[1月11日04:00.天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校 教育資料館(旧校舎)2F女子トイレ]
しばらく呆然としていたリサだったが、カランコロンという音でふと我に返った。
いつの間にか“トイレの花子さん”はいなくなっており、代わりに彼女が着けていたと思われる白い仮面が転がっていた。
カランコロンという音はそこからしたものだろう。
リサはそれを拾い上げた。
そして、自分の仮面と見比べてみる。
内側に自分の番号が印刷されているか否かの違いだけで、見た目も大きさも重さも殆ど変わらない。
そして、花子さんが頭の中に話し掛けて来た。
花子さん:「不思議なもので、幽霊になっても眠るし、夢を見るものね。夢の中で、私と同じ仮面を着けたコ達が何人も出て来たの。夢だと思ってたけど、正夢だったのね。私の夢は、あなたと出会うという予知夢だったのかも。あなた、この高校に来るんでしょう?……時々でいいから、私のこと、思い出してね」
リサ:「うん……」
花子さん:「そのかわいい制服、私も着たかったなぁ……」
花子さんの気配が消えた。
いつの間にか仮面も、自分の持っている物しか無くなった。
今ので成仏したとは思えない。
きっとまだこのトイレに括られているのだろう。
白井伝三郎を殺したら救われるのだろうか?
それとも、このままずっと永遠に括られたままなのだろうか。
リサ:「! 愛原先生」
いつの間にか廊下に、花子さんに消された愛原達が横たわっていた。
リサはトイレから出て、愛原達に駆け寄る。
全員息があった。
ただ気を失っているだけだった。
リサ:「生きてる……」
リサは安心して、愛原の頭を持ち上げ、膝枕をした。
リサはその間、花子さんから聞いた話をメモ帳に書いた。
花子さんの本名は不明だが、その正体はイジメ被害を苦に自殺した女子生徒の幽霊であるということ。
イジメ加害者は6人いたが、そのうちの1人が白井伝三郎だったということ。
残りの5人は子持ちであったが、この子供達が全員この学園に通って来たので、詳細は不明だが復讐したこと。
だが白井だけ独身で子無しだったので、この復讐法が使えずにいたこと。
リサ:「あれ?待てよ……」
その時、リサはあることに気づいた。
白井が花子さんと同級生だったということで、日本版リサ・トレヴァーが花子さんのようにセーラー服を着せられ、白い仮面を着けさせられていた理由が分かった。
だが、花子さんは生前から白い仮面を着けていたわけではないだろう。
死後、幽霊になった際にどうして白い仮面を着けていたのかは不明だが、そうなると、白井は幽霊となった花子さんのことを知っているということになる。
それは直接見たのか、或いは誰かから聞いたのかは分からない。
だが、前者ではないだろう。
もしそうなら、花子さんは何が何でも復讐しようとしただろう。
リサ:「いずれにせよ、白井は殺す……。あなたの恨みは、私から晴らしてあげる」
愛原:「う、ううん……」
リサ:「あっ!」
その時、愛原が目を覚ました。
リサ:「先生、先生!」
愛原:「リサか……。ん?膝枕してくれたのか?」
リサ:「えへへ……うん!」
愛原:「ありがとう。柔らかい膝だったよ」
愛原は起き上がると、リサの頭を撫でた。
リサは満面の笑みを浮かべた。
愛原:「それより何があったんだ?」
リサは愛原が天井に飲み込まれてから、花子さんが消えるまでの経緯を話した。
愛原:「幽霊って……本当にいたのか」
リサ:「白井はその幽霊を利用して、私達を造ったのかもしれない」
愛原:「マジで直接本人に会って、問い質したいくらいだ」
もっとも今、白井がどこにいるのかは皆目見当が付かない。
愛原:「高橋!斉藤社長!栗原さん!」
愛原は他の気絶しているメンバーを起こした。
斉藤:「い、いてててて……、エラい目に遭った。皆さん、無事ですか?」
高橋:「くそっ、フザけやがって!あの仮面の女、蜂の巣にしてやる!」
リサ:「無理だよ。お兄ちゃんでも、あのコには勝てないよ」
高橋:「あぁッ!?」
愛原:「高橋、リサの言う通りだ。もし勝てるなら、リサがとっくに倒していただろうさ」
高橋:「先生、そんな……」
斉藤:「ああーっ!」
愛原:「ど、どうしました、社長!?」
斉藤:「もう次の日の午前4時ですよ!?どうなってるんだ!?」
坂上:「こ、校長に何て説明したら……」
栗原:「親に何て説明したら……」
日野:「親に何て説明したら……」
[同日04:33.天候:晴 JR上野駅]
〔まもなく4番線に、各駅停車、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、御徒町に止まります〕
愛原達は後の事を坂上に任せ、始発電車で帰ることにした。
斉藤は4時29分発の京浜東北線、各駅停車、大宮行きで。
4時台に上野駅から出る大宮方面行きで、それが一番早い電車である。
池袋に住んでいるという日野は、山手線内回りで帰ることになるが、4時54分まで待たなくてはならなかった。
山手線には上野駅始発の電車が無いからである。
一番悲惨なのは栗原蓮華。
東京の地下鉄は他のJRや私鉄よりも始発が遅く、上野始発でありながら5時15分でようやく始発電車が出発するという有り様だった。
いかに剣道の有段者とはいえ、女子高生を1人で長時間駅で待たせるのもアレということで、愛原は彼女にタクシーで帰るように言い、タクシー代を渡そうとした。
しかし、言い出しっぺは自分なのだからと、斉藤がタクシーチケットを渡した。
結局、栗原はそのタクシーチケットを受け取り、学校の近くの通りで空車のタクシーで拾い、それで帰宅した。
〔うえの、上野。ご乗車、ありがとうございます。次は、御徒町に止まります〕
愛原達は田端駅からやってきた電車に乗り込んだ。
3連休最終日の早朝ということもあってか、車内はガラガラである。
3人はブルーの座席に腰かけた。
リサ:「先生、お腹空いた」
愛原:「そうだな。途中で食べて帰ろう。JRは始発が早いが、地下鉄は遅い。結局、アキバで足止めされることになる」
御徒町駅で都営地下鉄大江戸線に乗り換えようが、秋葉原で都営地下鉄新宿線に乗り換えようが、都営地下鉄もまた5時過ぎまで始発電車が無いのである。
発車のベルがホームに鳴り響く。
〔4番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
電車が走り出す。
リサ:「このことは善場さんにも報告するの?」
愛原:「どうしようなぁ……。幽霊と会いましたなんて、信じてもらえるかなぁ……」
愛原は家に着くまで、今回の出来事を纏めるのに苦労したようだ。
ただ1つ、花子さんという幽霊に遭遇し、しかもそれが白井伝三郎と凄く繋がりのある者だったということで、余計に……。
しばらく呆然としていたリサだったが、カランコロンという音でふと我に返った。
いつの間にか“トイレの花子さん”はいなくなっており、代わりに彼女が着けていたと思われる白い仮面が転がっていた。
カランコロンという音はそこからしたものだろう。
リサはそれを拾い上げた。
そして、自分の仮面と見比べてみる。
内側に自分の番号が印刷されているか否かの違いだけで、見た目も大きさも重さも殆ど変わらない。
そして、花子さんが頭の中に話し掛けて来た。
花子さん:「不思議なもので、幽霊になっても眠るし、夢を見るものね。夢の中で、私と同じ仮面を着けたコ達が何人も出て来たの。夢だと思ってたけど、正夢だったのね。私の夢は、あなたと出会うという予知夢だったのかも。あなた、この高校に来るんでしょう?……時々でいいから、私のこと、思い出してね」
リサ:「うん……」
花子さん:「そのかわいい制服、私も着たかったなぁ……」
花子さんの気配が消えた。
いつの間にか仮面も、自分の持っている物しか無くなった。
今ので成仏したとは思えない。
きっとまだこのトイレに括られているのだろう。
白井伝三郎を殺したら救われるのだろうか?
それとも、このままずっと永遠に括られたままなのだろうか。
リサ:「! 愛原先生」
いつの間にか廊下に、花子さんに消された愛原達が横たわっていた。
リサはトイレから出て、愛原達に駆け寄る。
全員息があった。
ただ気を失っているだけだった。
リサ:「生きてる……」
リサは安心して、愛原の頭を持ち上げ、膝枕をした。
リサはその間、花子さんから聞いた話をメモ帳に書いた。
花子さんの本名は不明だが、その正体はイジメ被害を苦に自殺した女子生徒の幽霊であるということ。
イジメ加害者は6人いたが、そのうちの1人が白井伝三郎だったということ。
残りの5人は子持ちであったが、この子供達が全員この学園に通って来たので、詳細は不明だが復讐したこと。
だが白井だけ独身で子無しだったので、この復讐法が使えずにいたこと。
リサ:「あれ?待てよ……」
その時、リサはあることに気づいた。
白井が花子さんと同級生だったということで、日本版リサ・トレヴァーが花子さんのようにセーラー服を着せられ、白い仮面を着けさせられていた理由が分かった。
だが、花子さんは生前から白い仮面を着けていたわけではないだろう。
死後、幽霊になった際にどうして白い仮面を着けていたのかは不明だが、そうなると、白井は幽霊となった花子さんのことを知っているということになる。
それは直接見たのか、或いは誰かから聞いたのかは分からない。
だが、前者ではないだろう。
もしそうなら、花子さんは何が何でも復讐しようとしただろう。
リサ:「いずれにせよ、白井は殺す……。あなたの恨みは、私から晴らしてあげる」
愛原:「う、ううん……」
リサ:「あっ!」
その時、愛原が目を覚ました。
リサ:「先生、先生!」
愛原:「リサか……。ん?膝枕してくれたのか?」
リサ:「えへへ……うん!」
愛原:「ありがとう。柔らかい膝だったよ」
愛原は起き上がると、リサの頭を撫でた。
リサは満面の笑みを浮かべた。
愛原:「それより何があったんだ?」
リサは愛原が天井に飲み込まれてから、花子さんが消えるまでの経緯を話した。
愛原:「幽霊って……本当にいたのか」
リサ:「白井はその幽霊を利用して、私達を造ったのかもしれない」
愛原:「マジで直接本人に会って、問い質したいくらいだ」
もっとも今、白井がどこにいるのかは皆目見当が付かない。
愛原:「高橋!斉藤社長!栗原さん!」
愛原は他の気絶しているメンバーを起こした。
斉藤:「い、いてててて……、エラい目に遭った。皆さん、無事ですか?」
高橋:「くそっ、フザけやがって!あの仮面の女、蜂の巣にしてやる!」
リサ:「無理だよ。お兄ちゃんでも、あのコには勝てないよ」
高橋:「あぁッ!?」
愛原:「高橋、リサの言う通りだ。もし勝てるなら、リサがとっくに倒していただろうさ」
高橋:「先生、そんな……」
斉藤:「ああーっ!」
愛原:「ど、どうしました、社長!?」
斉藤:「もう次の日の午前4時ですよ!?どうなってるんだ!?」
坂上:「こ、校長に何て説明したら……」
栗原:「親に何て説明したら……」
日野:「親に何て説明したら……」
[同日04:33.天候:晴 JR上野駅]
〔まもなく4番線に、各駅停車、大船行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。次は、御徒町に止まります〕
愛原達は後の事を坂上に任せ、始発電車で帰ることにした。
斉藤は4時29分発の京浜東北線、各駅停車、大宮行きで。
4時台に上野駅から出る大宮方面行きで、それが一番早い電車である。
池袋に住んでいるという日野は、山手線内回りで帰ることになるが、4時54分まで待たなくてはならなかった。
山手線には上野駅始発の電車が無いからである。
一番悲惨なのは栗原蓮華。
東京の地下鉄は他のJRや私鉄よりも始発が遅く、上野始発でありながら5時15分でようやく始発電車が出発するという有り様だった。
いかに剣道の有段者とはいえ、女子高生を1人で長時間駅で待たせるのもアレということで、愛原は彼女にタクシーで帰るように言い、タクシー代を渡そうとした。
しかし、言い出しっぺは自分なのだからと、斉藤がタクシーチケットを渡した。
結局、栗原はそのタクシーチケットを受け取り、学校の近くの通りで空車のタクシーで拾い、それで帰宅した。
〔うえの、上野。ご乗車、ありがとうございます。次は、御徒町に止まります〕
愛原達は田端駅からやってきた電車に乗り込んだ。
3連休最終日の早朝ということもあってか、車内はガラガラである。
3人はブルーの座席に腰かけた。
リサ:「先生、お腹空いた」
愛原:「そうだな。途中で食べて帰ろう。JRは始発が早いが、地下鉄は遅い。結局、アキバで足止めされることになる」
御徒町駅で都営地下鉄大江戸線に乗り換えようが、秋葉原で都営地下鉄新宿線に乗り換えようが、都営地下鉄もまた5時過ぎまで始発電車が無いのである。
発車のベルがホームに鳴り響く。
〔4番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
電車が走り出す。
リサ:「このことは善場さんにも報告するの?」
愛原:「どうしようなぁ……。幽霊と会いましたなんて、信じてもらえるかなぁ……」
愛原は家に着くまで、今回の出来事を纏めるのに苦労したようだ。
ただ1つ、花子さんという幽霊に遭遇し、しかもそれが白井伝三郎と凄く繋がりのある者だったということで、余計に……。