[12月29日18:34.天候:晴 東京都新宿区新宿三丁目 JR新宿駅]
稲生達を乗せた特急“あずさ”26号は松本駅で前に2両を増結し、11両編成で新宿へ向かった。
東京へ向かう度に雪は無くなり、オレンジや黄色の電車と並走する頃にはカラッとした冬晴れの景色が続いた。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿、新宿です。……〕
自動化された車内放送が流れる頃、稲生はグリーン車に乗っているイリーナを起こしに行ったが……。
イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ」
とのこと。
マリアの心配は杞憂に終わったわけだ。
稲生:「マリアさん、先生は起きてらっしゃいましたよ?」
マリア:「そのようだな。ちょうど師匠の話し相手になってくれた人がいたんだろう」
稲生:「話し相手?」
マリア:「日本では『仕事納め』とやらなのに、日本人は休まないなー」
稲生:「いや、うちの父さんは今日から休みですよ?」
ホワイトカラーはそうかもしれないが、作者を含むブルーカラーは【お察しください】。
イリーナ:「ぬーん」
マリア:「エレーナのアホみたいな登場の仕方やめてください」
イリーナ:「まあまあ。魔道師も基本、不規則勤務なのさね」
稲生:「え?でもこうして休みなのは……?」
イリーナ:「勇太君も長年魔道師をやれば分かると思うけど、いい加減4ケタも生きると、世間様の流れに疎くなるのさ。それを取り戻そうとするなら、勇太君みたいなホヤホヤの新弟子を入れて、その生活スタイルに沿ってみるというのも1つの手なわけだね」
稲生:「そういうもんですか」
電車は速度を落とし、新宿駅構内の複雑なポイントを通過して新宿駅9番線ホームに入線した。
このホームは中央本線特急列車が専用で使っているホームである。
その為か喫煙所もあるし、駅弁売り場もある。
〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
電車を降りると寒風が吹いて来た。
それでも……。
稲生:「長野と比べれば暖かいですね」
マリア:「雪が無いからかな?」
イリーナ:「じゃあ、雪の無いロシアに行ってみる?」
稲生:「雪が無い?」
イリーナ:「ロシア全体が雪国ってわけじゃないからね。日本人は勘違いしてるけど」
クソ寒いだけで雪の無い地域もあるそうだ。
稲生:「取りあえず、次は埼京線に乗り換えです」
イリーナ:「了解」
帰省ラッシュで賑わう新宿駅。
途中で……。
稲生:「お、成田エクスプレスだ」
イリーナ:「あれに同士が乗ってるね」
稲生:「分かるんですか?」
イリーナ:「おおかたアナスタシア組。日本でのエンジョイに飽きて、ロシアにでも行くつもりかねー」
アナスタシアはロシアのモスクワ出身。
イリーナもまたロシアの大都市近郊出身ではあるが、モスクワとはかなり離れているらしい。
イリーナ:「あんまり魔道師が日本に固まってちゃ、ちょっと困ることが起こるんだけど」
稲生:「困ることですか?」
イリーナ:「出入国の隙を突いて、魔の者が侵入して来たりしなか心配でね」
魔の者の正体は未だに分からない。
しかしそれに打ち勝ったエレーナでさえ、戦いの傷痕が体に刻み込まれたままである。
しかも、日本には日本海に阻まれて侵入できないという不思議な話がイリーナからされている。
稲生:「そんなことが……」
イリーナ:「ナスっちはそんなヘマしないとは思うけどね」
[12月29日18:42.天候:晴 JR新宿駅→埼京線1889F電車10号車内]
埼京線ホームに移動すると、既に当駅始発の電車が入線していた。
平日ならもう満席上等だが、今日から年末休みに入っているということもあって空いていた。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、18時42分発、快速、川越行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
停車していたのは東京臨海高速鉄道の車両。
古巣のりんかい線には戻らず、埼京線内折り返しで再び埼玉へ向かう運用だろう。
これの逆現象がりんかい線でも行われている(JRの車両が埼京線には戻らず、りんかい線内を行ったり来たりする)ので、お互い様か。
JRの車両がモスグリーンなら、こちらはブルー。
〔「お待たせ致しました。18時42分発、埼京線快速、川越行き、まもなく発車致します」〕
JRの車両よりは硬めの座席に腰掛けると、すぐに発車の時間になった。
ホームに発車メロディが響き渡る。
〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
何度か再開閉を繰り返しながら、やっとドアが閉まる。
明らかにこの最後尾よりも混んでいる前の車両で、駆け込み乗車や荷物挟まりがあったと思われる。
そしてようやく発車した。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は埼京線快速、川越行きです。停車駅は池袋、板橋、十条、赤羽、戸田公園、武蔵浦和、与野本町、大宮と大宮からの川越線内は各駅に停車致します。……」〕
りんかい線の車両では自動放送が導入されていないので、車掌が肉声で全て放送する。
ほとんど自動放送が導入されている中では珍しい。
稲生:「魔の者って結局何なんですか?」
イリーナ:「一言で説明するのは難しいね。でも見方を変えれば、勇太君が1番近い所にいるかな」
稲生:「僕がですか!?」
イリーナ:「そう」
マリア:「私の次に狙っているのは勇太ですか?」
イリーナ:「それは分からないよ。ただ、勇太君も勇太君でそれと戦っているということ」
稲生:「北海道のあれは違うんですよね?」
イリーナ:「うん、違うね」
稲生:「え、何だろう?」
イリーナ:「謎が解けたら、すぐにでもマスターになれるよ」
稲生:「魔の者。魔。魔と言えば障魔。第六天魔王……」
イリーナ:「ま、勇太君はまだ若いんだから、ゆっくり答えを探すことだね」
マリア:「私の場合は、契約すら持ち掛けてこない悪魔でしたが……」
イリーナ:「悪魔の全員が契約を持ちかけて来るとは限らないからね。中には魔道師が嫌いで殺しに来るヤツもいるんだから」
差し当たり、キリスト教系やゴエティア系の悪魔は魔道師と契約したい者ばかりであるようだ。
稲生達を乗せた特急“あずさ”26号は松本駅で前に2両を増結し、11両編成で新宿へ向かった。
東京へ向かう度に雪は無くなり、オレンジや黄色の電車と並走する頃にはカラッとした冬晴れの景色が続いた。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、新宿、新宿です。……〕
自動化された車内放送が流れる頃、稲生はグリーン車に乗っているイリーナを起こしに行ったが……。
イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ」
とのこと。
マリアの心配は杞憂に終わったわけだ。
稲生:「マリアさん、先生は起きてらっしゃいましたよ?」
マリア:「そのようだな。ちょうど師匠の話し相手になってくれた人がいたんだろう」
稲生:「話し相手?」
マリア:「日本では『仕事納め』とやらなのに、日本人は休まないなー」
稲生:「いや、うちの父さんは今日から休みですよ?」
ホワイトカラーはそうかもしれないが、作者を含むブルーカラーは【お察しください】。
イリーナ:「ぬーん」
マリア:「エレーナのアホみたいな登場の仕方やめてください」
イリーナ:「まあまあ。魔道師も基本、不規則勤務なのさね」
稲生:「え?でもこうして休みなのは……?」
イリーナ:「勇太君も長年魔道師をやれば分かると思うけど、いい加減4ケタも生きると、世間様の流れに疎くなるのさ。それを取り戻そうとするなら、勇太君みたいなホヤホヤの新弟子を入れて、その生活スタイルに沿ってみるというのも1つの手なわけだね」
稲生:「そういうもんですか」
電車は速度を落とし、新宿駅構内の複雑なポイントを通過して新宿駅9番線ホームに入線した。
このホームは中央本線特急列車が専用で使っているホームである。
その為か喫煙所もあるし、駅弁売り場もある。
〔しんじゅく〜、新宿〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕
電車を降りると寒風が吹いて来た。
それでも……。
稲生:「長野と比べれば暖かいですね」
マリア:「雪が無いからかな?」
イリーナ:「じゃあ、雪の無いロシアに行ってみる?」
稲生:「雪が無い?」
イリーナ:「ロシア全体が雪国ってわけじゃないからね。日本人は勘違いしてるけど」
クソ寒いだけで雪の無い地域もあるそうだ。
稲生:「取りあえず、次は埼京線に乗り換えです」
イリーナ:「了解」
帰省ラッシュで賑わう新宿駅。
途中で……。
稲生:「お、成田エクスプレスだ」
イリーナ:「あれに同士が乗ってるね」
稲生:「分かるんですか?」
イリーナ:「おおかたアナスタシア組。日本でのエンジョイに飽きて、ロシアにでも行くつもりかねー」
アナスタシアはロシアのモスクワ出身。
イリーナもまたロシアの大都市近郊出身ではあるが、モスクワとはかなり離れているらしい。
イリーナ:「あんまり魔道師が日本に固まってちゃ、ちょっと困ることが起こるんだけど」
稲生:「困ることですか?」
イリーナ:「出入国の隙を突いて、魔の者が侵入して来たりしなか心配でね」
魔の者の正体は未だに分からない。
しかしそれに打ち勝ったエレーナでさえ、戦いの傷痕が体に刻み込まれたままである。
しかも、日本には日本海に阻まれて侵入できないという不思議な話がイリーナからされている。
稲生:「そんなことが……」
イリーナ:「ナスっちはそんなヘマしないとは思うけどね」
[12月29日18:42.天候:晴 JR新宿駅→埼京線1889F電車10号車内]
埼京線ホームに移動すると、既に当駅始発の電車が入線していた。
平日ならもう満席上等だが、今日から年末休みに入っているということもあって空いていた。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、18時42分発、快速、川越行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕
停車していたのは東京臨海高速鉄道の車両。
古巣のりんかい線には戻らず、埼京線内折り返しで再び埼玉へ向かう運用だろう。
これの逆現象がりんかい線でも行われている(JRの車両が埼京線には戻らず、りんかい線内を行ったり来たりする)ので、お互い様か。
JRの車両がモスグリーンなら、こちらはブルー。
〔「お待たせ致しました。18時42分発、埼京線快速、川越行き、まもなく発車致します」〕
JRの車両よりは硬めの座席に腰掛けると、すぐに発車の時間になった。
ホームに発車メロディが響き渡る。
〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕
何度か再開閉を繰り返しながら、やっとドアが閉まる。
明らかにこの最後尾よりも混んでいる前の車両で、駆け込み乗車や荷物挟まりがあったと思われる。
そしてようやく発車した。
〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は埼京線快速、川越行きです。停車駅は池袋、板橋、十条、赤羽、戸田公園、武蔵浦和、与野本町、大宮と大宮からの川越線内は各駅に停車致します。……」〕
りんかい線の車両では自動放送が導入されていないので、車掌が肉声で全て放送する。
ほとんど自動放送が導入されている中では珍しい。
稲生:「魔の者って結局何なんですか?」
イリーナ:「一言で説明するのは難しいね。でも見方を変えれば、勇太君が1番近い所にいるかな」
稲生:「僕がですか!?」
イリーナ:「そう」
マリア:「私の次に狙っているのは勇太ですか?」
イリーナ:「それは分からないよ。ただ、勇太君も勇太君でそれと戦っているということ」
稲生:「北海道のあれは違うんですよね?」
イリーナ:「うん、違うね」
稲生:「え、何だろう?」
イリーナ:「謎が解けたら、すぐにでもマスターになれるよ」
稲生:「魔の者。魔。魔と言えば障魔。第六天魔王……」
イリーナ:「ま、勇太君はまだ若いんだから、ゆっくり答えを探すことだね」
マリア:「私の場合は、契約すら持ち掛けてこない悪魔でしたが……」
イリーナ:「悪魔の全員が契約を持ちかけて来るとは限らないからね。中には魔道師が嫌いで殺しに来るヤツもいるんだから」
差し当たり、キリスト教系やゴエティア系の悪魔は魔道師と契約したい者ばかりであるようだ。