Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

HPがPalmを買収した理由

2010-04-29 23:02:06 | Thinkings

 私はかつて、Palmユーザーでした。正確に言えば、Palm OSを搭載したソニーのCLIEユーザーでありました。グラフィティという手書き入力による、素早い文字入力は、携帯電話大モバイルデバイスにおける、最適な文字入力方式の一つだと思っています。

 残念ながら、日本ではソニーの撤退と共に、Palm OSの火は消えてしまいました。(私はCLIEの代わりとしてiPod touchを買ったのです)本国アメリカにおいても、ブラックベリーやiPhoneに押され、もはや絶体絶命の危機に瀕していました。その時、起死回生の一手として用意されたのが、完全新作OSであるwebOSでした。その前評判はゼロに等しかったのですが、実際に触ってみたレビュアーの評価は総じて高く、「完全版iPhone OS」との声も高かったのですが・・・時すでに遅く、販売拡大には至りませんでした。

 そのPalmの身売り話が出たのは、以上の経緯を踏まえると不思議でも何でもありません。次の興味はその身売り先。スマートフォンメーカーのHTCやLenovoというアジアメーカーが噂されていましたが、結局はHPに落ち着いた模様。買収の意図は、もちろんwebOSのようです。

HP、webOSへの投資を拡大。スマートフォン以外にも採用 engadget

 HPは Palmの特許などIPを獲得するだけでなく、Rubinstein 率いる現Palmの開発チームのもと、R&Dへの投資をさらに拡大しwebOSの開発を続行します。Pre や Pixi といったPalmの現行製品ロードマップも維持し、さらにHPが持つスマートフォン以外の製品カテゴリ (タブレットなど) へ 将来のwebOSを「スケールさせる」ことが強調されています。
 つまり「webOSの先進性は評価されたものの資金難と販売に苦戦した Palmがとうとう吸収されて消滅」と表現するよりも、OS含むソフトウェア・ハードウェア・サービスを統合して提供できるPalmの優位と、HPの資金および製造・販売能力の相乗効果でスマートフォンやタブレットなど拡大するモバイル市場を狙うことが目的です。

 ところで、なんでAndroidではなくwebOSなんでしょうか?これまでパートナーとしてつきあいのあったマイクロソフトのWindows Mobileはどうするんでしょう?・・・と言うのが大方の自然な疑問だと思います。それについて質問があったようですが、なんというかはっきりと名言は避けた模様。ただ、webOSの開発を続けていく理由としては、「ユニークなユーザーエクスペリエンスを提供する事で、他との差別化を図っていきたい」ということ。確かにwebOSを扱える・・・いや、扱っているのはPalmだけですから、それを受け継いだHPが自社製品にのみ搭載するという戦略を採るならば、「webOSが使いたければHP」という形になります。その路線はiPhoneで実証されていますから、「型にはまれば」一連のwebOS製品群による独自のエコシステムを構築することで、市場を創り出すことが出来るでしょう。そこにしかない、というのは意外なほど大きなプレミアムです。
 近頃は、DellもASUSもタブレット事業参入に躍起になっていますけれど、HPはある意味、この上ない武器を手に入れたんじゃないでしょうか。

 今後、HPには「ソフトウェア開発者を囲い込む」「対応デバイスを用意する」「より魅力的なCMを打つ」など、webOSを広めていく上での課題が散在しています。それでも、そうまでするほどにwebOSというのは魅力的なOSなんでしょう。日本にはまだ影も形もないプラットフォームですから何とも言えませんけれど、これで日本にもwebOSが上陸する可能性が高まった訳ですから、結果的には喜ぶべき事なんでしょうね。・・・日本のメーカにもこういう動きが欲しいなあ・・・