午後9時を過ぎると、わが家の庭には夜な夜な懐中電灯を照らして徘徊する人影が見える。すわ泥棒かと思うのも無理はないのだが、じつは私がナメクジを駆除しているのである。
5月から6月の2カ月間はナメクジの駆除に追われる。狭い庭のどこにこれだけのナメクジが姿を隠しているのかと思うほど駆除しても駆除しても次から次と夜な夜な姿をあらわしてくる。消耗戦の様相で、こちらが疲れて放り出したくなるくらいだ。
私
にとってなぜナメクジが害虫になるのか。それは若芽を食べられてしまうからだ。野菜や花の種をビニールポットにまいてトロ箱に入れ、ビニールですっぽりと
包んでおく。芽が出たなと思って中をのぞくと芽が食いちぎられている。ナメクジの仕業だ。トロ箱の中を探すと必ずいる。いつのまにか”侵入”しているの
だ。せっかく出てきた芽を無残に食べられるとやはりがっかりする。庭の花にもナメクジが付いている。
わがもの顔に庭を占領しているナメク
ジを退治しなければならない。駆除するために、これまでにビールや駆除薬剤を試した。それなりに効果があった。しかし大量のナメクジにはこれで対応できな
い。とくに飲兵衛の私にはビールを毎日提供することは耐えられない。そこで発見や試行錯誤で次のような方法で駆除している。
1、庭の
あちこちに市販されている肥料の固形油粕を置いておく。なぜ油粕なのか。これはナメクジをおびき寄せるための餌である。あるとき植木鉢の固形油粕にナメク
ジが群がっているのを見つけた。油粕が好きなようだ。観察しているとたしかだ。平たい器の上に置いてもいい。ただし雨が降るとしだいに融けてしまうのが固
形油粕の難点なのだが。
2、私のナメクジ退治の”武器”は割り箸と懐中電灯、それに捕まえたナメクジを入れる空き缶(写真)。空き缶には濃い塩
水が入れてある。固形油粕の置いてある場所を順番に見回る。懐中電灯をあてると気持ち悪いほどの数のナメクジが集まっている。割り箸でつまんで空き缶に入
れていくのである。多いときは一晩で空き缶いっぱいになる。これが毎夜毎夜繰り返されるとなると、いい加減面倒になって放り出したくなる。これだけの数の
ナメクジが昼間はどこかに身を隠しているのだ。
駆除してもナメクジはこの時期は毎夜性懲りもなく姿を現す。それが毎年繰り返される。きっとわが家の庭は居心地がいいのだ。狭いながらも草木が多く、枯れ葉が積もっている。たぶんそれで繁殖を繰り返しているのではないかと思う。
今夜も上記の”武器”を持ってナメクジ駆除をした。昨晩に比べて気温が低いせいか少ない。この雨の中どこかにあのナメクジ軍団は身をひそめている。
最近知ったことがある。
懐中電灯で照らしていると世にも気持ち悪いものあられることがある。くねく
ねとした細長い虫が這い回る。最初はミミズかと思ったが、それよりも細く目を背けたくなる生き物だ。これがなんと「コウガイヒル」といって、ナメクジを捕
食する天敵だという。あれが、と驚いた。あまり遭いたくないのだがこれからは大事にしなければならない。