日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

男の歌う「さくら貝の歌」

2006-08-06 17:19:51 | My Song
土屋花情作詩・八州秀章作曲「さくら貝の歌」を倍賞千恵子の歌で何度も何度も聴いた。このLPが出たのが1971年だからもう35年間、折に触れて彼女の歌を聴いてきた。しかしこの曲が始めてレコードに吹き込まれたのは1940年で、まだ戦争の始まる前である。しかし「時期でない」とのレコード会社の判断でお蔵入りになってしまった。

復活したのは戦後の1949年で小川静江がNHKの朝の「ラジオ歌謡」で歌ったのが切っ掛けとなった。 

八州秀章(本名・鈴木義光)には北海道真狩村の尋常小学校の後輩で、いつか結婚したいとは思っていた横山八重子という女性がいた。その思いを伝えることもなく上京したが、看護婦を志していた八重子は胸を患い18歳で亡くなった。傷心の八州は八重子の俗名と法名から一字ずつ取って筆名とした。

一方、作詞者の土屋花情も三浦半島に仕事でやって来た看護婦と知り合い相思相愛になり、彼女が東京に帰った後も文通を続け、彼女から求愛される。しかし母親の反対もあり、結婚を断念した。その失恋の傷を癒すために土屋は同人誌に詩を発表するようになり、その作品に興味を持った八州が「いっしょに作品を作りたい」と土屋を訪問した。

鎌倉の海岸を散策していた八州は、渚でさくら貝を見付け、一首の歌を詠む。

 わが恋の如くかなしやさくら貝かたひらのみのさみしくありて

これをモチーフにして土屋が詩を作り上げた。

この失恋二人組男性の作った曲を歌う女性歌手は多いが、これは男が歌ってこそ味わいのあるものとばかりにチャレンジしてみた。でも本当の味が出てくるにはまだ失恋をいくつか重ねないといけないのかもしれない。

参考 読売新聞文化部 「愛唱歌ものがたり」(岩波書店)