「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

医師から癲癇の診断、指圧の効果に期待を

2009年05月01日 | 素晴らしい指圧効果
  少し前の話になります。3月17日の夕方、小学5年生の女の子Yちゃんが、お母さんに連れられて来院しました。
「こんにちは」 
  きちんと挨拶のできる、いかにもしっかりした感じの利発そうなお嬢さんです。あらかじめ、彼女のお祖母さまから相談を受けていたので、どんな女の子かしらと待っていたのです。  

 お祖母さまの話では、昨年8月22日に自宅の居間でYちゃんと一緒にいるとき、突然数分間意識を失ったといいます。軽い痙攣と硬直があったそうで、心配になり病院で受診したら「テンカン」と診断されました。脳波にも異常が認められたため、抗テンカン剤が処方されたそうです。  

  ここまでは普通の話なのですが、このお母さん、どうしてもその薬を我が子に飲ませたくないということで、そのまま服用させずに日時が経過していました。 
  3カ月後の11月27日、自宅でまた発作が起きました。前回と同様、医師に診てもらったところ脳波にも同じく異常が認められたため、再度抗テンカン剤が処方されたそうです。 
  昨年暮れから、お祖母さまからこの件について再三相談は受けていたのですが、多忙にまぎれなんとなくそのままになっていました。  

 今年3月4日、3度目の発作が学校の授業中に起きてしまいました。音楽の時間に大きなスピーカーのすぐ前に座って、クラシック音楽鑑賞の最中でした。突然椅子から倒れ落ちたそうです。この時の発作はかなり強かったらしく、ひどい痙攣と硬直があり、口から泡も吹いていたそうです。この直後も、やはり脳波には異常が認められたそうです。 
 テンカンの発作は突然起こります。時と場所を選べないのですから、安全のためにも、ここまでになれば抗テンカン剤の服用も止むを得ない、と誰もが思うのではないでしょうか。学校側では、何人かいる同じ症状の子供達は、皆薬を飲んで発作が起きないように対処している、と説明したそうです。  

  さっそく鈴木林三先生に指導を受けました。指圧におけるテンカンへの対応は、実はやってみなければ分からない、というのが本当のところだそうです。ただしやった分だけは確実によくなるから、仮に完治しなくてもプラスではある、と。  
 時々指圧にみえるお祖母さまにその旨を伝え、子供の治療の仕上げとしてお母さんに指圧を受けていただくことを条件に、治療をしてみることにしました。たまたまある妊産婦さんのために用意していた時間が、先方の都合で空いたので、この時間を使ってYちゃんの治療をすることにしたのです。  

  第1回目は、本人がかなり緊張していてあまりよく圧せずに終わりました。以前、相当強い指圧を、我慢して受けさせられたことがあるといいます。そのせいでしょう、私の手がそばに延びただけで身をすくませます。これでは、さほど効果は期待できません。
 「痛いのは悪いからで、くすぐったいのはそれよりもっと悪い」と言われたそうです。彼女の足は、くすぐったがるのでほとんど圧せません。この日の治療は、痛くないことを理解できればよし! としました。 
  しかし不思議なことに、前頸部はとてもよく圧せました。前頸部、肩甲上部、肩甲間部、腋窩部、そしていちばん大事な腹部もよく圧せたのです。不思議? 子供は必要なところしか圧させない、と習った記憶が蘇りました。
  治療中、枕元でお母さんは、しきりに私に「先生は、この子を本当にテンカンだと思いますか?」と聞きます。私が「違う」と言うのを期待しているのがよく分かります。 
 私の立場では、診断を下してはいけないことをよくよく説明しました。何度か同じやりとりをする中で、どうにか納得してもらえたようです。気になるのは、ご挨拶がきちんとできるこの子が、治療中一切声を出さないことです。痛くても、くすぐったくても、必死に声を殺しています。こちらの問いかけにも首を縦か横に振るだけで、絶対に声をださないのです。それは、とても不自然に思えました。  

  お父さんの実弟にあたる彼女の叔父さんは、テンカンだったそうです。21歳の時、自転車に乗って出掛け、発作のせいなのか転倒して亡くなったと聞きました。三姉妹の末っ子のYちゃんは、今までいっさい手が掛からない子だったといいます。
  反抗期もなかったので、お母さんは叱った記憶がないそうです。どうやら姉達が叱られているのを見ていて、自分の対応を頭で考えて覚え行動していたのでしょう。どうしたらどうなるかを頭で理解し、親を怒らせないように振る舞い続けて来たようです。 
 そもそも子供は、何事も身体でぶつかって覚えていくものです。いちいちを頭で考えて行動していたら、おかしなものになっていきます。どうやら彼女は、それをしていたようです。必要以上な神経を使ってしまったと思われます。頸部、肩、背中と腹部がこちこちなのです。3回の発作は、いずれも急に気温が異常な下がり方をした日に起きています。  

  4月18日、3回目の治療時に初めてくすぐったがって笑い声をたてました。お母さんが「反抗的なことも言うようになりました」と、少し嬉しそうに報告しています。心なしか、お母さんのいつもの固い表情が柔らかくなっているのが嬉しく思えます。 
  彼女が「テンカン」であるかどうかは別として、身体が柔らかく、暖かくなってきて「子供らしく」なってきた、と感じているのは私だけではなく、お母さんがとても強く感じているようです。  

  当初「やってみなければ分からない」としてスタートしたのですが、今後の治療予定もなんとなく見えてきました。嬉しい効果が期待できそうです。 
  Yちゃんに「本当は、お母さんに指圧を受けて欲しいネ!」と聞いてみました。
 「ウン! ウン! ウン!」 
  彼女のうれしそうな答えが返ってきました。お母さんと子供は運命共同体、とくに年少のときはお母さんの体調が子供に影響を与えるのです。指圧でお母さんの体調が整い、やさしく接してあげることで、Yちゃんの病状もより改善されるはずです。
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