「磯菊」の鮮やかな黄金色が、秋の陽射しに映えていた。
「うつろ庵」は、三浦半島の東端・観音崎に近いゆえであろうか、住宅街のあちこちで「磯菊」を見かける。この花は本来、海岸に自生する逞しい花であるが、花と葉の絶妙なバランスに惹かれて、庭に植えて楽しむお宅が多いようだ。
「磯菊」は深まる秋をどのように知るのだろうか。
神無月の下旬には、固く口を閉ざしてはいても、鮮やかな黄色の蕾が、「おしくらまんじゅう」よろしく身を寄せ合い、霜月の声を聞くと蕾は次第にほどけ始める。「磯菊」は蕾も花も、まさに鮮やかな「黄金色」そのものだ。若干厚手の葉は、葉裏の白いビロードが葉の縁取りを作って、なかなかオシャレな装いだ。
終戦直後の貧しい時代に育った虚庵居士は、オシャレよりは、未だに慎ましい生活感覚が身に付いて離れない。何時になったら、この様なオシャレが出来るのだろうか。
潮の香の漂う浜に磯菊の
黄金の花は咲きわたるかも
岩ばしる荒磯のしぶきに身をきよめ
陽の色凝りにし磯菊の花は
いとけなき頃の思いを偲ぶれど
貧しくあらずも何は無くとも