報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔界への誘い」

2019-09-27 21:13:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間8月25日20:00.天候:晴 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ 魔王城新館]

 リリアンヌ:「ヒャーッハハハハハハハーッ!キノコの宴だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ダンテ一門の暑気払いは、たまに魔界の魔王城で行われることもある。
 もちろんこれは、魔界共和党党首で首相の安倍春明の企画に乗っかったものである。
 場内のコンベンションホールでは、設置されたステージでリリアンヌが趣味のヘビーメタルを披露している。
 ヘビメタというか、デスメタルである。
 当然ながら、いつもは地味なすっぴんにTシャツやジーンズなどのラフな格好でいるのに対し、今は完全にデスメタルのメイクをし、衣装も刺々しいものを着ている。
 そして、手にはエレキギター。
 リリアンヌは中等教育を受けていなかった為、それを受ける為に魔界に住んでいる。
 アルカディアシティにも学校はあり、ダンテ一門の見習弟子で中等教育を受けていない者は通学が義務付けられていた。
 で、そこは全寮制であり、希望すれば高等教育も受けられる。
 日本で言うところの義務教育を終えていない見習が、通学を義務付けられるのである。
 リリアンヌもその1人であった。
 尚、イリーナ組の弟子2人はこの限りではない。
 マリアはハイスクールをギリギリ何とか卒業できるレベルで入門したし、稲生なんかは完全に大学卒業と同時に入門したので、改めて教育を受ける必要は無かった。

 リリアンヌ:「メルシー・ボークー!」

 リリアンヌはフランス人。
 最後には自動通訳魔法を使わず、母国語のフランス語でライブを締めた。
 尚、今のを英語に直すと、“Thank you so much!”となる。
 これを更に日本語に訳すまでは、しなくても良いだろう。

 横田:「はい、拍手〜。沢山の拍手をお願い致します。拍手をすればするほど、リリアンヌさんがハッスルし、衣装を脱いでくれます。クフフフフフ……」
 リリアンヌ:「ヒャッハーッ!」

 ボコッ!(リリアンヌにエレキギターでボコられる横田理事)

 横田:「嗚呼ッ!御無体な!」

 稲生:「相変わらずだなぁ……」

 稲生は稲生でリリアンヌに精一杯の拍手を送った。

 稲生:「最近、ケンショーレンジャーとして活動していないみたいだけど……」
 横田:「クフフフフフ……。ここ最近は魔界共和党理事の仕事が忙しく、それどころではなくなったのです。功徳です」
 稲生:「うわっ、いつの間に背後に!?……顕正会の仕事は?」
 横田:「それ以上は【自主規制致します】」
 安倍:「横田君は司会に専念して」
 横田:「総理!これは大変失礼をば……」

 横田理事、そそくさと司会席に戻る。

 横田:「それでは次なる余興は、『魔界のサンドイッチマン』こと、『本当にサンドイッチになった男』2人の漫才コントです」

 稲生:「安倍総理、もしかして……?」
 安倍:「ええ。人間界に帰る前に、またうちの女王陛下の為に一肌脱いで頂きたいのです」
 稲生:「分かりましたよ」

 魔界王国アルカディアを総べる魔王は、今は女性。
 つまり、女魔王だ。
 略式の冠であるティアラは、黒いコウモリをモチーフにしたおどろおどろしいものだ。
 肌の色も青白く、瞳の色も赤い所は魔族であるとすぐに分かる。
 だが、その微笑みに邪悪さは感じられない。
 この女王ルーシー・ブラッドプール1世の出自は吸血鬼。
 つまり、主食は人間の血液なのである。
 吸血鬼は男女共に人間の女性の血液を好む傾向にあるが、ルーシーは男女関係無く、血液型O型に拘った。
 で、この場にいる血液型O型の人間というのが稲生だけなのである。
 稲生は既に魔道士であるが、まだ見習ということもあり、まだまだ人間臭さを残している。
 その為、ルーシーの目に留まったようである。

 安倍:「それでは400ml献血をお願いしたいのであります」
 稲生:「人間界の安倍総理みたいな喋り方、やめてくださいよ」
 安倍:「晋三おじさんは、私の遠い親戚なのであります」
 稲生:「分かってますよ」
 安倍:「もちろん、美味しい料理を沢山食べて頂いてからで結構です」
 稲生:「その方が血液にも味が出るでしょうからね」

 尚、王場内には献血ルームがあり、有志の国民による女王への血液献上が行われているもよう。
 協力すると、恩賜があるらしい。

[魔界時間8月26日00:00.魔王城内→魔界高速電鉄(アルカディアメトロ)1番街駅]

 魔王城内に日付の変わる鐘の音が鳴り響く。

 稲生:「クロックタワーみたい」
 マリア:「いや、それまんま『時計台』って意味なんだけどね」
 イリーナ:「それじゃ、私達は帰ろうかね。今回は一次会で引き上げだよ」
 稲生:「はい」
 マリア:「了解です」
 アナスタシア:「イリーナ組は一次会で引き上げるのね?」
 イリーナ:「ええ。ダンテ先生が来られていないから、少し盛り上がりに欠けるもの……」
 アナスタシア:「ま、それは確かに。いずれまた人間界でパーティーでもやりましょう。人間界の方がダンテ先生も参加して下さるわよ」
 イリーナ:「だといいけどねぇ……」
 稲生:「先生、馬車を用意してくれたみたいですよ」
 マリア:「駅まで馬車で行けます」
 イリーナ:「あいよ。それじゃ、私達はお先にね」
 アナスタシア:「ああ」

 稲生達は一足先に魔王城をあとにした。

 稲生:「僕達が真っ先に帰るみたいですね」
 イリーナ:「他の組は魔王城に泊まるみたいだけど、あなた達はそうしたい?」
 稲生:「僕はどちらでも……」
 イリーナ:「日本人らしい答えね」
 マリア:「ぶっちゃけ、魔王城ってホラー過ぎて落ち着かないんですよね」
 イリーナ:「うちの屋敷も相当ホラーチックだけど、その上を行くからね」

 マリアの屋敷は“バイオハザード”に出て来る洋館みたいなもの。
 ゾンビさえいなければ、それなりに快適に過ごせた屋敷であったはずだ。
 それに対して魔王城は“アダムスファミリー”の洋館を更に巨大化したようなものだと表現すれば分かりやすいかな?
 そこの家族だけしか快適に過ごせない。

 イリーナ:「1番街駅から冥界鉄道公社の特別列車に乗れるから、それで人間界に帰るわよ」
 稲生:「今度の電車はどんなヤツだろう……?」
 マリア:「勇太、あんまり期待しない方がいいよ?」
 稲生:「そうですかね」
 イリーナ:「帰ったら、郵便物の山の仕分け作業があるから、勇太君よろしくね」
 稲生:「あ、はい」
 イリーナ:「因みに私の占いでは、勇太君宛ての手紙もあるよ?」
 稲生:「そうなんですか。誰からでしょう?」
 イリーナ:「藤谷春人君からだって」
 稲生:「あ、もしかして、支部総登山のお知らせかな。でも、修行で忙しいから行けないや……」
 イリーナ:「別に行ってもいいよ」
 稲生:「えっ、本当ですか?」
 イリーナ:「お土産はお饅頭でよろしく」
 稲生:「わ、分かりました」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする