夜の底が白くなった。
雪の冷気が流れ込んだ。
次男と二人、冬の旅。
京都から夜行バスで新潟へ、三条で刃物の仕事をした後、越後湯沢で
の静かな一日。
午後の時間を二人だけで空っぽの温泉で過ごす。露天の湯に身を浸し、
ぼんやりと冬空を仰ぐ。天空から降り落ちる霙まじりの冬の花。
そして、もう当たり前に「雪国」のかけらもない街を後に、知人のいる
長岡へ。そこは山本五十六生誕の地でもある。
今日のニュースによれば真珠湾を安倍が尋ねると言う。
もう歴史も何もなく、狂気を軽薄のオブラートに包み込むのみの国。
「雪国」の当時も社会の狂気はあった。しかし、それを包み込んだのは
耽美家の幻想の文章で、少なくとも軽薄軽長ではなかった。