
今のところ私が観ているテレビドラマは時代物の韓国ドラマ「朱蒙(チュモン)」とNHKの大河ドラマ「天地人」の二作だけである。どちらが面白いかといえば断然「朱蒙」の方で、毎回手に汗を握るシーンが次から次へと出てくる。以前に観ていた「宮廷女官チャングムの誓」で韓国ドラマに開眼したのであるが、見始めの頃は、盗み聞きしている人物が見え隠れしているところで秘密のはかりごとをしているような不自然さが目についたり、また人を陥れるのにそこまでやるのかとそのえげつなさに嫌悪感を覚えたりして、すんなりとドラマの中に入っていけなかった。それが気がついてみると、いつの間にか違和感が消えてしまって、そういう些末なことよりもダイナミックなストーリーの展開にすっかり魅せられてしまったのである。それに比べると「天地人」は意外性が乏しく、その分ちんまりしていて、役者の存在感が軽いものだから、もうひとつ乗れない。
とは言っても現代物の韓国ドラマはまだ観たことがないし、また観る気もなかった。だから前の韓国・朝鮮語クラスの仲間の女性から、「これ、面白いですよ」と、辞退しているのに「白夜」を無理矢理押しつけられた時には、「時間がなくて観られなかった」と断って返却するつもりでいた。実際、「白夜」は20話の長い物語で、DVDでも10枚組のセットになる。だから20時間近くをそれに費やす覚悟が定まらなければ、おいそれと気軽に手をだせない。「いつまででもいいですよ」と言われていたものの、もう3ヶ月もほったらかしであった。いくら何でも長くなるのでもう返却しようと思ったが、てんで目を通さないままでは申し訳ないような気がして、土曜日の午後、第一話をとりあえず観ることにした。ところが大変、あっという間に惹きつけられてしまい、日曜日にかけてDVD5枚を一挙に観てしまう羽目となったのである。
1968年1月、というと私は米国の西海岸にあるサンタ・バーバラに家族と暮らしていたときであるが、北朝鮮人民軍が韓国に侵入し、地元の警察隊と激しい銃撃戦を交わし、人民軍の隊長も警察署署長も戦死する。それぞれに残された男の子が成長してこの物語の主人公になるのである。韓国側のミン・ギョンビンは空軍パイロットとなるが、副操縦士を務めたテスト飛行の戦闘機が墜落したことで機体の安全性に疑問を抱き、操縦士のミスを事故原因としたい軍上層部と対立して軍を退役、情報員としての途を歩むようになる。北朝鮮側のクォン・テッヒョンは幼なじみで北朝鮮核物理学者を父に持つアナスターシャ・チャンの脱北を手助けしたことが切っ掛けで、テロリストとして歩まざるを得なくなる。これに行動的かつ目を見張る美貌の女性のみならず、むくつけき男性部下の股間へのタッチを挨拶代わりにする女性上司まで登場する。それどころか北朝鮮の指導者様、KGB、チェチェン・マフィアにアゼルバイジャン・マフィアや、ミサイルにプルトニウムまで横流しするソ連軍司令官に偽ドル作りありで、現代活劇が派手に繰り広げられる。冒険小説大好きな私にぴったりのストーリーなのである。
第10話まで見終わったが、もっぱら舞台がソ連(現在はロシア)になっているのがいい。私がモスクワにサンクトペテルブルグを初めて訪れたのは1995年であるが、この物語が終わるのがその前年の1994年という設定、その意味でもすごく親近感が湧いてくる。闇市でモルヒネの箱入りが取引される場面があったが、それに近い情景を実際に見聞きしたことなどを思い出す。ソ連軍とか大勢のロシア人が出てくるがこれらは実際にロシアでロケをしたのだろうか。とにかく大した力の入れようで、制作者のパワーと情熱が直に伝わってくる思いであった。まだ10話残っているがどういう展開になるのかが楽しみで、この一週間がそれで潰れそうである。それと、一昨日のブログで紹介した「鋼鉄の騎士」を並行して読んでいると、両方の物語がごっちゃになってくるのがこれまた不思議である。

