日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

一弦琴「泊仙操」 調弦法を変えて唄う

2006-11-02 13:13:31 | 一弦琴
一弦琴の定期演奏会は毎年10月最後の日曜日にある。今年こそ最後の舞台と意識しすぎたのか、私の演奏曲目「牡丹」の出だしを失敗した。プロでなくてよかった、というのが私の言い訳である。

それはともかく、この日は同門の方と年に一度の顔を合わせる日でもある。全員女性の中なので緊張はあるが、次第にうち解けていろいろとお話しできるのが楽しい。そこで現在の調弦で低音の部分が唄いにくくはないか、と言うようなことをお聞きした。すると戻ってきた返事は「そんなことはありません」であった。「やっぱり」と思った。現在の調弦は女性向きで男性向きではないのである。女には分からぬ男の悩みを私一人だけが苦しんでいたのである。どこが異なるのか。

現在の調弦は開放弦を音階でDの高さに合わす。調子笛ではその振動数が294ヘルツで、高音記号付き五線紙で「レ」の音に相当する。

この調子笛に合わせて女性が声を出すと振動数は290ヘルツ前後であるが、私が同じように声を出すとこの半分、145ヘルツ前後になる。ところがこれまで私は一弦琴の「六」の徽を押さえて弦を弾くときに、この高さの声を出しているのだ。だから開放弦「0」を弾く時に、私は振動数が73ヘルツの声音を出さなければいけないことになる。

私の声の音域は一応テナーである。声域は振動数で大体110ヘルツから370ヘルツの範囲で、この範囲だと唄っていても気持ちが良いし聴いていただくのにもいいかと思う。ところが「0」で73ヘルツ、「三」でも83ヘルツは私の気持ちよく唄える声域外である。女性にはかかわりのない領域なのである。

男にしか分からぬ痛み、それを癒すには女性を当てには出来ない、とばかりに、遅まきながら私が気持ちよく唄える男性向けの調弦を行った。そして「泊仙操」の「秋」と「冬」の出だしを唄ってみた。女性向けの調弦で1オクターブ高く唄った前回のと較べていただきたい。いかに男性が無理を甘受してきたかが分かるであろう。

一弦琴はかっては男のなすことであった。それが女に取って代わられたときに、調弦法に変化があったのかどうか、私は変化があったはず、と推測するが、歴史的な考察はこれからの課題である。