日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

須磨離宮公園の怪

2010-11-26 13:06:59 | 旅行・ぶらぶら歩き
小春日和の昨日、身近なところで紅葉を楽しもうと神戸市立須磨離宮公園に出かけた。山陽電鉄須磨寺駅で下車、お昼にはまだ間があったので須磨寺を訪れ、緑の中に点在する紅葉を眺める。後戻りをして須磨寺門前商店街で昭和初期に店を始めたという「志らはま鮨」に立ち寄り、おすすめの「すまの浦」を注文する。タイムスリップをしたような気分にさせられるこのお店は私のお気に入りである。店に入ったのが12時前だったので先客は一組だけであったが、出るときには外に順番待ちの客がいた。

須磨寺横の坂道を登り、離宮公園の正門から園内に入り植物園に向かう。入園者はほどほどなのでのんびりとした気分になり、マイペースで随所で紅葉を楽しむ。鑑賞温室では洋らん展をやっていた。わが家にあるのは一鉢のカトレアだけであるが、普段お目にかからない風変わりな花が多いのに驚いた。温室を出て和室のある和庭園に向かう。この周辺には紅葉が多くて階調のある展開が見事である。腰を下ろしているといつのまにかウツラウツラし始めた。

異変を感じたのはその時である。異様に高く結い上げた髷頭が目に入ってきた。派手な服にブーツ姿の女の子で下の方から上ってくる。連れの男の子は和服で刀こそ腰に帯びていないがドラマに出てくる龍馬のような姿、そして二人とも信玄袋のようなものを担いでいる。面白い取りあわせに二人を目で追っていると和室に近づいた。和室と言っても日本家屋で、和庭園からは鉤形の広縁の外側はガラス戸に、内側は障子に囲まれた和室になっているように見えるが中を見通せない。ガラス戸の内側には「一般の人は立ち入れません」と掲示が出されている。ところが先ず男の子がガラス戸を手で開けた。鍵がかかっていなかったようである。信玄袋を広縁に置き履き物を脱いで広縁に上がり、行ったり来たりしている。どこから部屋に入り込むのかを探していたのだろうか、やがて障子を開けて中に入り込んだ。続いて女の子も縁側に上がり信玄袋に履き物までも部屋の中に持ち込み、ガラス戸を閉め障子も閉め、二人の姿は消えてしまった。まるで白昼夢の一齣である。

案内書によるとこの和室はお茶会や食事会などに貸室利用ができるとある。しかし催し事があるような気配はないし受付が出ているわけでもない。あの二人、中で何をしているのだろうと次第に気になりだした。隠れ場所の穴場として若者の間には知れ渡っているのだろうか。そう言えば入り込むときも周りの様子を窺うこともなく、後ろめたいことをしているようなおどおどすることもなかった。勝手知った振る舞いのようである。若い男女が人目に隠れて何を、と変な妄想も湧いてくる。いや、器物破損ということもありうるし、何か値打ちものを持ちだそうとしているのかも知れない。となれば神戸市民の一人として見逃すわけにはいかない。「御用だ」と踏み込んでやろうかとさえ思ったが、君子危うきに近寄らずとも言う。そこでiPhoneで公園事務所を呼び出した。

自分が和室・和庭園に居ることを伝え、ところで今日は和室が何かに利用されることになっているのかと尋ねたところ、使用届が出ているとの返事が戻ってきた。しかし念のために、変な格好をした男女が縁側から入り込むのを見かけたものだからと言うと、年配者の声にマッチしない言葉が飛び出した。なんとコスプレの集まりで、お互いに衣裳を取り替えては写真を撮りあうそういう催しだという。これで納得がいったが考えたら昨日は木曜日である。まともな若者なら働いているか勉強していなければならないはずなのに、こればかりは納得がいかなかった。

思いもかけずこういうことで時間を取ったものだから、レストラン花離宮2階で開かれている「離宮公園の魅力展~王侯貴族のバラ編~」はスキップして帰途についた。


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