報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「新年早々」

2019-01-07 18:48:38 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日06:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 稲生勇太:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」

 初日の出に御題目を唱える稲生。

 イリーナ:「昇ったねぇ……」
 マリア:「ただの日の出ですよね?」

 マリアは大きな欠伸をして言った。

 イリーナ:「日本人にとって、初日の出はおめでたいんだよ」
 マリア:「師匠は何回目の初日の出ですか?」
 イリーナ:「えーと、1000……ま、そんなことどうでもいいじゃないか。少なくとも、日蓮上人よりは年上さね」
 勇太:「初日の出も見れたことだし、朝食にしましょうか」
 イリーナ:「うん、そうしよう。マリアの人形達が作ったお節料理、早速頂こうじゃないか」
 勇太:「お雑煮も作ってましたね」

 家の中に入るダンテ一門イリーナ組の面々。

 勇太:「マリアさんは料理をしないんですか?」
 マリア:「Huh?なに?私の作ったの食べたいの?」
 イリーナ:「勇太君、魔道師に料理を作らせてはダメだよ」
 勇太:「え?どうしてですか?」
 イリーナ:「えーと……昔からそう決まってるんだよ」
 マリア:「初めて聞きましたよ、私?」
 勇太:「それに、ポーリン組を卒業したキャサリンさんは魔法料理レストランのオーナーシェフじゃないですか」

 表向きは創作料理ということになっており、『洋風の薬膳』とか『薬膳洋食』といった口コミで通っている。

 イリーナ:「いや、ま、そうなんだけどね。ほら、うちはあくまでオーソドックスな魔法を究める方針だからさ。マリアは最近、サイキック的な魔法を身につけつつあるみたいだから、その力を伸ばすことに専念しなさい」
 勇太:「あ、そういえば何だか最近、エスパーみたいなことができるようになったらしいですね。テレポートは前々からでしたが、テレキネシスとかテレパシーとか」
 マリア:「それと料理は別だと思います。勇太のリクエストを前向きに検討したいと思います」
 イリーナ:「あたしゃ知らないよ」
 勇太:「え、先生?」
 イリーナ:「さーて、お節料理頂こうかね。稲生ファミリーでは、お雑煮にお餅は入れない方針なんだって?」
 勇太:「あ、はい。親戚の中に、その餅で喉を詰まらせて臨終を迎えた者がいまして、それ以来、稲生家ではお雑煮に餅は入れないことが家訓になりまして……」

 ※作者の実家における実話です。

 イリーナ:「なるほど」
 勇太:「僕がバリバリの顕正会員の時でした。顕正会本部会館の元旦勤行に行く気満々だったんですが、行く直前に仙台の大叔父さんがそれで亡くなったとの電話がありました」
 イリーナ:「なるほど。それで急きょ、仙台支部……だっけ?そっちの方で勤行をしたわけか」
 勇太:「仙台会館ですね。でも、違います」
 イリーナ:「違う?」
 勇太:「『これも魔のしわざだ!』ということで、僕は威吹を連れて無理やり本部会館に行ったんですよ」
 稲生宗一郎:「あの時は本気の親子ゲンカでしたよ。勘当させる一歩手前で」
 勇太:「これで僕も顕正会で体験発表できると思ったものです。『両親からの大怨嫉で勘当されてこそ一人前の顕正会員』みたいな所がありましたからね」
 イリーナ:「あちゃー。で、今のお寺はどうだい?」
 勇太:「親孝行も仏法のうちですから、それはタブーですよ。少なくとも勘当されるような信仰姿勢は、却って罪障を積むだけだと御住職様に言われました」
 イリーナ:「うん、そうだねぇ」
 宗一郎:「先生、それよりお節料理を」
 イリーナ:「おや、そうですわね。不肖の弟子の人形が作ったものですけど、味は保証しますわ。どうぞ召し上がれ」

 稲生家の面々、お節料理やお雑煮に箸を付ける。

 勇太:「美味い!」
 宗一郎:「素晴らしい味付けですな!」
 佳子:「まるで料亭か旅館で出されたみたいですね」
 イリーナ:「お気に召して頂けて良かったですわ」
 宗一郎:「そう言えば昔は、年末年始を温泉旅館に泊まって過ごしたことがあったな」
 佳子:「あなたの会社の保養所?」
 宗一郎:「その手をまた使ってみるか。もちろん、先生方も御一緒に」
 イリーナ:「楽しみですわね」

 勇太はピッとテレビのスイッチを入れた。

〔「……東京都豊島区××の寺院で、車が境内に突入するという事件がありました。事件があったのは東京都豊島区××にあります日蓮正宗正証寺で……」〕

 勇太:「ブッ!」
 宗一郎:「勇太のお寺か!?」

〔「……この事件で車に跳ねられるなどした参拝客15名が軽いケガを負いました。尚、この事件の不思議なところは、突入した車が突然謎の爆発によって吹き飛ばされ、境内の外に落ちたということです。参拝客等は軽いケガで済みましたが、この謎の爆発により、突入した犯人達が全員重傷、うち1人は頭を強く打つなどして意識不明の重体です」〕

 勇太:「謎の爆発?」

〔「……尚、車に乗っていた犯人達は全員、宗教法人顕正会の信者達と見られますが、警察の事情聴取に対し、黙秘をしているもようです。警察では全員の傷の回復を待って、詳しい取り調べを行う方針です」〕

 勇太:「顕正会員か!」
 宗一郎:「落ち着きなさい。本人達は黙秘してるんだよ」
 勇太:「で、でも……」
 イリーナ:「それより勇太君、今日そのお寺に行く予定だったんでしょ?あんなことがあって、初詣は行えるのかしら?」
 勇太:「そ、そうだ!すぐに確認して来ます!」

 勇太は席を立つと、急いでスマホを手にダイニングの外に出た。

 イリーナ:「あー、車を吹き飛ばしたのはエレーナみたいだねぇ……」

 イリーナは水晶球を取り出して占っていた。

 マリア:「あいつですか」
 イリーナ:「鈴木君がコミックマーケットの手伝いの報酬を踏み倒しかかったんで、取り立てに行ってたみたいだね」
 マリア:「魔道師と契約して報酬を踏み倒そうとは、フザけた野郎だ!」
 イリーナ:「ま、そのおかげでお寺の人達は助かったわけだし、敵対団体関係者にとっては災難だったわけだね」
 マリア:「全く」

 一応、元旦勤行午前の部は警察の捜査の関係で中止。
 午後の部からは何とか開催できるとのことであった。
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“魔女エレーナの日常” 「このまま行くと、いずれ暴走会員がテロを起こしに来るかもしれないという想定図」

2019-01-07 10:33:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月1日00:00.天候:晴 東京都豊島区某所 日蓮正宗正証寺]

 藤谷:「はーい!元朝勤行に参加の方はこちらー!」

 ワイワイガヤガヤ、ワイワイガヤガヤ……。

 藤谷:「えー……このタイミングで御受誡並びに御勧誡を受ける方はこちら」

 シーン……。

 藤谷:「ま、これが現状だ……」

 溜め息をつく藤谷。

 藤谷:「今年こそは『宗内一の誓願未達成支部』『いつ支部認証外されるか分からない不良寺院』『法華講傍観勢代表』のレッテルを剥がさなければ!」

 寺院参詣者はそれなりに多い為、自行はできている信徒が多いと思われるが……。
 化他は懈怠しているのであろう。
 何しろ班長職を拝命している藤谷ですら、街頭折伏先は場外馬券場で馬券を買いながらの折伏だ。
 右手に競馬新聞、左手に大白法という正に顕正会ガチ勢から『堕落した法華講員!』と言われたら返す言葉が無いほどだ。

 鈴木:「班長、お疲れさまですー」
 藤谷:「おおっ、鈴木君!キミは来てくれたか!」
 鈴木:「大晦日は電車も終夜運転しますからね。一瞬、車で行こうかとも思いましたけど」
 藤谷:「いいんじゃないの。駐車場なら空いてる」
 鈴木:「稲生先輩は来てますか?ていうか、マリアさんは!?」
 藤谷:「残念だ。稲生君達は基本的に元朝勤行には来ない。明るくなってからの元旦勤行には来るけどな」
 鈴木:「え?え?え?元朝勤行と元旦勤行って違うんですか?」
 藤谷:「そうか。顕正会じゃ、『元旦勤行』だけか」
 鈴木:「昔は特盛やエリと一緒に、こんな時間から本部会館の入口に並んだものです。懐かしいなぁ」
 藤谷:「元旦のこの日だけは、法華講員も自分が参加する行事で忙しいから、誰も顕正会員を折伏しには行かないだろう。今日だけは顕正会員も安泰だな」

 あとは御講日とか……。

 鈴木:「そうかぁ……。俺がこうして元朝勤行に来ているように、特盛やエリも大石寺でこういうことをしているわけか」
 藤谷:「その2人は塔中坊の信徒さん達だな?」
 鈴木:「ええ。俺と違って、あの2人はどこかの宿坊の人に折伏されて入ったんで、向こうの所属です」
 藤谷:「宿坊の信徒さん達は、また俺達末寺の信徒とは違う動きをする」
 鈴木:「そうなんですか」
 藤谷:「大石寺で毎日2時半に行われている丑寅勤行。これが本日における元朝勤行だ。この時点で違うだろ?」
 鈴木:「そうですね」
 藤谷:「だからまだ宿坊で寝てるんじゃないか?」
 鈴木:「宿坊で子作り……ゴクッ!」
 藤谷:「いや、寝る場所は既婚者であっても男女別に分けられるからな?それよりほれ、寒い中、駅から歩いて来たんだろ?甘酒でも飲めや」
 鈴木:「マジっすか!?……去年みたく、アルコール入りではないでしょうね?」
 藤谷:「大丈夫だ。そこは任務者の俺がまず毒味をしてみた。そんなものは入ってなかったよ」
 鈴木:「それなら、お言葉に甘えまして……」
 エレーナ:「……不味い!もう一杯!」
 所化僧:「青汁じゃないんですから……」
 鈴木:「エレーナ!?何やってんの!?」
 エレーナ:「あぁ?アンタがまたアタシにコミケ手伝いの報酬払い忘れてるから、取り立てに来てやったんだよ」
 鈴木:「あ……ヤベ。忘れてた」
 藤谷:「まさか、御供養も忘れて来たんじゃねーだろうな?」
 鈴木:「ちょっと銀行行ってきます」
 藤谷:「開いてねーよ!」
 鈴木:「それじゃカードで……」
 エレーナ:「いいから現金で払えよ、現金で。あ!?」
 鈴木:「す、すいません。顕正会じゃ御供養いらなかったもんで……」
 藤谷:「いや、そりゃそうだけどよ!」
 エレーナ:「こりゃ1度、痛い目見させなきゃ分かんないみたいだねー」
 藤谷:「やはり元顕は1度罰が当たらないと分からないわけか……」

 エレーナは魔法の杖、藤谷はバールのようなものを構えた。
 エレーナはともかく、藤谷のバールのようなもについては、何故かあったのだ。
 気にしないでくれ。

 鈴木:「ひー!正月早々罪障消滅できて、功徳〜〜〜〜〜!!」
 所化僧:「あの、甘酒のお代わり……」
 エレーナ:「あざーす!」
 藤谷:「こらこら、信徒用だぞ」
 所化僧:「どうせ例年余りますから」
 藤谷:「余る?……おかしいな。俺の計算が何故か合わない」
 鈴木:「顕正会もそうですが、別に信徒全員が必ず今日参詣するとは限らないでしょう?」

 新入信者に突っ込まれる古参信徒の藤谷。

 鈴木:「甘酒はどこのお寺でも配ってるんですか?」
 藤谷:「いや、大石寺と一部の末寺くらいだろう。うち程度の規模のお寺で、甘酒を振る舞うのはうちくらいだろう」
 鈴木:「そりゃまたどうして?」
 藤谷:「そりゃあ、俺が飲みたいからこんな寒い中、参詣してくださる信徒の皆さんにという御住職様以下御所化さん達の温かい気持ちだよ」
 鈴木:「顕正会じゃ絶対やらないし、やっても一杯100円くらい取りそうです」
 藤谷:「だろ?」
 エレーナ:「……!!」

 その時、エレーナが何かに反応した。

 鈴木:「どうしたの、エレーナ?」
 エレーナ:「あそこの……通りの……車が……こっちに向かって来る!!」
 鈴木:「な、何だってー!?」

 正証寺の三門は大通りから一歩入った路地の所にある。
 1車線ほどの道で、制限速度30キロという標識と駐禁の標識が掲げられている。
 そこを1台の車が入ってきたと思うと……三門の方へハンドルを切った!

 藤谷:「うわあっ!皆さん、逃げてください!!」

 無理やり階段を登って来たかと思うと、境内に侵入して来る。

 鈴木:「え、エレーナ!何とかしてくれ!!」
 エレーナ:「アタシにはそんな義理無いし!アタシはアンタから報酬取り立てに来ただけだから!」
 鈴木:「何とかしてくれたら、報酬3割増しにする!!」
 エレーナ:「乗った!」

 エレーナは魔法の杖を地面に突き立てた。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!……ウィ・オ・ラ!!」

 ドーン!と車の下から爆発が起こり、車は吹き飛ばされ、そのまま三門の上を飛び越して公道の上に真っ逆さまに落ちた。
 不思議なことに爆発が起きた場所は、穴すら開いていない。

 藤谷:「今だ!捕まえろ!」
 田部井信徒:「警察には通報しました!」
 藤谷:「よっし!」

 車に駆け寄る藤谷達。

 顕正会員:「くそっ……!浅井先生の御為に……!!」

 逆さまになった車の中から這い出そうとしていたのは、頭から血を流した顕正会員。
 他にも数人乗っているようだが、意識は無いようだ。
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