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日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

福島第一原発20キロ圏内大気中放射線量の遅すぎた発表ではあるが 追記あり

2011-04-22 09:58:51 | Weblog
朝日朝刊の記事である。

20キロ圏、汚染に濃淡 文科省、128地点の線量公表

 文部科学省は21日、警戒区域となる福島第一原発から20キロ圏内の大気中の放射線量の調査結果を発表した。原発から3キロ付近では、毎時100マイクロシーベルトを超える地点があった。年間の被曝(ひばく)線量に換算すると、100ミリシーベルトを超える可能性がある地域が1割を超えていた一方で、避難区域の目安となる年間被曝線量が20ミリシーベルトに達しない地点も半数近くあった。

 今回の線量調査は、住民の一時帰宅が可能か判断するために、文科省が東京電力などと協力して行った。20キロ圏内の9市町村を対象に、3月30日~4月2日に50地点、4月18日~19日に128地点で計測器を載せた車を走らせて測った。

(中略)

 文科省は最初の調査後、結果を公表していなかった。その理由について「調査地点などデータが足りず、混乱を生じる恐れがあると考えた」とした。

実は福島第1原発:警戒区域に高齢者の残留を認めるべきでは?で米国エネルギー省が4月18日に発表した実測データにもとづく図表を引用した際に、日本側にも実測データがあるはずと探したが、目についたのは文科省の「福島第一原子力発電所の20Km以遠のモニタリング結果」で、20キロ圏内のデータは無かった。今回そのデータが公表されたということなので文科省のホームページを開いてみたが、この小文を書いている今、そのデータは見当たらない。「国民のみなさまへ」と呼びかけておりながら、まずはマスメディアに対してのみ公表したとしか考えられない。この時代にそぐわない姿勢を即刻改めて、基本データはマスメディアと一般国民を問わず同時に公表すべきである。

文科省の下手な言い訳はともかく、もともと20キロ圏内でも毎日データ収集を行い、その結果を国民にただちに公表すべきなのである。しかし現状では朝日の記事に従わざるをえない。いずれにせよこれらのデータにより福島第1原発:警戒区域に高齢者の残留を認めるべきでは?で《最高吸収線量の値が分からない20ミリシーベルトを超える地域以外では、30キロ圏内でも現在の状況が続く限り、放射能にことさら怯えなくてもよさそうである》と述べた最高吸収線量の値が見えてきた。屋外に1日8時間いたと仮定しての年間被曝線量ではあるが、半径3キロあたりに579ミリシーベルトの地点がありこれが最高測定値になっている。10キロ圏内では260ミリシーベルト前後の地点が何カ所も存在する。一方、年間被曝量が20ミリシーベルト以下の地点も存在するが、全般的に10キロ圏以内は日常生活に向いていないと言える。それに加えて、たとえ10~20キロ圏であろうと米国エネルギー省の調査で20ミリシーベルトを超える地域でも、これは第一原発から北西に延びる地帯になるが、日常生活はやはり無理であろう。しかしそれ以外、年間20ミリシーベルトを超えない地域で、もし高齢者が家に残留を希望するのであればそれを認めるべきであると主張したが、それに関連した朝日朝刊の次の記事が目についた。

 放射線医学総合研究所医療被ばく研究プロジェクトリーダーの島田義也さんは「被曝線量が20ミリシーベルト程度だと、がんになるリスクはほとんどない。お年寄りは、被曝によるがんリスクより、避難するストレスの方が健康に与える影響は大きい。線量だけでなく、将来的には社会、経済的、心理的な要因も考慮して、柔軟に対応すべきだ」と話している。

一点を除いてはまったくその通りと同感である。その一点とは、将来的にはではなくて、即刻対応すべきなのである。現場をよく知る地方自治体首長の英断を期待したい。

追記(4月22日)

 福島第一原子力発電所20km圏内の空間放射線量率の測定結果は
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1305283.htm
からアクセス出来た。文科省のホームページから素直にアクセス出来るようにしてほしかった。






福島第1原発:警戒区域に高齢者の残留を認めるべきでは?

2011-04-20 22:23:49 | Weblog

毎日新聞の記事(抜粋)である。

福島第1原発:警戒区域設定表明へ 首相、21日福島入り

 菅直人首相は21日、東日本大震災で被災した福島県を訪れ、同県の佐藤雄平知事と会談する。東京電力福島第1原発から半径20キロ圏内について、立ち入り禁止や退去を命令できる「警戒区域」とする政府方針を直接説明し、地元の協力を求める考えだ。首相は、20キロ圏内の住民が避難している同県郡山、田村両市の避難所も訪問する。

 警戒区域の設定は、福島県が政府に要望していた。枝野幸男官房長官は20日の記者会見で、警戒区域設定について「地元自治体などと検討を進めている」と述べた。

 政府は20キロ圏内の避難住民が、家財などを持ち出すための一時帰宅を認める方向で最終調整中だが、帰宅後に退去を拒む人が出ることを想定し、退去を指示する法的根拠を整えるために警戒区域を設定する方針だ。警戒区域の設定は災害対策基本法に基づいており、退去を拒んだ場合は10万円以下の罰金などが科せられる。枝野氏は会見で、警戒区域設定と一時帰宅について「裏表みたいなところがある」と述べ、一体という認識を示した。
毎日新聞 2011年4月20日 最終更新 20時42分)

一方、次は米国エネルギー省が4月18日に発表した実測データにもとづく図表で、一年間その地域に住み続けたとしてどの程度の放射線量を吸収するかを示したものである(この図表に関してはまた改めて取り上げる)。


線量はレム(rem)で表示されているが、100 rem = 1Svであるので、図表の数値を100で割るとシーベルトになる。年間吸収線量が20ミリシーベルト以上の地域は30キロ圏内ではほぼ4分の1強である。米国内での平均年間吸収線量は6.2ミリシーベルトなので、ほぼその3倍になる。また20ミリシーベルト以上の地域と言ってもこれは24時間中屋外に出ていての値であるから、屋内で多くの時間を過ごすことを考えると、実際の吸収線量はかなり減少するはずである。また米国の原子力発電所で作業する人の年間許容線量は50ミリシーベルトとされている。

このように考えると、最高吸収線量の値が分からない20ミリシーベルトを超える地域以外では、30キロ圏内でも現在の状況が続く限り、放射能にことさら怯えなくてもよさそうである。とは言っても生殖年齢の世代までは杞憂も含めて心配することもあるだろうから、警戒区域と指定された地域に残ることは抵抗があるかも知れない。しかし高齢者は高齢であればあるほど、この程度の放射能に曝された影響を気にすることは無いと言ってもよかろう。したがってもし高齢者が家に残留を希望するのであれば、それを認めるべきであると思う。ライフラインが整っていなければ現実に生活するのは難しいので、最低限は電気と水の供給が欲しいところであるが、知恵を働かせば現実的な対応は可能になるのではないか。高齢者は住み慣れた家で生活を送り、そのことが家族にも安堵感を与えることになるであろう。見方によれば、高齢者が放射能最前線で自分と家族の、そして地域の生活基盤を護る戦士ともなるのである。なんと生き甲斐のあることだろう。そのためにも警戒区域に希望すれば高齢者を残留させる術を積極的に講じるべきであると思う。

東京電力に原子力安全・保安院 ♪あ~~ああ やんなっちゃった

2011-04-18 22:45:49 | Weblog
東京電力が昨日原子炉冷温停止まで6~9カ月との見通しを発表した。要点はasahi.comによると次のようである。

 工程表によると、第1段階(ステップ1)で、確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少に向かわせるのに3カ月程度かかる、とした。第2段階(ステップ2)では、原子炉を100度未満の安定状態に保つ「冷温停止」にし、放射性物質の漏出を大幅に抑えるのに3~6カ月程度かかる、との目標を示した。
(2011年4月17日20時56分)

ところが今日になってこのニュースである。

2号機原子炉建屋、米国製ロボットで調査

 東京電力は18日、福島第一原子力発電所2号機の原子炉建屋に米国製の遠隔操作ロボット「パックボット」を入れ、内部の放射線量などの調査を行ったと発表した。

 同日午後1時40分から約50分間をかけて実施した。

 ロボットは米アイロボット社が提供。東電社員らが映像を確認しながら操作、マジックハンドで建屋入り口の扉を開けて進入した。2号機内部の調査は、燃料棒が完全露出する危機が起きた3月14日以降、約1か月ぶり。東電で放射線量のほか温度や湿度、酸素濃度などの分析を進めている。

 2号機は格納容器の圧力抑制室が損傷しており、東電が公表した事故処理の工程表では、約3か月後をメドに損傷部を密閉する計画。ただ、17日に行った1、3号機原子炉建屋の調査では、それぞれ最高で毎時49ミリ・シーベルト、同57ミリ・シーベルトと、人間の作業が困難になるほどの高い放射線量を測定した。2号機からは高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏れ出しており、線量は1、3号機を大幅に上回る可能性があり、測定結果次第では、工程に影響を及ぼすことも考えられる。
(2011年4月18日21時53分 読売新聞)

なんだかおかしい。原子炉建屋内は放射能が高くて人間が入れないので今回始めて米国製の遠隔操縦ロボットを使って、建屋内部の放射能などを測定して人間が入れる環境かどうかを調べることになったはずである。まだ原子炉建屋内部の状況すら把握されていない状態で、どうして上の記事のように、第1段階で確実に原子炉を冷却し、放射性物質の放出を減少に向かわせるのに3カ月程度かかる、なんてことが言えたのだろう。わけが分からない。

燃料棒損傷率にどのような意味が?(4月9日)で次のような意見を述べた。

それにしては30%の損傷率とされた燃料棒の壊れ方が、単に被覆菅が損傷しただけとは考えにくく、燃料棒そのものの溶融を視野に入れざるを得なくなる。確かに《溶融など燃料の状態までを示すものではない》と言われればそれまでであるが、「被覆の剥がれ」と「溶融」を区別出来ない損傷率の数値だけが一人歩きすることが、かえって「溶融」の危険性を覆い隠すことにもなりかねない。

それが今日になって原子力安全・保安院が次のように発表した。

燃料棒の溶融、保安院が初めて認める 内閣府に報告

 福島第一原発1~3号機の核燃料棒は、溶けて形が崩れている、との見方を経済産業省原子力安全・保安院が初めて示した。18日に開かれた内閣府の原子力安全委員会に報告した。保安院はこれまで、燃料棒が損傷した可能性は認めていたが、「溶融している」との見解を公式には明らかにしていなかった。

 保安院は、核燃料の表面を覆っている金属の被覆管が傷つき内部の放射性物質が放出されることを「炉心損傷」、内部の燃料が溶け出して形が崩れると「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料が下に落ちるのを「メルトダウン」とした。

 そのうえで、検出された放射性物質の成分などから、1~3号機とも「燃料ペレットの溶融」が起きていると推測。さらに、制御棒などと一緒に溶けた燃料が落下、下にたまった水で冷やされて再び固まり、水面に露出している、との見方を示した。ただし、どの程度溶けているかは「実際に燃料を取り出すまでは確定しない」とした。

 安全委の代谷誠治委員は「炉内の状況について保安院から話があったのは今日が初めて。報告の頻度を高めてほしい」と苦言を呈した。(小宮山亮磨)
(asahi.com 2011年4月18日21時32分)

私は以前に原子力安全・保安院をでくの坊と称したが、またもやそれを裏付ける事実が現れた。

  ♪あ~~ああ やんなっちゃった  あ~んあああ おどろいた♪

能福寺 平清盛 兵庫大仏

2011-04-17 16:18:04 | Weblog
昨日は父の33回忌法要を兵庫大仏で知られる能福寺で営んだ。自宅への月参りはいつも副住職であるが、昨日は住職が勤めて下さった。父が亡くなったときはまだ副住職で、その後の月参りでは時々お目にかかったものである。30年の年の流れを感じた。

このお寺とは不思議な縁で結ばれた。明治43年生まれの母が通っていた小学校のクラスにお寺の坊さんの息子がおり、長じては大僧正・刀田山鶴林寺住職となった。幼なじみの母とは下の名前で呼び合う仲で、来神のついでに気軽に母を訪ねてこられることもあり、また母も揮毫を表装して大事に飾ったり、戒名を生前に授かっていたりした。この大僧正が比叡山で一緒に学んだのが能福寺の先代住職できわめて親しい仲であったとのことである。そのような縁で、私たちが朝鮮から引き揚げてきて神戸に移り住むようになってから、家の宗旨である天台宗のお寺ということで能福寺を引き合わせていただいたのである。

法要の後しばし雑談に時を過ごしたが、住職によると来年のNHK大河ドラマが「平清盛」ということで、その主役俳優がNHKとやって来たりしていろいろと取材を受けたとのことであった。創建1200年の記念誌「兵庫津 寶積山 能福寺記」の「能福寺の歴史概略」によると、桓武天皇の勅命により唐に留学した伝教大師最澄上人が帰途兵庫の大輪田の泊に上陸したのである。当時の庶民は大師を歓待し堂宇を建立して仏教の教えを乞うたところ、上人は薬師如来の功徳を説き、自作の像を堂に安置して、国に安泰、庶民の幸福を祈願して能福護国密寺と称したとのことである。延暦24(805)年6月のことである。その後いろんな変遷をたどるが、本朝編年録(→本朝通鑑)によると「仁安3(1168)年11月、平清盛於能福寺剃髪入道ス 養和元(1181)年2月4日西八条ニテ薨去、年64 翌日火葬トシ、圓實法眼全骨ヲ福原ニ持チ来タリ能福寺ノ東北ニ埋ム」とあって、平清盛と能福寺との深い繋がりが浮かび上がる。福原遷都の時は信仰心の厚い平家一族が能福寺に帰依したとのことである。

一方、能福寺は兵庫大仏でも知られる。明治24年5月、兵庫の豪商南條荘兵衛が発願して青銅毘廬舎那佛を建立した。その大きさと青銅製であったことから、奈良、鎌倉とともに日本三大佛の一つに数えられ、その開眼法要は天台座主をはじめ真言、浄土、臨済、真宗、曹洞、日蓮、時宗等、各宗管長によって2週間にわたって執行された。私は朝鮮に渡る前の昭和15(1940)年には神戸で幼稚園に通っていたので、この大仏さんにはお目にかかっていることと思う。しかし昭和19年5月には戦時中で金属回収令により取り壊されて供出されてしまった。現在の大仏さんは二代目で平成3年5月に再建されたものである。開眼法要は天台座主をはじめ奈良東大寺管長、鎌倉大仏貫首の臨席のもと執行されて、参詣者が4日間に6万人を数えた。私もその一人に入っている。母が亡くなってこのお寺で葬儀を営んだときは、棺から出た紐を大仏さんの左手で引っ張っていただいていた。迷わず浄土に行けるようにとの趣旨だったのだろうか。

境内には平相国廟(平清盛廟)・平清盛公墓処、ジョセフ・ヒコの能福寺縁起英文碑、神戸事件・滝善三郎正信碑などがある。また兵庫きっての豪商であった北風正造君顕彰碑というのもある。明治維新の折、姫路藩が官軍の攻撃を受けて城下町が戦場になろうとしたときに彼が仲裁に入り、軍需金15万両と引き替えに紛争を解決させて白鷺城を戦火から救い、その後実業界で大成した人物である。この後裔にあたる娘さんと研究室の後輩が縁があって結ばれ栄光教会で結婚式を挙げたときに、私の幼い長男が花びらをまきながら新郎新婦を先導するなんてことがあった。人の繋がりとはほんとうに不思議なものである。

住職と話をしていて認識を新にしたことは、今時感心なことにこのお寺は拝観料のようなものを一切取っていないのである。それだけに公衆便所の水道代がえらい高くつくのでとの住職の言葉には実感がこもっているように感じた。小銭入れに空き缶でも置いておけばよいのに、とは思ったが口には出さなかった。大河ドラマがはじまって観光客がバスでも連ねてくるようになれば大ごとである。どうなることやら、ちょっと心配になった。

福島原発事故 「レベル7」あれこれ

2011-04-13 14:23:07 | Weblog
私は先月29日東京電力の「ヒューマン・エラー」を外から眺めるとの中で、《福島第一原発事故が世界にまき散らす放射性物質の量が、せめてチェルノブイリ原発事故の規模を上回ることにならないようひたすら念じようではないか。》と述べたが、その願いも空しくチェルノブイリ原発事故が視野に入ってきた。昨4月12日、政府が福島第一原発1~3号機の事故を、国際的な原子力事故の評価尺度(INES)で最悪の「レベル7」と暫定評価したからである。

チェルノブイリでは大気中に放出された放射能量が520万テラベクレルとされているのに対して、福島第一原発では政府発表とは言いながら発表値が統一されずに、原子力安全・保安院の試算では37万テラベクレル、内閣府原子力安全委員会の試算では63万テラベクレルとなっている。これらの値に基づいてであろう、今朝の朝日新聞に次のような見出しがあった。


表面的にはそうなのかも知れないが、上にも記したように福島第一原発事故が世界にまき散らす放射性物質の量を問題にする限り、《今はチェルノブイリの1割》は正しくない。というのはここに記されている放射能量はあくまでも大気中への放出量だからである。それがどのようにして見積もられたのか、例によって例のごとし、The New York Times(NYT)にはもう少し詳しい説明がある。

The Nuclear Safety Commission ordered the use of a computer model called Speedi ― short for System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information ― to calculate the amount of radiation released from the plant, said Mr. Shiroya, the commissioner on the safety agency, who is also the former director of the Research Reactor Institute at Kyoto University.

To use the model, scientists enter radiation measurements from various distances from a nuclear accident. The model produces an estimate of the radioactive material escaping at the source of the accident.

Speaking at a news conference, Mr. Shiroya said those calculations were complex, and it was only recently that researchers had been able to narrow down the amount to within an acceptable margin of error.
(April 12, 2011)

この記事によると、「Speedi」と名付けられた計算機モデルに、事故の発生地点から離れた各所で測定された放射能の値を入力して計算させることで、事故現場の放出源から放出された放射能量が求められるようである。もちろんデータ入力にはこまかい条件があるだろうし、どのような地域分布でデータを集めるか、またデータ数の多寡によって計算結果は振れるであろう。それにしてもなぜ原子力安全委員会と原子力安全・保安院がそれぞれ別々の数値を発表したのだろう。そしてさらに次のような話があって、この発表値が信じてよいものかどうか、問題がややこしくなっている。

Even so, some people involved in the energy industry have been hearing about the results of the Speedi calculations for days. A senior executive said in a telephone interview on April 4 that he had been told that the Speedi model suggested that radioactive materials escaping the Daiichi complex were much higher than Japanese officials had publicly acknowledged, and perhaps as high as half of the releases from Chernobyl.

この情報がどこからどのように流れてきたのかは分からないが、同じ「Speedi」を用いた計算で、チェルノブイリの半分ほどの放射能量が放出されたことになっているのである。これに対してNYTはこう続ける。政府発表に異なる政府機関の異なる試算値を併置することにある種の「いかがわしさ」を感じとっているのだろうか。

Mr. Nishiyama(保安院) and Mr. Shiroya (安全委員会)said separately on Tuesday that that estimate had been wrong. But their two government agencies also released different figures for the level of emissions so far, and there appeared to be a degree of supposition embedded in the numbers.

そして本題に戻るが、政府の発表値はあくまでも大気中への放出量なのである。チェルノブイリでは事故発生後、冷却水を原子炉に供給する機会はほとんどなかったはずで、水はせいぜい消火活動に使われたくらいであろう。ゆえにチェルノブイリでは大気中への放射能放出量をもって総排出量とみなしても良いのでは無かろうか、それに反して福島第一原発では大量の水が燃料棒の冷却に投入され、大量の放射能汚染水を生じているが、それが現在も続いている。その間、どれほどの放射能汚染水が海に漏出したのかおよその見積すら明らかにされていない。したがって現段階の放射性物質の放出総量は政府の発表値をかなり上回るはずなので、朝日の《今はチェルノブイリの1割》という表現は正しくないことになる。もしかすると現段階ですでにチェルノブイリの放出量に迫るかもしくはそれを凌駕していると想像することに私には抵抗感が無いのである。

この期になって強気?になったのか、東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理の発言が波紋を呼んでいるようである。

Junichi Matsumoto, a senior nuclear power executive from the plant’s operator, Tokyo Electric Power Company, fanned public fears about radiation when he said at a separate news conference on Tuesday morning that the radiation release from Daiichi could, in time, surpass levels seen in 1986.

The radiation leak has not stopped completely, and our concern is that it could eventually exceed Chernobyl,” Mr. Matsumoto said.

どのような根拠にもとづいての発言なのか知るよしもないが、私の想像と軌を一にした発言なのが気に掛かる。これに対して公安院の西村審議官はこう述べている。

But Hidehiko Nishiyama, deputy director general of Japan’s nuclear regulator, the Nuclear and Industrial Safety Agency, said in an interview on Tuesday evening that he did not know how the company had come up with its estimate. “I cannot understand their position,” he said.

He speculated that Tokyo Electric was being “prudent and thinking about the worst-case scenario,” adding, “I think they don’t want to be seen as optimistic.”

東京電力は米国原子力規制委員会に倣って、楽観的だったこれまでの姿勢を大きく方向転換し始めたのだろうか。しかし元来データに基づいて下されるべき判断が、「気分」により大きく左右されるようでは国民はただ振り回されるだけで、ますます「発表」に信をおけなくなる。

原子力安全委員会、原子力安全・公安院、東京電力のそれぞれの思惑が絡んでおりそうな「レベル7」の格付けもさることながら、私の最大の関心事は「燃料棒の冷却」を一刻も早く制御下に置くことである。「レベル7」がこの取り組みに無力感をもたらすことがないことを今はただ祈りたい。

福島第一原発の現状 なぜ見えてこないのか

2011-04-11 22:41:06 | Weblog
ここしばらくThe New York Times(NYT)の福島第一原発現状報告へのアクセスがいつの間にか増えだして、この週末には「福島第一原発 現状」の検索からのアクセスが最高に達した。GoogleでもYahooでもなんとこのエントリーが大前研一氏のYouTubeに続き110万件ほどの2位に躍り出ているのである。これには驚きよりも申し訳なさが先立った。というのもこのエントリーは3月19日のもので、アクセスして下さった方には「現状」からほど遠いものだからである。しかし私も新聞、インターネットなどの情報には一応注意を払っていたが、なかなか「現状」が伝わってこない。とくに4月に入って第一原発2号機の取水口付近から高濃度の放射性物質を含む汚染水が海に流出したことが明らかになって以来、海への流出を止めること、さらに汚染水の処理を巡っての話題がニュースのほとんどを占めたと言ってよい。その一方、原子炉の状態やその周辺でどのような作業が進行しているのか、実情は何も伝わってこなかった。何故なのか。その疑問に間接的に答えるような記事がThe New York Times(NYT)に現れたのでその要点を紹介する。

Lack of Data Heightens Japan’s Nuclear Crisis

TOKYO ― Nearly one month after Japan’s devastating nuclear accident, atomic energy experts, regulators and politicians around the world are still puzzling over a basic question: How much danger is still posed by the Fukushima Daiichi nuclear power plant?

That depends to a considerable extent on how hot the uranium fuel rods at the power plant remain, and whether fuel has escaped its containment, or might still do so. Yet remarkably little is known for sure about what is really happening inside the reactors because some areas remain far too radioactive for workers to approach, and some instruments have malfunctioned.
(April 8, 2011)

この冒頭部分が簡潔に問題の在処を示している。福島第一原発がどれほど危険な状態にあるのかという基本的な疑問について、世界中の原子力専門家、監督機関、それに政治家が頭を悩ませているというのである。ところがその危険度は燃料棒がどれほど熱いのか、また燃料が圧力容器から漏れ出たのかそれともいまでも洩れ続けているのか、によって大きく変わる。しかし現場には放射能があまりにも高くて作業員が近づけないとか、また計測器が正常に機能していないこともあって、原子炉の内部で何が起こっている事やらほとんど分かっていないと言うのである。残念ながらこれが「現状」のようである。そしてこう続く。

The paucity of data and the conflicting estimates of what the available information really means have prompted a series of confusing analyses and a rift between officials in Japan and those overseas ― and even between one member of Congress and the United States Nuclear Regulatory Commission.

The commission speculated this week that the nuclear fuel in the core of one of the stricken reactors had probably leaked from its thick steel pressure vessel, its most important protective barrier. If that proved to be accurate, it would raise the prospect of continuing fuel leaks and high levels of radioactive releases that would vastly complicate containment and the cleanup.

But Japanese officials said there was no evidence of a compromised pressure vessel, and they wondered why they were reading about it in the newspapers.

データの少ないことと提供される情報が実際に何を表すのかの受け取り方がことなることがその解析を混乱させ、日本と海外の関係者の間に断絶をもたらしたと言うのである。

その齟齬の一つが燃料棒の溶融を巡っての解釈である。米国の原子力規制委員会(NRC)は損傷した原子炉の一つ(2号機)では炉心の核燃料が厚い鋼鉄製圧力容器から十中八九漏れ出たと推測した。この推測が正しいとなると、燃料が依然として漏れ続け、高レベルの放射能が放出される公算が高くなり、封じこめと汚染除去がきわめて面倒になる。ところが日本の関係者は圧力容器が損なわれたという証拠は無いと述べ、そのようなことを新聞紙上で見ることを怪訝に感じたとまで言っている。燃料ではなく放射能で汚染された水が圧力容器から漏出したと言うのであろう。実はこれは東京電力側の見解で、原子力安全委員会と原子力安全・保安院は溶融の可能性が高いとコメントしている。日本国内でも情報がどのように流れているのか、そしてどれが正しいのか国民には一つも見えてこない。

同じような問題は米国にもあって、燃料棒損傷率にどのような意味が?でも次のように述べたところである。

米国原子力規制委員会(NRC)が傷ついた原子炉の炉心の一部が十中八九鋼鉄製圧力容器から洩れて格納容器の底に溜まったと言いながら、委員会は原子炉圧力容器が壊れたとは信じていないし、炉心のすべてが圧力容器に残っていると信じるとも述べるなど、どうも歯切れがよくない。

そしてこの8日の記事にも次のような記載がある。

This week, Representative Edward J. Markey, Democrat of Massachusetts, an outspoken critic, engaged in a running debate with members of the commission’s staff over the conditions at Reactor No. 2 in Japan. Mr. Markey said the regulators had told his staff that fuel was leaking from the reactor, but then the commission issued a more ambiguous public statement.

“I find it rather curious that some within the Nuclear Regulatory Commission are attempting to deny the findings their own technical staff conveyed to my office as soon as it became clear that this information showed a meltdown that is more severe than some people apparently wish to acknowledge,” Mr. Markey said in a statement.

どっちもどっち。原子炉建屋内で正確なデータの得られていないところに混乱の根源があるようだ。それに米国と日本で次のような立場の違いが混乱を助長しているのであろう。

“We have a very conservative culture in the nuclear industry” in the United States, said Murray E. Jennex, a professor at San Diego State University and a specialist in nuclear containment structures. “There’s nothing to gain by the N.R.C. saying things are good. At the same time, there’s nothing to gain by Tokyo Electric not downplaying stuff.”

米国側にしてみると物事はすべて順調と言っても得るところがあるわけでなし、一方東京電力としては物事を軽く見ないと強調しても得るところがあるわけでもない。ということは米国側は悲観的に事態を説明するのに対して、東京電力側は楽観的に説明するということなのだろうか。それにしてもこのような分析は注目に値する。

The Japanese also seem to prefer presenting raw data without explaining what they think it means, said Takashi Inoue, a professor of public relations at Waseda University. Every day, Tokyo Electric, the nuclear agency, the chief cabinet secretary and others hold news conferences at which they present a blizzard of facts and numbers but rarely make broader declarations about the conditions at Fukushima Daiichi.

毎日、東京電力、原子力安全・保安院(?)、内閣官房長官などが記者会見を開いて事実と数値を沢山並べたてるが、福島第一原発の状況についてより本質をついた言明がされることは滅多にないと言ってよい。

こういう次第だから福島第一原発の現状が浮かび上がってこないのである。

実はこの記事に実情把握について米国と日本のかなり本質的な食い違いが具体的に述べられているが、どちらが正しかったのかはいずれ分かることだから、気長に待つことにしよう。


燃料棒損傷率にどのような意味が?

2011-04-09 00:28:40 | Weblog
下の図表が昨日と今日(4月8日)の朝日朝刊に二回掲載されていた。この中で「燃料棒の損傷率」が記されており、7日の記事では次のように説明されている。


 東京電力が3月14~15日時点ででした分析では、1号機の炉内の燃料棒の損傷率は70%に上った。2号機は30%、3号機は25%だった。これは格納容器内で測定した放射線から割り出した計算値で、被覆菅が壊れた割合をある程度推測できるが、溶融など燃料の状態までを示すものではない。

すでに損傷率の定義がどこかに出ているのかも知れないが、私は見ていないので勝手に想像してみる。これも想像であるが炉心には約300本の燃料棒が入っているとする。単純な場合として被覆菅の一部でも破れた燃料棒を損傷とみなすと、損傷率70%ということは、壊れた燃料棒が210本で残りの90本は健全ということになる。しかし現実問題として被覆菅が同じような壊れ方をするとは考えにくい。それを示唆するような記事がThe New York Times(NYT)に出ている。

Core of Stricken Reactor Probably Leaked, U.S. Says

The United States Nuclear Regulatory Commission said Wednesday that some of the core of a stricken Japanese reactor had probably leaked from its steel pressure vessel into the bottom of the containment structure, implying that the damage was even worse than previously thought.(中略)

The Nuclear Regulatory Commission’s statement regarded unit No. 2, and the agency underscored that its interpretation was speculative and based on high radiation readings that Tokyo Electric had found in the lower part of unit No. 2’s primary containment structure, called the drywell. The statement said that the commission “does not believe that the reactor vessel has given way, and we do believe practically all of the core remains in the vessel.”
(April 6, 2011)

米国原子力規制委員会(NRC)が傷ついた原子炉の炉心の一部が十中八九鋼鉄製圧力容器から洩れて格納容器の底に溜まったと言いながら、委員会は原子炉圧力容器が壊れたとは信じていないし、炉心のすべてが圧力容器に残っていると信じるとも述べるなど、どうも歯切れがよくない。いずれにせよ炉心の溶融が言及されたのは2号機のことで、原子炉建屋での水素爆発は避けられたものの爆発音がするなど、原子炉自体の損傷の程度が当初の予想を上回って大きいことが指摘されている。これは今日東京電力が公表した3月14日に2号機においてのみ燃料棒が全露出(1号機、3号機では一部露出)したとの事実と矛盾しない。またこれもNYTの記事に依拠するが、何時間も炉心に水が無く、また冷やすための注水も行わなかった事実は、「シミュレーション」を行うための初期条件を簡単にして、炉心温度が何度まで上昇していくかの予測が容易になる。それぞれ異なる「シミュレーション」ソフトを初期条件を使ってであるが、摂氏で2,250度とか2,700度という最高到達温度が得られている。金属の融点は鉄が1,539度、ウランが1,132度、ジルコニウムが2,127度であるから、これらを溶融するには十分な温度である。2号機がかなり激しく損傷を受けていることがこれからも分かるが、それにしては30%の損傷率とされた燃料棒の壊れ方が、単に被覆菅が損傷しただけとは考えにくく、燃料棒そのものの溶融を視野に入れざるを得なくなる。確かに《溶融など燃料の状態までを示すものではない》と言われればそれまでであるが、「被覆の剥がれ」と「溶融」を区別出来ない損傷率の数値だけが一人歩きすることが、かえって「溶融」の危険性を覆い隠すことにもなりかねない。

燃料棒の損傷率一つで、あくまでも素人談義であるが、ここまで考えさせられた。専門家の説明が欲しいものである。






福島原発の仮設タンク vs.墨俣の一夜城

2011-04-06 18:04:44 | Weblog
高濃度放射能汚染水、海への流出止まる 福島第一2号機

 東京電力は6日、東京電力福島第一原発2号機の取水口付近の作業用の穴(ピット)から海に漏れ出ていた高濃度の放射能汚染水が同日午前5時38分、止まったと発表した。

 東電は5日午後、流出しているピットの下に、砕石層をガラス状に固める薬剤を入れる止水工事をした。工事後に、海への流出量はやや減っていた。
(asahio.com 2011年4月6日7時7分)

ボストン・ローガン国際空港で交通渋滞に巻き込まれた時の「プルプル」で高濃度放射能汚染水の海への漏出を取り上げていた時点からほぼ30時間後になるが、何はともあれ海への漏出が止まってよかった。しかし一方、低濃度(と言ってもどの程度か分からないが)の汚染水約1万トンに加えて、法律で環境中への放出が認められている濃度基準の100倍の汚染水1500トンを海に流すという作業はどうなったかというと、ほぼ終了したようである。

 一方、集中環境施設の汚染水は6日午前6時半までに1万トン弱を放出した。同日中に残った約600トンを放出する予定。5、6号機の地下水は約1500トンのうち300~400トンを放出した。その後、2号機タービン建屋内にたまった高濃度の汚染水を移送するための工事を進める。
(毎日新聞 2011年4月6日 12時57分(最終更新 4月6日 14時19分))

これで核兵器を持たないわが国が、放射能汚染水の海への漏出と投棄国としての汚名を歴史に残すことになってしまった。漏出は詮方ないことながら、とくに投棄はそれ以外に手はなかったのだろうか。

私がテレビを見て 9日目に救出 広告 原発避難者 リビア  追記あり
で次のように述べたのは3月21日のことである。

そういえば消防車などが大量の海水を原発の内部設備に放水しているが、どこに消えていっているのだろう。蒸気になって空中か、溢れて流れ出して地下に潜るか海に戻るか。地下水、海水の放射線モニタリングデータが発表されていないのはデータが無いのか隠しているのか。肝腎な情報を公表すべきなのに誰も何も言わない。

大量の海水がどこに行くかは現場の責任者にはとっくの昔に分かっていたことであろう。その実情として、いろんな場所に放射能汚染水が溜まっていることが次第に明らかにされてきた。その汚染水を外部に出さないとの確固たる意志が東京電力側にあれば、早々と敷地内にどういう形であれ貯留タンクの設置に着手出来たはずである。現にそのような計画が4月4日になって明らかにされた。

東電、福島第1に15日から仮設タンク設置、メガフロートも来週到着へ

 福島第1原子力発電所の1~3号機のタービン建屋に強い放射性物質(放射能)を含む汚染水がたまっている問題で、東京電力は4日、汚染水を移す仮設タンクの設置を15日から開始することを明らかにした。4月末までに、総容量1万5000トンの仮設タンクを敷地内に配置し、順次、汚染水を移し替える。

 東電は同日、静岡市から譲渡を受けた人口浮島「メガフロート」が5日にも清水港を出港し、来週末まで福島第1原発に到着する計画を明かした。メガフロートは約1万トンの水を収納できる。また、これとは別に国内に残り2隻ある約1万トンのメガフロートの譲渡交渉を開始したという。

 このほかに、水をためることができるバージ(はしけ)船も、総容量1200トン、1000トンの2隻を用意したことも明らかにした。仮設タンクやメガフロートなどを使い、タービン建屋の汚染水処理が進めば、配電盤やポンプ類の復旧作業が行えるとしている。
(産経ニュース 2011.4.4 19:19 )

あまりにも決断が遅いし作業が悠長である。ふと頭に浮かんだのが太閤記のなかでもよく知られた「墨俣の一夜城」の挿話で、国史大辞典(吉川弘文館)にもこのように出てくる。

永禄九年(一五六六)織田信長が西美濃経営の拠点として羽柴(豊臣)秀吉に命じて築かせた墨俣城は「一夜城」として著名である。秀吉は大規模な柵を設けて敵勢を弓・鉄砲で防ぎながら尾張の篠木、柏井、科野などの野武士ら千二百人を使って不審を強行し、わずかな日数のうちに堀・櫓を推した下、堀で囲むなどして完成させた。

実際は一夜ではなく数日はかかったようであるが、信長のような果断に富む大将、秀吉のような実行力のある知恵者さえおれば、とつい思ってしまった。そろそろ「指揮・命令系統」が整備されてきたのだろうか。それにしても待たれるのが米軍部隊「シーバーフ」の活動であるが、未だにニュース面には登場してこない。

世界最強「核事故対応機動部隊」の創設を 追記あり

2011-04-01 18:40:11 | Weblog
知らぬが仏とはよく言ったものである。今回の福島原発事故で明らかになったことの一つに、わが国には強い放射能環境下でも作業可能な放水車やポンプ車、さらにはロボット注水・放水車に重装備の防護服などに護られた「特殊機動隊」のようなものが整備されていなかったと言うことである。福島原発に放射能防御の作業車両がなかったのかでも《日本中の原発のどこにも放射能防御作業車両が無いのだろうか。もしそうならこれは「想定外」で決して許されることではない。恐らく「秘密兵器」なのであろうが、今からでも遅くない、米軍、露軍に緊急配備して貰ったらどうなのかと思う。》と述べ、さらに福島第一原発に即刻米軍専門部隊の投入を!と叫んだ。3月18、19日のことである。それから10日以上経ち、今日の産経ニュースが次のように報じた。

原発事故支援へ、米軍部隊「シーバーフ」 化学・生物兵器のプロ
医療・除染・復旧も担当

 東日本大震災に伴う福島第1原発事故の深刻化を受けて、米軍から派遣される「化学・生物兵器事態対応部隊(CBIRF=シーバーフ)」は、米本土での核・生物・化学テロなどを想定して訓練を積んできた。米国内でも厚いベールに包まれてきた部隊が日本で起きた未曽有の原発事故という“有事”にいかに能力を発揮するか注目されている。(田中靖人、ワシントン 佐々木類)

 シーバーフは平成7(1995)年の地下鉄サリン事件を受けて1996年4月に設置された米軍で唯一常設の化学・生物兵器事態への即応能力を持つ約500人の部隊だ。

 現在は、2001年の米中枢同時テロを受けて米本土防衛を主任務に創設された米北方軍(コロラド州)傘下の特殊部隊「CCMRF(シースマーフ)」に所属している。

 シースマーフは、陸、海、空、海兵隊の4軍で構成された1個旅団規模の統合特殊部隊(約4700人)。バージニア州フォートモンローの米陸軍基地などで、核攻撃や原発へのテロ攻撃、生物、化学兵器テロや原発事故などを想定した訓練を続けている。

 具体的には、被災地の自治体や民間の病院などと連携しながら、高濃度汚染地域からの被災者の救出・搬送、汚染源の特定と汚染濃度の観測、要員・部隊の除染などに従事する。がれきの除去や移動経路の建設、物資輸送など被災地の復旧活動も担う。

 有事の際にシースマーフの初動部隊として出動するシーバーフは2個の初期対応部隊で構成され、各部隊には偵察チーム、被災者捜索・救出チーム、医療チーム、除染チーム、爆発物処理チームがある。今回日本に約140人が派遣されるが、実際の放射能汚染下での行動は初めてとみられ、現在、自衛隊との具体的な連携方法を詰めている。
(2011.4.1 08:04)

企業によっては自衛消防隊を設置しているところがあるので、私はその感覚でとくに核燃料を扱う特殊性から、各原子力発電所には放射性物質で汚染された状況下でも作業ができる特殊な消防隊というか作業班があるものだと思い込んでいた。その思い違いに気がついたことを原子炉を作った人と動かす人で述べたところである。火事になれば原子力発電所も消防署に電話をかけるのである。現に3月30日に福島第二原発1号機のタービン建屋から煙が上がったときにもまずは消防署に通報したいるである。

福島原発事故への対応で世界に醜態を曝した何もかも「ないない尽くし」は、間違いなく政府の責任であると思う。原発反対運動が福島原発事故を拡大させた?で私は次のように述べた。

今回の自衛隊、消防隊、警察、さらには消息が流れてこない米国専門部隊を合わせての装備・機材を大きく上回る世界最強の原発危機鎮圧隊の創設を真剣に考えるべきであろう。日本で稼働中の原発すべてを即刻運転停止に出来ないとすれば、これしか考えられる対策は無い。
今からでも遅くない。「核事故対応機動部隊」を一刻も早く創設すべきで、自衛隊の中に設けるのが現実的であろうと思う。

日本でかりにすべての原発を廃止したとしても、施設をそのまま放置することは出来ない。原子力発電所「Yankee Rowe」の静かな終焉とくらべてでも述べたように原子炉一基を解体撤去する費用が6億800万ドルかかっている。これを7億ドルとして1ドル=80円だと560億円になる。日本には現在50数基の原子炉があるから50基として2兆8000億円になる。また「使用済み核燃料保存設備」の維持に単純計算で800万ドルx50=4億ドル、すなわち320億円かかることになる。原子力発電所を廃止するにも大金がかかるのである。「核事故対応機動部隊」の創設にいくらなんでもそれほどはかかるまい。

原子力発電所の存廃はいずれ取り沙汰されようが、当面運転を続けざるを得ないとすると今こそ今回の事故を教訓に、世界最強の「核事故対応機動部隊」を日本が創設すべきであろう。蓮舫さんにまた蒸し返されるかも知れないが、これは日本の意地でもある。

追記(4月2日)

上の記事を投稿後、次の記事(抜粋)が目についた。

福島第1原発 廃炉に30年と1兆円

 日本原子力発電に13年間勤務し、東海村の原子炉廃炉にも携わった村上氏は「東電が4基の原子炉を廃炉にするのは議論の余地がないことだろう。費用はおそらく1兆円を超えるだろう。損傷した燃料棒を原子炉から除去するだけでも2年以上かかる。作業がずれ込めば費用も増加する」と予想した。(ブルームバーグ Shigeru Sato、Yuji Okada)
(SankeiBiz 2011.4.1 05:00)

また2002年の記事に<原子力発電所の廃炉コスト>と言うのがあった。一部を抜粋するが、私の単純計算のほぼ10倍の費用に見積もられている。

この記事を元に考えると、約50基の原子力発電所の廃棄物を含めた処分費用が約26兆6000億円ということは、1基当たり「5320億円」。これには運転中に発生する廃棄物処分費用も含まれますが、原子力発電所の廃炉コストは「数百億円」ではすまないのは確実です。





東京電力の「ヒューマン・エラー」を外から眺めると

2011-03-29 14:49:14 | Weblog
蓋を開ければ東電の「測定ミス」で終わった「放射能1千万倍」騒ぎであったが、一つポジティブな面を指摘すると、今や日常業務となっているはずの放射能の測定と計算にいとも容易に「ヒューマン・エラー」が入り込むという現実を、全世界、とくに日本国民に広く知らしめたことである。

2号機 高濃度の放射性物質としてNHKニュースは当初次のように報じた。

福島第一原発では24日、3号機のタービンがある建物の地下で作業員3人が被ばくし、現場の水から運転中の原子炉の中の水と比べ、およそ1万倍の濃度の放射性物質が検出されました。その後、1号機の水たまりからもほぼ同じ濃度の放射性物質が見つかっています。このため、東京電力は、震災の発生当時、同じく運転中だった2号機の建物に出来た水たまりも調査したところ、1cc当たり29億ベクレルと、1号機、3号機のおよそ1000倍、運転中の原子炉の水のおよそ1000万倍という高い濃度の放射性物質が検出されたということです。この中には1cc当たりの濃度で、いずれも放射性の▽ヨウ素134が29億ベクレル、▽ヨウ素131が1300万ベクレル、▽セシウム134とセシウム137共に230万ベクレルなど、原子炉内で核分裂した際に発生する放射性物質が含まれていました。
(3月27日 12時11分)

ふつうの常識があればこの強調部分でこれまで報じられたことの無かった(と私は思うが)ヨウ素134が急に出てきたことにまず不審を抱くのでは無かろうか。さらに(たまり水)1cc当たり29億ベクレルという放射能すべてがそのヨウ素134に由来するようなものだから、特徴がはっきりしている。まずはヨウ素134の半減期を調べてみなくてはと思ったものの、いずれは追加発表で様子が分かるだろうとそれを待つ姿勢になった。後出しじゃんけんじゃないが私は最初から疑っていたのである。

同日遅くに東電から訂正発表があったが、この言い訳がよかった。

 東電の広報担当者は、「測定結果が不確実な可能性があっても、公表しなければ、後から『隠していた』と批判を浴びる」と悩む。経済産業省原子力安全・保安院も、同じ理由で公表を優先したとしている。
(asahi.com 2011年3月27日22時14分)

まあその通りであろうが、発表に至る過程で「なぜ急にヨウ素134が出てきたんや」と誰一人疑問を持たなかったのだろうか。今やそんなことはどうでもよい。東電のお粗末な台所事情がまたもや浮かび上がったこと、いとも容易に「ヒューマン・エラー」が起きることを国民にさらけ出したのがよかった。万全なんてありえないことが常識にならないといけない。米国人も東電発表は眉につばをつけて受け取るようで、The New York Timesは福島第一原発敷地内で行った土壌の調査でプルトニウムが検出されたことについて、次のように報じている。ここでも「測定ミス」が指摘されているのである。

All the reported readings are within the safe range of plutonium levels in sediment and soil given by the United States Agency for Toxic Substances and Disease Registry. But Tokyo Electric said the highest reading was more than three times the level found in Japan compared with the average over the last 20 years. American nuclear experts expressed confusion on Monday about the company’s latest report that one form of plutonium was found at elevated levels at the Fukushima plant while other forms were not, and suggested it could be a measurement error.
(March 28, 2011)

まるで大人が子どもを諭しているようである。われわれは何も手を出すことが出来ないのだから、発表数値そのものに振り回されて一喜一憂することなく、福島第一原発事故が世界にまき散らす放射性物質の量が、せめてチェルノブイリ原発事故の規模を上回ることにならないようひたすら念じようではないか。

追加(29日 18:10)

東京電力が平成22年11月19日付けで「原子力発電所の安全と品質確保のためのヒューマンエラー防止に向けて」というPDF文書を公開している。福島第一所長は社員に対して『現場は「怖い」、「何が起こるか分からないところ」、「危険なところ」という認識の再徹底』などときわめて的確な指示を与えているし、また福島第二所長も『初めてや久しぶりの仕事、また慣れない仕事については、正しいとおもっていても間違っていることは多い。「どこのグループにおいてもヒューマンエラーは起こるものだ」と思い、・・・』と指示を与えている。

このこと自体はよいのであるが、昨年の暮れにこのような文書を出したということは、よほど作業員の能力の低下が問題になっていたからであろうか。