「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「未だに瑞々し」

2006-11-16 20:16:23 | 和歌

 「うつろ庵」の椿の木の下に、白いベゴニアがひっそりと咲いている。

 十一月も半ばともなると、日中でも半袖で過ごす元気者は流石に見かけなくなったが、このベゴニアはどちらかと言えば半袖が似合う花だ。もう木枯らしが吹いてもおかしくないこの時節に、未だに瑞々しい花を咲かせ続ける優れものだ。





 友人が大倉集古館の招待券を態々郵送して呉れたので、会議を一時間ほど抜け出して、「中国古代の暮らしと夢」特別展を観た。北魏・後漢・唐などの墳墓の副葬品に焦点を当てた企画展で、彼らの死後の世界へかけた思いを、見事に見せてくれた。人の魂は不滅だと信じて、墓の中に理想の生活を再現するために、数々の陶器のミニチュアセットを副葬したものだ。水榭(池中の楼閣)や猪圏(厠つき豚小屋)などは、当時の生活スタイル、食生活、ものの考え方などをまざまざと示していて、古代人の逞しい生き様が偲ばれた。

 陶器のミニチュアセットとは言え、彼らが動物達と共に暮す姿や話し声なども、未だに瑞々しく息づいていて、其処にはまさに不滅の世界があった。






             ベゴニアのか弱き花も脆き葉も
 
             瑞々しきかな霜月半ばぞ
 


             千年を越えて今なお瑞々し
 
             不滅の魂の来世の暮しは
 


             朽ち果てるこの身にあれど永ふる
 
             何をのこさむ虚庵のしるしは