ、ありましたよ!宿直室に!」
愛原:「マジか!どこだ!?」
高橋:「押入れを漁った時、下段の段ボール箱の中に入ってました。何か、デッカいノートパソコンだなとは思ってましたが……」
愛原:「あったのか!」
善場:「私が学生の頃、当時の先生から聞いた話ですが、宿直制度があった時、泊まり込みの先生は、ワープロでテストの作成とかプリントの作成とかしていたそうです。見回りをしたら、あとは何もやることが無いので」
愛原:「なるほど。それなら、東京中央学園の宿直室にもワープロくらいあってもおかしくないですね」
今ならノートパソコンでも置いているのだろうが、そもそも今は宿直制度自体が廃止されている。
代わりに警備員が泊まり込むような所なら、警備室にそれが置かれているだろう。
しかも黒木は率先して宿直をしていたくらいだから、そこにワープロがあれば使っていただろう。
いつ作成されたかはまだ定かでは無いが、最初の1枚目や2枚目は文章として成り立っている。
恐らく、自分の悪事について自省することがあり、それで告白手記でも書こうとしたのだろうか。
しかし、やっぱり悪事が露見することを恐れて、途中で書くのを止めたか。
いや、でもだったら、わざわざ印刷する必要は無いな。
3枚目の紙は、たまたま印刷用の紙の上に書き殴ったものだろう。
血文字とも思えるような感じだったが、BOWとして鼻の利くリサはすぐにそれが血の臭いだと分かった。
そして、それが人間の血の臭いではないということも。
あの時は第0形態(人間形態)だったから、そこまでしか判別できなかったが、第1形態(鬼娘形態)であれば、もっと細かく判別できたのではないか。
善場:「もしもあの文書に書かれていることが本当だとしたら、黒木先生という存在は白井伝三郎が造り出したBOW。元が人間だったのかどうかは定かではありませんが、恐らくそれで間違いないでしょう。未だかつて、アンブレラが0から人造人間を造り出した記録は存在していません」
愛原:「アンブレラ製ではないでしょうが、新型BOWエブリンはどうなんですか?」
善場:「BSAAの情報によりますと、あれはヒトの胚に特異菌を注入して造られたものだそうです。生きている人間を人体改造したわけではありませんが、それでもヒトの細胞を素体にしているという時点で0から造ったとは言えないでしょう。1から造ったとは言えるでしょうが」
愛原:「なるほど……」
善場:「ヴェルトロはFBCというアメリカ合衆国政府の主導によって設立された組織に騙され、瓦解しました。当時のFBC長官だったモルガン・ランズディール受刑者は、ヴェルトロのボス、ジャック・ノーマンにこんなことを言っていたそうです。『Tアビスはまだ途中段階に過ぎない。最終的にはキミ達が神となり得る肉体を手に入れることができるだろう』と」
愛原:「何か、中二病みたいな発言ですね」
善場:「ですが実際、Tアビスには人間の寿命を延ばす効果があったそうです。モルガン受刑者に騙されたことを知ったジャックは、『何年でも何十年でも真実を守り通す!』と叫んでいたそうです。70歳に近い高齢者のジャックがそんなことを言えるのは、偏にTアビスにそのような効果があることを知っていたのでしょう。現に、それ以前のウィルスを保有しているリサ・トレヴァーでさえ、そうなんですから」
愛原:「あ……!」
善場:「黒木の事件、真相が分かればもっと白井に近づけるはずです。捜査結果を待ちましょう」
愛原:「はい!」