手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

手技療法の基本は「握手」その3≪相手の感じ方について-2≫

2012-09-15 20:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
一体感を持つということはどういうことでしょうか?


まだピンと来にくいという方もいらっしゃるかもしれないので、もう少し他にもヒントになりそうなことを探してみましょう。


≪過去記事の「手技療法習得へのステップ1‐リラクゼーション その2」も合わせてご参照ください。≫





みなさんが、地面の上に立っているときのことを考えてみることにします。


そのとき地面を押しているのではなく、地面に身体を預けるようにして立ち、余計な力は入れていないと思います。


実際に立ってみましょう。


地面と自分の身体との境界を、はっきりと感じることができるでしょうか?


立った瞬間はわかるかもしれませんが、そのうちどこが境目かはっきりわからず、ボンヤリしてくるのではないでしょうか?


これが一体感を持った状態です。





まだピンと来にくいでしょうか。


では地面に立っていて地震が起きたとき、みなさんはどのように感じるでしょう。


はじめに「あっ!地面が揺れている」というように対象を認識し、「地震だ!!」と思うでしょうか?





このように他人事のような余裕のある感覚は、きっと持たないはずです。


そうではなく、自分自身の身体が揺れていると違和感を持ち、「地震だ!!」と思うのではないでしょうか。


地面が揺れているのを、自分自身が揺れている体験として感じ取っている。


それは、地面と一体となった感覚を持っているからではないかと思います。


ふつうなら安心して身体を預けていられ、一体感をもてるはず地面が、地震によってそうでなくなったとき、私たちは自分が違和感を持つわけです。





治療を行う上でも、相手の身体に自分を預けて一体感を持つようにすると、異常がある部分に触れたとき、安心して預けられないような違和感を覚えます。


前回もお話しした、対象との隔たりですね。


この違和感は決して特殊な感覚ではなく、持って生まれた本能的なもの、もしくは過去の経験から学習して身につけたものでしょう。 




違和感を例えるなら、ちょうどぬかるんでいる地面やすべりやすい地面に足を乗せるような感覚です。


みなさんはすべりやすい地面に足を置いた時、はじめに何ともいえない変な感じを経験するのではないでしょうか。


次いで、少し動かすなどして対象に働きかけ、道が凍っている、廊下が濡れているなど、過去に経験し学習したものと照らし合わせてよりはっきりと認識していくわけです。





触診も同じように、はじめに違和感を持ち、次いでその違和感が何なのか、「硬い」とか「腫れている」というように、より具体的に判別します。


それから解剖学的知識や培った経験に基づき、どの組織が機能障害を起こしているかなど、より詳細に判断していくわけですね。


違和感を持つことは、細かな異常部位をスピーディーに見つけるためのひとつのポイントだと思います。





ベテランのセラピストが少し触診しただけで、「小円筋が緊張している」とか「C5に右側屈制限がある」とあっという間に指摘するところをみると、初心者の方は驚かれるかもしれません。


でもそれは不思議なことではなく、触診により違和感を感じるところからスタートして、対象を識別するまでのスピードが初心者と比べてと早いだけです。





学習によって身につく違和感、対象を識別するスピードは、トレーニングによって少しずつ早くなっていきます。


鍛えて経験を積み重ねていくことで、異常なものをまず違和感として認識できるようになります。


そして解剖学の理解が深まるにつれ、対象をより明確に識別できるようになります。


天才的な人を除いて、ふつうの人があっという間にできるわけなどありません。


練習あるのみです。


少なくとも私はそうしてきました。





というわけで触診の感覚というのは「音楽家の耳」「料理人の舌」のように、ふつうの感覚を鍛えていくだけです。


あくまで私たちが日常で感じている感覚の、延長にあるものだということを忘れないでください。


そう簡単に言っても、感覚を磨いていくのが大変なわけですが





相手に触れるときは、握手するときのように一体感を持って触れ、変調のある部位を自分の違和感として感じとること。つまり共感すること。 


これが、触診による感じとり方の基本であり、今回のシリーズ「その1」で紹介した、増永先生の書籍から学んだなかで私がとくに大切にしているところです。





ちょっと漠然とした話になったので、最近この手技療法の寺子屋ブログをご覧になり始めた方は「では、具体的にどのようにして練習して学習し、経験を積んでいったらいいの」と思われたかもしれません。


具体的な内容については、これまで寺子屋ブログで紹介してきたので、過去の記事を参照してくださいね。


次回ももう少し感じとり方についてお話ししておきたいと思います。




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