[1月2日12:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
魔法陣に飛び込んで、再びワンスターホテルに戻って来た。
エレーナの部屋の脇を通るが、どうやらエレーナはいないようだ。
エレベーターで地下1階から1階へと上がる。
稲生:「おや?」
ロビーにはまだ他の組の魔道師達がたむろしていた。
で、窓の外を見るとアナスタシア組の面々が黒塗りの車3台に分乗して立ち去る所であった。
稲生:「年末に外国に行ったと思ったら帰って来て、また出国ですかね?」
イリーナ:「何だかんだ言って、この国が気に入ってるんだよね。ナスっち達は」
稲生:「ふーん……。あ、そうだ。帰りの足を確保しないと……」
稲生はスマホを取り出すと、アプリを起動してタクシーを呼んだ。
機械を使ってはいるが、まあ、数百年前の人間が見たら、確かに魔法を使っているように見えるかもしれない。
イリーナは他の組の指導者と思しき魔道師と話をしていたが、マリアは面識の無い他の組の魔女と積極的に話そうとしなかった。
それは相手側もそうである。
で、男一人の稲生はもっと蚊帳の外。
いたたまれなくなって、エントランスの外に出る。
すると、そこへ何台ものハイヤーが到着した。
で、ロビーでたむろしていた魔道師達がぞろぞろ出て来る。
組の指導者と思しき魔道師が、颯爽とリアシートに乗り込む。
後から続いて乗る弟子達。
その様子を見ていた稲生は、ハッとした。
稲生:「しまった!」
頭を抱える稲生を他所に発車して行くハイヤー達。
入れ違うように、1台のタクシーがやってきた。
運転手:「稲生様ですか?」
稲生:「あ……はい」
イリーナもまた大魔道師なのだから、ハイヤーを予約するべきであった。
一応、黒塗りのハイグレードタクシーではある。
イリーナ:「おっ、車来た?」
稲生:「あ、はい」
イリーナとマリアは何の疑いも無く、リアシートに乗り込んだ。
稲生は冷や汗をかきながら助手席に乗り込む。
稲生:「JR上野駅までお願いします」
運転手:「はい、ありがとうございます」
運転手はメーターを作動させると、車を発進させた。
メーターは魔界で乗った朧車のそれと違って液晶表示である。
イリーナ:「何だかお腹減ったねぇ」
マリア:「もうランチの時間ですよ」
イリーナ:「アルカディアと日本じゃ、時差が無いから楽でいいね」
マリア:「それはあの魔法陣が完璧だからですよ。本来だったら、時差どころのレベルじゃないでしょ?」
イリーナ:「まあ、そうなんだけどね。もっと楽して冥鉄の列車に便乗するという手もあるんだけど、日本のどこに着くか分かんないしね」
マリア:「さっき勇太と1番街駅を歩いていたら、一応次の列車の行き先は案内してましたよ?」
イリーナ:「どこ?」
マリア:「西鉄福岡ですって」
イリーナ:「……んっ?さんの所へ行かせるフラグかしら?」
マリア:「分かりません」
リアシートに座る魔女達が他愛もない話をしているのを聞いて、稲生はホッとした。
タクシーかハイヤーか、そういうのを気にしない2人で良かったと。
イリーナ:「勇太君」
稲生:「な、何でしょう?」
イリーナ:「上野駅に着いたら、電車に乗る前にランチをしたいわ」
稲生:「りょ、了解しました。いい店を検索しておきます」
イリーナ:「お願いね」
マリア:「師匠の水晶球で一発検索できるんじゃないですか?」
イリーナ:「魔力の無駄使いはダメよ。機械に頼れるなら、その方がいい。覚えておきなさい」
マリア:「はあ……」
[同日12:30.天候:晴 JR上野駅]
稲生達を乗せたタクシーは、JR上野駅に到着した。
料金の支払いはイリーナ得意のプラチナカードである。
その為、タクシーを予約する際は必ずクレカの使える会社を指定していた。
イリーナ:「これだけの大きなターミナル駅なら、美味しいお店もありそうね」
稲生:「はい。どうぞ、こちらです」
駅構内に入る3人。
稲生:「先生、先ほどは失礼しました」
イリーナ:「えっ、何が?」
稲生:「他の先生方が自前の車やハイヤーを用意している中、僕はタクシーを頼んでしまって……。本当はハイヤーでなければいけないのに……」
イリーナ:「いいよ。東京のタクシーは、ハイヤーと変わらないし」
稲生:「そうですかね……」
イリーナ:「昔、本当におカネが無かった時は、ヒッチハイクや貨物列車に便乗して旅をしたものさ。それと比べれば、タクシーでも贅沢なものよ」
マリア:「でも今度は、ちゃんとハイヤー呼んであげなよ」
稲生:「はい、すいません」
マリア:「後ろに棺が乗せられるヤツw」
ボコッ!
マリア:「It heart!(痛っ!)」
マリアのおフザケにゲンコツを食らわせるイリーナ。
因みに英文の綴りだけ読むと、『イット・ハート』であるが、実際は早口で言う為、本当に日本語で『痛っ!』と聞こえるという。
イリーナ:「アタシゃまだ霊柩車に乗るのは早いよ?マリアにはもう少し指導が必要ね」
マリア:「は、はい。そうしてください」
イリーナ:「ん?」
稲生はキップ売り場に行くと、そこから大宮までの乗車券とグリーン券を購入した。
イリーナ:「あれ?電車に乗る前にランチって言わなかった?」
ランチ:「電車に乗りながらランチ?そうか。Ekiben(駅弁)だな」
稲生:「違いますよ。改札の中にその店があるんです」
イリーナ:「あ、そういうこと」
マリア:「Ekinakaか。さすがは勇太だな」
イリーナ:「日本国内の移動は勇太君に任せて安心だものね」
稲生:「ありがとうございます。その代わり、ロシア国内の移動とイギリス国内の移動はお願いします」
イリーナ:「そうね。いずれはシベリア鉄道に乗せてあげるわ」
マリア:「列車内で“魔の者”と格闘しそうで怖いです」
改札内にあるイタリアンカフェに入った。
稲生:「今日のお昼はパスタにしましょう」
イリーナ:「なるほど。マリアの人形達の作るパスタも美味しいけど、たまには別の味を楽しむのもオツなものね」
なるべくコンコースが見える席……というよりは電車が見える席を選んだ稲生だった。
魔法陣に飛び込んで、再びワンスターホテルに戻って来た。
エレーナの部屋の脇を通るが、どうやらエレーナはいないようだ。
エレベーターで地下1階から1階へと上がる。
稲生:「おや?」
ロビーにはまだ他の組の魔道師達がたむろしていた。
で、窓の外を見るとアナスタシア組の面々が黒塗りの車3台に分乗して立ち去る所であった。
稲生:「年末に外国に行ったと思ったら帰って来て、また出国ですかね?」
イリーナ:「何だかんだ言って、この国が気に入ってるんだよね。ナスっち達は」
稲生:「ふーん……。あ、そうだ。帰りの足を確保しないと……」
稲生はスマホを取り出すと、アプリを起動してタクシーを呼んだ。
機械を使ってはいるが、まあ、数百年前の人間が見たら、確かに魔法を使っているように見えるかもしれない。
イリーナは他の組の指導者と思しき魔道師と話をしていたが、マリアは面識の無い他の組の魔女と積極的に話そうとしなかった。
それは相手側もそうである。
で、男一人の稲生はもっと蚊帳の外。
いたたまれなくなって、エントランスの外に出る。
すると、そこへ何台ものハイヤーが到着した。
で、ロビーでたむろしていた魔道師達がぞろぞろ出て来る。
組の指導者と思しき魔道師が、颯爽とリアシートに乗り込む。
後から続いて乗る弟子達。
その様子を見ていた稲生は、ハッとした。
稲生:「しまった!」
頭を抱える稲生を他所に発車して行くハイヤー達。
入れ違うように、1台のタクシーがやってきた。
運転手:「稲生様ですか?」
稲生:「あ……はい」
イリーナもまた大魔道師なのだから、ハイヤーを予約するべきであった。
一応、黒塗りのハイグレードタクシーではある。
イリーナ:「おっ、車来た?」
稲生:「あ、はい」
イリーナとマリアは何の疑いも無く、リアシートに乗り込んだ。
稲生は冷や汗をかきながら助手席に乗り込む。
稲生:「JR上野駅までお願いします」
運転手:「はい、ありがとうございます」
運転手はメーターを作動させると、車を発進させた。
メーターは魔界で乗った朧車のそれと違って液晶表示である。
イリーナ:「何だかお腹減ったねぇ」
マリア:「もうランチの時間ですよ」
イリーナ:「アルカディアと日本じゃ、時差が無いから楽でいいね」
マリア:「それはあの魔法陣が完璧だからですよ。本来だったら、時差どころのレベルじゃないでしょ?」
イリーナ:「まあ、そうなんだけどね。もっと楽して冥鉄の列車に便乗するという手もあるんだけど、日本のどこに着くか分かんないしね」
マリア:「さっき勇太と1番街駅を歩いていたら、一応次の列車の行き先は案内してましたよ?」
イリーナ:「どこ?」
マリア:「西鉄福岡ですって」
イリーナ:「……んっ?さんの所へ行かせるフラグかしら?」
マリア:「分かりません」
リアシートに座る魔女達が他愛もない話をしているのを聞いて、稲生はホッとした。
タクシーかハイヤーか、そういうのを気にしない2人で良かったと。
イリーナ:「勇太君」
稲生:「な、何でしょう?」
イリーナ:「上野駅に着いたら、電車に乗る前にランチをしたいわ」
稲生:「りょ、了解しました。いい店を検索しておきます」
イリーナ:「お願いね」
マリア:「師匠の水晶球で一発検索できるんじゃないですか?」
イリーナ:「魔力の無駄使いはダメよ。機械に頼れるなら、その方がいい。覚えておきなさい」
マリア:「はあ……」
[同日12:30.天候:晴 JR上野駅]
稲生達を乗せたタクシーは、JR上野駅に到着した。
料金の支払いはイリーナ得意のプラチナカードである。
その為、タクシーを予約する際は必ずクレカの使える会社を指定していた。
イリーナ:「これだけの大きなターミナル駅なら、美味しいお店もありそうね」
稲生:「はい。どうぞ、こちらです」
駅構内に入る3人。
稲生:「先生、先ほどは失礼しました」
イリーナ:「えっ、何が?」
稲生:「他の先生方が自前の車やハイヤーを用意している中、僕はタクシーを頼んでしまって……。本当はハイヤーでなければいけないのに……」
イリーナ:「いいよ。東京のタクシーは、ハイヤーと変わらないし」
稲生:「そうですかね……」
イリーナ:「昔、本当におカネが無かった時は、ヒッチハイクや貨物列車に便乗して旅をしたものさ。それと比べれば、タクシーでも贅沢なものよ」
マリア:「でも今度は、ちゃんとハイヤー呼んであげなよ」
稲生:「はい、すいません」
マリア:「後ろに棺が乗せられるヤツw」
ボコッ!
マリア:「It heart!(痛っ!)」
マリアのおフザケにゲンコツを食らわせるイリーナ。
因みに英文の綴りだけ読むと、『イット・ハート』であるが、実際は早口で言う為、本当に日本語で『痛っ!』と聞こえるという。
イリーナ:「アタシゃまだ霊柩車に乗るのは早いよ?マリアにはもう少し指導が必要ね」
マリア:「は、はい。そうしてください」
イリーナ:「ん?」
稲生はキップ売り場に行くと、そこから大宮までの乗車券とグリーン券を購入した。
イリーナ:「あれ?電車に乗る前にランチって言わなかった?」
ランチ:「電車に乗りながらランチ?そうか。Ekiben(駅弁)だな」
稲生:「違いますよ。改札の中にその店があるんです」
イリーナ:「あ、そういうこと」
マリア:「Ekinakaか。さすがは勇太だな」
イリーナ:「日本国内の移動は勇太君に任せて安心だものね」
稲生:「ありがとうございます。その代わり、ロシア国内の移動とイギリス国内の移動はお願いします」
イリーナ:「そうね。いずれはシベリア鉄道に乗せてあげるわ」
マリア:「列車内で“魔の者”と格闘しそうで怖いです」
改札内にあるイタリアンカフェに入った。
稲生:「今日のお昼はパスタにしましょう」
イリーナ:「なるほど。マリアの人形達の作るパスタも美味しいけど、たまには別の味を楽しむのもオツなものね」
なるべくコンコースが見える席……というよりは電車が見える席を選んだ稲生だった。