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日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

映画「隠された記憶」と「元・厚生省次官殺害事件」

2008-12-02 12:28:16 | 社会・政治
夕べ、なんだか変わった映画をテレビで観た。
隠された記憶 - goo 映画ここの作品解説によると《『ピアニスト』のミヒャエル・ハネケ監督が、カンヌ国際映画祭の監督賞・国際批評家賞・人道賞の三部門を受賞したサスペンス・スリラー。現代社会に渦巻く個人的・政治的抑圧に対する報復、当事者の無関心。そんな今や世界中に横たわる、しかし看過できない現実を描いていく》のである。

『変わった映画』と感じたのにはいくつかの理由があるが、それらに共通しているのは、たとえば映画を観ていて、この主人公一家を不安に陥れるビデオテープを誰が撮影して送りつけたのか、また息子が母親の家族を裏切るような?行動にいつから、またどのようにして気づいたのか、などの疑問を抱かせたままで結局は種明かしせずに終わってしまうことなのである。明智小五郎、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロの出番がまったくない。そして解答のないままそれでも観た人には「多分そうなんだ」とか「ひょっとしてそうかも」とそれなりの合点を抱かせるのである。考えてみたら現実生活そのものの投影なのである。マスメディアの報じる世の中の出来事のほとんどは、真相が詳らかなる前に次の新たな出来事で覆い隠されてしまうことを思えばよい。

ビデオテープ事件が主人公の幼年時代の出来事に関わりのあることが次第に明らかにされていく。そしてその出来事の3、40年後であろうか、当時交渉のあったもののその後没交渉であった当事者の一人と再会し、思いがけない形でその命が絶たれるという一つの結末を迎える。しかしなぜ命が絶たれなければならなかったのか、これも合理的な説明は映画には用意されていないので、観客はそこで突き放されてしまう。

突き放された私はきわめて素直に「元・厚生省次官殺害事件」を連想した。この事件では容疑者は小学生だった34年前に保健所で処分された愛犬の仇討ちだと最初に供述したとのことであるが、その動機と「元・厚生省次官殺害」とのつながりに世間は一様に納得しかねているようである。もしこの容疑者が映画「隠された記憶」を観ていたとしたら、この犯罪の不条理の一端は解きほどかれるのでは、と私なりに反応したのである。「隠された記憶」は2006年4月29日に公開されている。