「うつろ庵」の玄関先の鉢に、珍しい花が咲いた。
門被り松の下には、蘇鉄の大鉢をはじめ二・三の鉢が気侭に置かれているが、その内の一つに植えた記憶が無い草花が、一メートル程も背丈を伸ばして、夏の到来に合わせて花を付けた。
玄関先の姫榊の植え込みを背にして、可憐な薄瑠璃色の花を付けて、虚庵夫妻は感激であった。蕊の色も姿も、どこか茄子を思わせるが、背丈も花の風情も何となく外国風だ。花が咲いてから、様々な花図鑑のお世話になって調べ、諦めようかと云う時になって、「瑠璃柳」又の名を「琉球柳」と判明した。
原産地はブラジル、我が国に初めて根付いたのは琉球だったようだ。薄い瑠璃色の花、柳の葉に似た風情などから、和名が付けられたようだ。
それにしても、ブラジル原産の花が琉球に初めて根を下ろし、「うつろ庵」の鉢に納るまでに、どの様な経路と物語があったのだろうか? 興味津々だ。
何時からか見慣れぬ草花根をおろし
気品を湛えて背丈を伸ばしぬ
八月の声聞く頃には稚けなき
つぼみと期待がふくらむ日々かな
微かにも朝風うけて綻びぬ
うす瑠璃色の花との出会いは
乙女ごは海の彼方ゆ遥けくも
琉球を経て我が家に嫁ぎぬ
ゆたにあれそなたの旅路はこの庵に
寛ぎなされ心ゆくまで