勾配が険しい山道を息を切らせつつ、馬堀自然植物園の山を登った。
ほぼ頂上近く、「白樫の巨根」が山道を遮るかのように脚を伸ばしていた。
巨根を回り込んだら名札が吊るされていたので、「白樫」の巨根だと判明した。
名札に依れば、白樫は別名・細葉樫、ブナ科・コナラ族。分布は本州の福島県以西~九州、朝鮮、中国。材は灰白色との解説であった。
白樫と同じように、それぞれの樹木の名前と共に簡潔な解説が付記されているので、思わずお勉強させて貰った。
馬堀小・中学校の学童たちは、名札の解説を丁寧にメモ帳に写し、教室に帰ってから更に別なお勉強に繋げるのであろう。
そんな学童たちの姿を瞼に思い浮かべながら、山道を辿ると、山頂の尾根道では面白い光景に出会った。繁茂する樹木の根が絡み合って山道を覆い、雨水で表層の土が洗い流され、樹木の根が様々な模様を描いていて、目を瞠った。
尾根道とは云え巨木が繁茂するこの山は、空を見上げれば枝が絡み合い、鬱蒼と茂った枝葉が高い天井をなし、足元では樹木の根が複雑に絡み合って、山全体を
堅固に守っているかの様だ。
そう云えば、この地にはかつて陸軍重砲兵学校があったことを思い出した。
国を護る思いが、未だに山の樹木に受け継がれているかの様だ。
陸軍重砲兵学校の名残りは、園内の山中に残された稜威神社の碑文に刻まれ、重砲の格納庫の遺構なども見られるが、それらの歴史を辿る物好きな男は今や誰もおるまい。
絡み合った樹木を見て、山を守り国を護ることを連想し、陸軍重砲兵学校に思いを致すのは、ひょっとすると虚庵居士が最後かも知れない。
白樫の巨根を跨ぎあれやこれ
思いを廻らす散歩の爺かな
息切らせ登り来れば目を瞠る
樹の根の重なる尾根道なるかも
見上げればスクラム組むらし繁茂する
樹木の條々(えだえだ) 山を守るや
かつて此処は 陸軍重砲兵学校
ますらお育てた名残りの山かな
絡み合う樹の根も枝葉も山守り
国の護りを受け継ぐ心か