略一月ほど前に、「うつろ庵の紅ばら」をご紹介したが、この薔薇は咲き初めてから
既に二ヶ月ほども愉しませて貰った。
珊瑚樹の生垣を越えて、滾るような咲振りは毎年のことながら見事であった。
素晴らしい薔薇の香を多くの皆さんに愉しんで貰いたい、道行く人々に香りのお裾分けをしたいと願って、生垣の外に篠竹を立て、竹篭に薔薇の花びらを入れて吊るした。
竹篭に添えた紙片の落書に、「ばらの香りのお裾分けです」と認め、その裏に一首を添えた;
舞い散るも
なお香しき花びらの
こころを受けまし
御足とどめて
そんなお遊びを重ねて来たが、散り敷く薔薇の花びらは、たちまち竹篭が一杯になるので、適宜花びらを新聞紙の上に拡げて、乾燥ポプリをつくった。
散り敷いたばかりの花びらの色は誠に鮮やかで、純粋無垢の香りが素晴らしい。
花びらは風に飛ばされるので、玄関の花梨材のフローリングに新聞紙を開き、薔薇の新鮮な花びらを拡げた。外出先から帰宅し、玄関の扉を開ければ素晴しい芳香が立ち上り、暫し陶然と立ち尽す虚庵夫妻だった。
薔薇の花びらは、芳香を発散しながら表情も色合いも毎日変化させつつ、徐々に乾燥する。乾燥の程度に沿って、花びらの香りも微妙に変化するので、移りゆく香りの変化もたっぷりと堪能させて貰った。
略乾燥した手づくりポプリは、かなりの量になった。
孫娘のりかちゃんや、海の向こうのキャメロン君にも、薔薇の香のお裾分けを送ることにした。序でに、日頃ご無沙汰に打ち過ぎている遠くの兄弟姉妹にも、早めの暑中見舞いを兼ねて送ったら、年老いた兄からさっそく電話があって、久し振りに兄弟の会話を愉しんだ。薔薇のポプリの思わぬ効用に、感謝の虚庵居士であった。
紅の滾り燃えたつ薔薇の花の
高貴な香りにいとど痺れぬ
香り立つ薔薇の香のいと惜しく
散り敷く花びら篭に収めぬ
生垣を越えて花咲く薔薇の香を
せめて召しませ篭に収めば
竹篭の薔薇の花びら忽ちに
溢れるほどに風に散り敷く
竹篭に溢れる薔薇の花びらを
ポプリにせむと香りに酔うかな