報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「行き先が他作品と被ってる?気のせいだよ」

2019-09-21 21:00:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日11:05.天候:不明 宮城県仙台市青葉区 仙台市地下鉄仙台駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台、仙台です。お降りの際、お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います」〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 最終日は仙台市内でまったり過ごそうと思っていたのだが、いかんせんどこがいいか分からない。
 すると、市内に走り屋時代の友達がいて、その友達とよく遊びに行った場所があると高橋が言った。
 その場所を教えてもらい、これから向かっているところだ。
 当の高橋は友達と一緒に走りに行ってるようだ。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 仙台駅で電車を降りる。
 仙台市の地下鉄は東西南北、十字型に路線が通っている。
 私達はその中心点にある駅で降りた。
 今度はその中心点から右へ向かう電車に乗り換えることとなる。

 愛原:「高橋の話だと、仙台市の結構郊外にあるみたいだぞ?」
 高野:「そりゃ走り屋の行くような所って、案外街中よりは郊外が多いですよ。それも、車でしか行けない所とか……」
 愛原:「マジかよ。車で来てないのにそんな所へ行って大丈夫なのか?」
 高野:「マサは何て言ってたんです?」
 愛原:「今なら地下鉄とバスで行けると言っていたが……」
 高野:「そのバスもかなり本数が少ないと思われます。慎重に行きましょう」
 愛原:「そうだな」
 高野:「先生に御不便をおかけしたら、マサに叩き聞かせておきますので」
 愛原:「……まずは言い聞かせてやろうな?」

 私達は今度は東西線のホームに向かった。
 南北線もなかなか深い所を通っているが、東西線はもっと深い所を走っている。
 地下鉄という鉄道は、新しければ新しいほど地下深くを走るというベタな法則があるが、それは地方の地下鉄も同じことであるようだ。

 愛原:「何だか懐かしいものがある」
 高野:「何ですか?」
 愛原:「こぢんまりとしたトンネルの中のホーム、まるで霧生電鉄の霞台団地駅を思い出すよ」
 高野:「私と会う前、まだ先生とマサがお2人で霧生市を駆けずり回っていた頃ですね?」
 愛原:「そうだ。その鉄道の西の終点が霧生大山寺駅(※)だったわけだが、そこへ向かう前の話だよ」

 ※本編ではただ単に『大山寺駅』と称していたが、名古屋鉄道に同駅名があるということで、区別する為に頭に『霧生』を付けて呼ぶことににする。

 高野:「その駅での活躍、マサから聞いてますよ」
 愛原:「高橋から聞いたんだ?」
 高野:「たまにあいつとは一緒に飲むことがあるんですよ。で、あいつ酔っ払うと先生の話しかしないんです」
 愛原:「相変わらずだな……」

 私はスマホを取り出した。
 実はそこには霧生市で戦った時に撮影した写真なんかもある。
 もちろん、おぞましいゾンビや逆さ女……もとい、サスペンデッドの写真もあって、とても斉藤さんには見せられない。
 が!

 斉藤:「きゃーっ!リサさん、きゃわいぃぃぃっ!

 セーラー服を着て仮面を外した時のリサの姿を撮影した画像を、斉藤さんに見られてしまった。

 愛原:「あっとととと!ダメだよ、斉藤さん!」
 斉藤:「今の何ですか!?リサさん、どうしてセーラー服着てるの!?」
 愛原:「そ、それは……!」

 実験体として拉致された少女達に、赤いアンブレラが『制服』として彼女達に着せたものだ。
 それはリサとて同じ。
 目の所だけ横に細長く開いた白い仮面もまた、そんな少女達に支給されたもの。
 恐らく、制御装置としての意味合いがあったのだと思われる。
 セーラー服は分からない。
 リサが着ていたのは夏用の白い半袖のものであった。
 そしてそれは、今でも家に保管している。
 仮面の方は政府エージェントに押収されたが、セーラー服だけは先に返された。
 今はその仮面も返されているが、制御装置の部分だけは取り外されている。
 リサにとっては研究所に閉じ込められ、過酷な実験を受けさせられていたトラウマの品々であるが、私は保管している。

 高野:「リサちゃんの前の学校の制服だよ。仮面は学芸会の時のものじゃないかな?ねぇ?リサちゃん」
 リサ:「うん。そうだったかも」

 高野君が上手く誤魔化してくれ、リサもそれに合わせた。

〔3番線に、荒井行き電車が到着します。……〕

 7〜8分に1本という地下鉄にしてはローカル線な仙台市地下鉄東西線。
 やっと接近放送がホームに響いた。

 斉藤:「まだその時の制服持ってる!?」
 愛原:「一応、保管してあるよ」
 斉藤:「リサさん、是非着てみて!?私、リサさんのセーラー服姿見てみたい!」

 斉藤さんは鼻息を荒くしてリサに迫った。

 リサ:「ヤダ」
 斉藤:「えー、何でー!?さっきの写真見た限り、物凄く似合ってたよ!?」
 リサ:「ヤダったら、ヤダ」

 基本的には斉藤さんの頼みは聞くリサも、このトラウマの品だけは着たくないようだ。
 もしも東京中央学園の制服がブレザーではなく、セーラー服だったら、リサは行くのを嫌がっただろう。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 そうこうしているうちに電車がやってくる。

 愛原:「ほら、早く乗るぞ」

 南北線同様、乗客がぞろぞろと降りて行く。
 空席の目立つ先頭車に私達は乗り込み、ブルーの座席に腰掛けた。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 南北線同様、短い発車サイン音がホームに鳴り響く。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 耳に響くドアチャイムが鳴りながら、車両のドアが閉まった。
 東西線にもまたホームドアがあり、これが閉まってから電車が走り出した。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕
〔The next stop is Miyagino-dori station.〕
〔本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕

 斉藤:「おーねーがーいー!」
 リサ:「ヤダったらヤダ!」
 愛原:「おいおい、いい加減に……」
 斉藤:「今度、空手の道着姿見せてあげるから」
 リサ:「しょ、しょうがないな……」
 愛原:「いいんかーい!」

 かくいう私も、こんな御嬢様が空手の有段者であることを未だに信じられないでいた。
 しかし鳴子における餓鬼の襲撃の際、斉藤さんが見事な手さばきと足さばきで餓鬼を翻弄してくれたおかげで、私達は餓鬼を倒すことができた。
 あれのおかげで斉藤さんが実際に空手の有段者であることを実感したものだ。
 そして私もまた道着を着た斉藤さんの姿を見たことがない。
 それにしても……。
 斉藤社長の指定する場所に行く度にBOWに襲われたり、娘に空手を段位取得まで習わせたり、そして何よりスーパータイラントがリサではなく斉藤絵恋さんを狙ったというのが何とも……。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする