日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「バルトの楽園」の『バルト』て何だ

2006-08-04 20:12:08 | Weblog
日本の兵隊さんの出てくる映画を見逃すわけにはいかない、とばかりに三宮の映画館に足を向けた。たまたま映画の日だったのでシニアと言わなくても1000円で入場、でもまばらな観客のほとんどはシニアに女性客。ひょっとして女性は健さんのファンなのだろうか。ゆっくりと鑑賞できてよかった。

その松平健さん、毛生えかかつらのテレビCMに映画の役柄の扮装でひげをひねりひねり出ているので、ちょっと興ざめの先入観があったが、映画そのものはなかなかしっかり出来ていたので安堵した。

捕虜収容所の映画は数々あるが、これも代表作の一つになりそうな気がする。クワイ川マーチで有名な「戦場に架ける橋」でも日本軍の管理する捕虜収容所が出てくるが、これは第二次大戦中の話だし、しかも戦勝国側の映画制作者が戦敗国の軍隊を描いているので、心やすく観るわけにはいかない。しかし「バルトの楽園」は第一次大戦時の話であり、しかも牧歌的な物語であるので、変なシーンだ出てくるのではないかと気にすることもなく楽しめた。

第一次大戦の時代、日本はまだ西欧諸国から学術・文化を取り入れつつあった。その先進国ドイツの戦争捕虜が日本にやって来たわけだから、彼らからも吸収するものが多々あったのであろう。この面で捕虜と地元民との交流の挿話の数々が楽しい。

なぜ今頃になってこの映画が作られたのか。想像するに、どうもベートーベンの「第九交響曲」がキーワードのようである。『第九』が2003年7月、『EUの歌』として公式に発表されたことでもあり、日本でも最もポピュラーな交響曲である『第九』が、この捕虜収容所の捕虜達により初演されたそのエピソードの紹介がこの映画の一つの眼目であったのだろう。

こので第九でソリストは全部男性、戦争捕虜だから当然そうなんだろうけれど、そのために楽譜を書き換えて男声四部に仕上げていくのだから大したものである。ところがこのソリスト達が上手すぎるのである。発声が完全に現代風、100年近く前のイベントとしては時代考証が不十分、なんてちょっと『意地悪じいさん』になったりした。

戦争が終わってパン職人だった捕虜が日本に残り神戸でパン屋をやりたいというシーンでは、では彼があの神戸で有名なパン屋を始めたんだ、と思い込んだり、あのドイツの将軍役をした俳優が、「ヒットラー 最後の12日間」のヒットラーで出たことを知ったり、そのようなことも面白かった。

しかし、未だに分からないことがある。「バルトの楽園」の『バルト』ていったい何なんだろう。


追記 『バルト』がドイツ語らしいことがわかった。Bart、すなわち「ひげ」であるらしい。それなら『バールト』と書くべし。『バルト』ではbaldになるではないか、とは負け惜しみの弁である。