報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「グッドエンド」

2021-02-10 20:15:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月11日04:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校 教育資料館(旧校舎)2F女子トイレ]

 しばらく呆然としていたリサだったが、カランコロンという音でふと我に返った。
 いつの間にか“トイレの花子さん”はいなくなっており、代わりに彼女が着けていたと思われる白い仮面が転がっていた。
 カランコロンという音はそこからしたものだろう。
 リサはそれを拾い上げた。
 そして、自分の仮面と見比べてみる。
 内側に自分の番号が印刷されているか否かの違いだけで、見た目も大きさも重さも殆ど変わらない。
 そして、花子さんが頭の中に話し掛けて来た。

 花子さん:「不思議なもので、幽霊になっても眠るし、夢を見るものね。夢の中で、私と同じ仮面を着けたコ達が何人も出て来たの。夢だと思ってたけど、正夢だったのね。私の夢は、あなたと出会うという予知夢だったのかも。あなた、この高校に来るんでしょう?……時々でいいから、私のこと、思い出してね」
 リサ:「うん……」
 花子さん:「そのかわいい制服、私も着たかったなぁ……」

 花子さんの気配が消えた。
 いつの間にか仮面も、自分の持っている物しか無くなった。
 今ので成仏したとは思えない。
 きっとまだこのトイレに括られているのだろう。
 白井伝三郎を殺したら救われるのだろうか?
 それとも、このままずっと永遠に括られたままなのだろうか。

 リサ:「! 愛原先生」

 いつの間にか廊下に、花子さんに消された愛原達が横たわっていた。
 リサはトイレから出て、愛原達に駆け寄る。
 全員息があった。
 ただ気を失っているだけだった。

 リサ:「生きてる……」

 リサは安心して、愛原の頭を持ち上げ、膝枕をした。
 リサはその間、花子さんから聞いた話をメモ帳に書いた。
 花子さんの本名は不明だが、その正体はイジメ被害を苦に自殺した女子生徒の幽霊であるということ。
 イジメ加害者は6人いたが、そのうちの1人が白井伝三郎だったということ。
 残りの5人は子持ちであったが、この子供達が全員この学園に通って来たので、詳細は不明だが復讐したこと。
 だが白井だけ独身で子無しだったので、この復讐法が使えずにいたこと。

 リサ:「あれ?待てよ……」

 その時、リサはあることに気づいた。
 白井が花子さんと同級生だったということで、日本版リサ・トレヴァーが花子さんのようにセーラー服を着せられ、白い仮面を着けさせられていた理由が分かった。
 だが、花子さんは生前から白い仮面を着けていたわけではないだろう。
 死後、幽霊になった際にどうして白い仮面を着けていたのかは不明だが、そうなると、白井は幽霊となった花子さんのことを知っているということになる。
 それは直接見たのか、或いは誰かから聞いたのかは分からない。
 だが、前者ではないだろう。
 もしそうなら、花子さんは何が何でも復讐しようとしただろう。

 リサ:「いずれにせよ、白井は殺す……。あなたの恨みは、私から晴らしてあげる」
 愛原:「う、ううん……」
 リサ:「あっ!」

 その時、愛原が目を覚ました。

 リサ:「先生、先生!」
 愛原:「リサか……。ん?膝枕してくれたのか?」
 リサ:「えへへ……うん!」
 愛原:「ありがとう。柔らかい膝だったよ」

 愛原は起き上がると、リサの頭を撫でた。
 リサは満面の笑みを浮かべた。

 愛原:「それより何があったんだ?」

 リサは愛原が天井に飲み込まれてから、花子さんが消えるまでの経緯を話した。

 愛原:「幽霊って……本当にいたのか」
 リサ:「白井はその幽霊を利用して、私達を造ったのかもしれない」
 愛原:「マジで直接本人に会って、問い質したいくらいだ」

 もっとも今、白井がどこにいるのかは皆目見当が付かない。

 愛原:「高橋!斉藤社長!栗原さん!」

 愛原は他の気絶しているメンバーを起こした。

 斉藤:「い、いてててて……、エラい目に遭った。皆さん、無事ですか?」
 高橋:「くそっ、フザけやがって!あの仮面の女、蜂の巣にしてやる!」
 リサ:「無理だよ。お兄ちゃんでも、あのコには勝てないよ」
 高橋:「あぁッ!?」
 愛原:「高橋、リサの言う通りだ。もし勝てるなら、リサがとっくに倒していただろうさ」
 高橋:「先生、そんな……」
 斉藤:「ああーっ!」
 愛原:「ど、どうしました、社長!?」
 斉藤:「もう次の日の午前4時ですよ!?どうなってるんだ!?」
 坂上:「こ、校長に何て説明したら……」
 栗原:「親に何て説明したら……」
 日野:「親に何て説明したら……」

[同日04:33.天候:晴 JR上野駅]

〔まもなく4番線に、各駅停車、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、御徒町に止まります〕

 愛原達は後の事を坂上に任せ、始発電車で帰ることにした。
 斉藤は4時29分発の京浜東北線、各駅停車、大宮行きで。
 4時台に上野駅から出る大宮方面行きで、それが一番早い電車である。
 池袋に住んでいるという日野は、山手線内回りで帰ることになるが、4時54分まで待たなくてはならなかった。
 山手線には上野駅始発の電車が無いからである。
 一番悲惨なのは栗原蓮華。
 東京の地下鉄は他のJRや私鉄よりも始発が遅く、上野始発でありながら5時15分でようやく始発電車が出発するという有り様だった。
 いかに剣道の有段者とはいえ、女子高生を1人で長時間駅で待たせるのもアレということで、愛原は彼女にタクシーで帰るように言い、タクシー代を渡そうとした。
 しかし、言い出しっぺは自分なのだからと、斉藤がタクシーチケットを渡した。
 結局、栗原はそのタクシーチケットを受け取り、学校の近くの通りで空車のタクシーで拾い、それで帰宅した。

〔うえの、上野。ご乗車、ありがとうございます。次は、御徒町に止まります〕

 愛原達は田端駅からやってきた電車に乗り込んだ。
 3連休最終日の早朝ということもあってか、車内はガラガラである。
 3人はブルーの座席に腰かけた。

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「そうだな。途中で食べて帰ろう。JRは始発が早いが、地下鉄は遅い。結局、アキバで足止めされることになる」

 御徒町駅で都営地下鉄大江戸線に乗り換えようが、秋葉原で都営地下鉄新宿線に乗り換えようが、都営地下鉄もまた5時過ぎまで始発電車が無いのである。
 発車のベルがホームに鳴り響く。

〔4番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車が走り出す。

 リサ:「このことは善場さんにも報告するの?」
 愛原:「どうしようなぁ……。幽霊と会いましたなんて、信じてもらえるかなぁ……」

 愛原は家に着くまで、今回の出来事を纏めるのに苦労したようだ。
 ただ1つ、花子さんという幽霊に遭遇し、しかもそれが白井伝三郎と凄く繋がりのある者だったということで、余計に……。
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“愛原リサの日常” 「リサ・トレヴァーvsトイレの花子さん」

2021-02-10 16:53:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月10日20:00.天候:曇 東京中央学園上野高校 教育資料館(旧校舎)2F女子トイレ]

 トイレの花子さん:「いい?もう一度言うけど、私はあなたの心が読める。だから、ウソをついても分かるの。だから、正直に答えてね」
 リサ:「……分かった」

 リサは嫌な予感がした。
 その予感は当たった。
 獲物を追い詰めるやり方まで、このトイレの花子さんは同じであった。
 すなわち……。

 花子さん:「日本で最初の大規模バイオハザード事件のあった町は何て言うの?」

 1…気流市
 2…霧生市
 3…桐生市
 4…吉柳市
 5…木竜市
 6…分からない。

 花子さん:「その町は何県にある?」

 1…埼玉県
 2…群馬県
 3…長野県
 4…福島県
 5…新潟県
 6…具体的には明らかにされていない

 花子さん:「日本アンブレラの社長の名前は?」

 1…五十嵐幹夫
 2…五十嵐皓貴
 3…五十嵐昭雄
 4…五十嵐弘樹
 5…五十嵐春樹
 6…分からない

 花子さん:「リサ・トレヴァー『1番』の名前は?」

 1…天海春香
 2…胡蝶しのぶ
 3…桜ももこ
 4…源しずか
 5…磯野ワカメ
 6…まだ明らかになっていない

 花子さん:「愛原学の伯父の名前は?」

 1…愛原公一
 2…愛原俊彦
 3…愛原啓太
 4…愛原祐介
 5…愛原薫
 6…分からない

 花子さん:「その人は元大学教授。専攻は?」

 1…薬学
 2…医学
 3…細菌学
 4…農学
 5…水産学
 6…分からない

 花子さん:「さっきまで一緒にいたこの学校の先生、坂上修一は何の先生?」

 1…数学
 2…国語
 3…体育
 4…科学
 5…音楽
 6…分からない

 花子さん:「2005年に地中海の海上都市テラグリジアで大規模バイオテロを起こした宗教テロ組織の名前は?」

 1…オートロ
 2…チュートロ
 3…ヴェルトロ
 4…スージー・クアトロ
 5…オウム真理教
 6…分からない

 リサ:(やっぱりだ)

 リサの嫌な予感はこれだ。
 獲物に関するカルトクイズを大量に出し、その正答率で獲物に対する料理の仕方を決めるというやり方。
 これは自分も霧生市の研究所で“トイレの花子さん”を演じた時、そのやり方を愛原に対して行った。
 何故かそうしなくてはならない暗示を掛けてられていたのだ。
 この“花子さん”も、そういう暗示に掛けられていたのだろうか。
 因みに正答率で獲物に対する処遇を決めるというが、もちろん正答率は高い方が良い。
 低過ぎても、それは抹殺の対象となるだけだ。
 但し、中途半端な正答率でもダメだ。
 中には時間稼ぎの為にどうでも良い質問し、その正否に関しては正答率の中に入れないというやり方もある。
 この“花子さん”がどのように考えているかは分からない。

 花子さん:「余所事考えてる場合じゃないのよ?次の質問ね。『愛原リサが日本アンブレラに捕まった経緯は?』」

 1…下校途中にさらわれた。
 2…家族と旅行中にさらわれた。
 3…家族を全員殺され、生き残った自分が連れ去られた。
 4…児童養護施設から買われた。
 5…外国から買われた。
 6…分からない。

 花子さん:「未解決児童誘拐事件の中には、アンブレラが関わったものもあると思う?」

 1…思う。
 2…思わない。
 3…どうでも良い。

 花子さん:「あなたは斉藤絵恋のことをどう思う?」

 1…ただの友達
 2…獲物
 3…親友
 4…セフレ
 5…イジメの対象
 6…何とも思っていない

 花子さん:「あなたは人を何人殺して食べた?」

 1…1人
 2…2人
 3…3人
 4…4人
 5…5人以上
 6…1人も食べていない。

 花子さん:「あなたは自分が殺されそうだと思う?」

 1…思う
 2…思わない
 3…殺されそうだが、死にたくない

 花子さん:「あなたは私の正体を誰だと思う?」

 1…トイレの花子さんはトイレの花子さん。
 2…リサ・トレヴァー『1番』
 3…別のナンバーのリサ・トレヴァー
 4…リサ・トレヴァーとは別のBOW
 5…幽霊
 6…分からない

 花子さん:「栗原蓮華の左足はどうして義足?」

 1…リサ・トレヴァー『1番』に食われたから。
 2…タイラントに捕まって引きちぎられたから。
 3…ネメシスに捕まって引きちぎられたから。
 4…ゾンビに食われたから。
 5…交通事故に遭ったから。
 6…分からない。

 ここまで答えると、花子さんは自分の仮面に手をやった。

 花子さん:「私の素顔を見てみたい?」

 1…見てみたい。
 2…見たくない。
 3…花子さんに任せる。

 花子さん:「あなたはここに来た時、どんな話を聞いた?」

 1…白井伝三郎が怪しい実験をしていたこと。
 2…五十嵐社長のこと。
 3…放課後に補習を受けていた生徒達が消えたこと。
 4…夜中になると音楽室からピアノの音が聞こえてくること。
 5…科学室の人体模型が勝手に歩くこと。
 6…分からない。

 花子さん:「その補習を受けていた生徒の数は?」

 1…5人
 2…6人
 3…7人
 4…具体的な人数までは聞いていない。
 5…忘れた。

 リサ:「私は6人って聞いた」
 花子さん:「そう。話では6人って伝わってるの……」

 花子さんは悲しそうに言った。

 花子さん:「……真面目に答えてくれてありがとう。御礼に真相を話してあげるわ。どうして、私のような者が現れたのかを……」

 リサは花子さんの話に耳を傾けた。
 結論から言えば、ここにいる花子さんは幽霊。
 人間だった頃の名前は忘れてしまったという。
 だから、“トイレの花子さん”と呼んでくれて構わないと。
 その忌まわしい渾名が付いたことで、逆に復讐の炎が消えることは無いからと。

 花子さん:「本当はね、補習を受けていたのは7人だったの。その7人目が私」
 リサ:「なるほど……」

 補習を受けていた生徒達は夜まで取り残されることはなく、もっと早くに先生達が自分達のことを忘れて先に帰ってしまったことに気づいたという。
 これなら分かる。
 どうして忽然と行方不明ということになってしまったのか、それがリサには引っ掛かっていたからだ。
 そして補習を受けていた生徒達は、そのウサを晴らす為、同じく補習で残っていた1人の女子生徒を寄ってたかってイジメたという。
 それが、ここにいる“花子さん”。

 花子さん:「私はこのトイレの奥から2番目の個室に連れ込まれ、そして閉じ込められた。朝までね」
 リサ:「それはヒドい。………」

 すると花子さんはズイッとリサに迫った。

 花子さん:「『私でも、そこまではしない』ですって?あなた、誰かをイジメたことがあるのね?」
 リサ:(マズい!)
 花子さん:「何がマズいの?言ってみてよ。……ほら、言ってみろよ?」
 リサ:「…………」

 リサが黙秘していると、花子さんは元の位置に戻った。

 花子さん:「……話を続けるね。私は翌朝、助け出されたんだけど、私をイジメた6人はそれだけでは終わらなかったの。私をイジメたことに快感を覚えたみたいでね。だけどね、私は耐えられなかった。それで、ここで首を吊ったの。それが、私がここに括られている理由」
 リサ:(こいつは本物の幽霊だ。BOWでもクリーチャーでもない)
 花子さん:「そうそう。白井伝三郎とか言ったよね。そのうちの1人が、そういう名前だった」
 リサ:「えっ!?」
 花子さん:「『お前がテスト中に隣の席でゴホゴホ咳をうるさくしていたから、集中できなくって赤点を取ったんだ。責任取れ』ってね。ヒドいよね。私だって好きで風邪気味だったわけじゃなかったのにね」
 リサ:(私の時も似たようなヤツがいて、後で文句言ったような気がする。で、サイトーがそれに乗っかってきて、『そうよ!責任取りなさいよ!』って……」
 花子さん:「へえ……。やっぱりそうなんだ。あなたは自分が強いからって、弱い人間に寄り添うなんてことをしないんだね」
 リサ:「わ、私は別に赤点を取らなかった。だから、文句を言ったのはその時だけ。あなたをイジメた奴らみたいに、その後もイジメを続けたわけじゃない」
 花子さん:「そのサイトーってヤツも殺してやろうか?私にはそれができる。この場所に呼んで、取り殺すことくらい造作も無いのよ?」
 リサ:「……悪かったよ。ゴメン。あなたの恨み、良かったら私が晴らしてあげる」
 花子さん:「どうするつもりなの?」
 リサ:「その白井伝三郎を私が追い詰める。他の5人については知らないけど……」
 花子さん:「他の5人については、もう復讐したわ。あと1人。白井伝三郎……」
 リサ:「残りの5人は殺したの?」
 花子さん:「殺してないよ。殺したのは……5人の子供達。子供達が全員この学園に通って来た。そういう運命だったのよ」
 リサ:「本人を殺さないで?」
 花子さん:「そう。どうして、そうしたか分かる?」
 リサ:「分からない」
 花子さん:「私が自殺したことで、お父さんもお母さんも悲しんだわ。だから私は成仏できないでいる。だったらそいつらも、自分の子供が殺されたり行方不明になったりして悲しめばいい。そう思った」
 リサ:「白井伝三郎には子供がいない?」
 花子さん:「いないみたいね。もう歳を取ったから、両親も他界したみたいだし。親戚はいるみたいだけど、それはさすがにね……」

 狂気の科学者も、生涯独身であるようだ。

 花子さん:「イジメっ子のあなたは殺そうかと思ったけど、最後の1人を懲らしめてくれるのなら、いいわ。今は殺さないでいてあげる。あいつは私の力も及ばない」
 リサ:「分かった。白井伝三郎は、私の人間としての人生もメチャクチャにした最低野郎だ。捕まえてどうなるか分からないけど、フルボッコにくらいはしておくよ」

 花子さんは仮面を取った。
 その素顔は……。

 リサ:「! 私にそっくり!」
 花子さん:「あなたも仮面を取って」

 リサも仮面を取った。

 花子さん:「そうね。確かにそんな気がする。それじゃ、頼んだわよ」
 リサ:「待って!皆は解放してくれるんでしょ!?他の人達は関係無いはずだよ?!」
 花子さん:「ああ、そうね。解放してあげる。……最後に1つだけ。あなたが罪を犯したとき、その責任を取るのが、あなただとは限らないということ。思いがけないことで、あなたの犯した罪を償わされることもあるのよ。それは、その時に悔やんでも遅いから」
 リサ:「分かった。覚えておこう」

 リサは白井伝三郎を捕まえるのを3年以内と決めた。
 来年度からこの高校に通う。
 そうすれば、この旧校舎には行きやすい。
 成果報告をするのなら、その時の間だと。
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