Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

ヘッジファンドは何故目の敵にされるのか

2007-05-20 21:15:55 | Thinkings
 本日はちょっと趣向を変えて、経済の話をします。いつもはテクノロジー系の話題が中心のこのブログにおいても、ちょっと無視できない話だからです。

G8財務相会合 ヘッジファンド監視強化 独同意 直接的規制は見送り Sankei Web

 独ポツダム郊外で開かれている主要国(G8)財務相会合は19日、巨額の資金を投資するヘッジファンドの監視の強化などを盛り込んだ共同声明を採択して閉幕した。直接的な規制は見送られたものの、ヘッジファンドに資金を供給している投資銀行などを通じて監視することで一致した。

 ヘッジファンドとは、主に個人から私的に出資を募り、出資者の代わりにファンド主催者が資金を運営、利益を出資者に還元するという「金融商品」のことです。
 ではなぜ、G8で一介の金融商品を規制する話題が出てくるのでしょうか。

 理由は二点。
 ・運用資金が巨大であること
 ・私的という性質が強いため規制がゆるいこと

 まず1点目は、運用する金額が桁違いに大きいことです。
 運用する金額が大きければ大きいほど、市場に与える影響は大きくなります。例えば、会社の買収を行ったり、保有証券を一斉放出した場合、市場はそのファンドに振り回され、株価の大幅な変動を招きます。

 しかし、大きな資金源を持っているのは通常のファンドも同じ事。しかし、通常のファンドがそれほど脅威と見なされないのは、運用の規制にあります。
 通常のファンドは運用方法や情報開示が義務づけられており、市場に与える影響が最小限に抑えられるようになっています。しかし、ヘッジファンドはそれらの規制が圧倒的にゆるいのです。

 先の2点目に上げたとおり、ヘッジファンドは「少額の資金」をかき集める「公的」なものではなく、「巨額の資金」を少人数から募る「私的」なものという性質を持っているため、いくら巨額な資金を背景にしていているとは言え、現在のところ政府が介入できないというわけです。

 わかりやすい例を出すと、先日捕まった村上ファンドが上げられます。村上ファンドはライブドアと共謀、というか、ライブドアをそそのかしてニッポン放送を買収しようとしましたが、これもヘッジファンド故の規制の緩さが招いたものです。

 要するに、ヘッジファンドを野放しにしておくと、ライブドアショックの様な事件が起き、市場が混乱するから規制しましょう・・・ということです。

 とうぜん、テクノロジー市場についても、ヘッジファンドに将来有望な企業が潰される何てことは起こりえますし、ソニーやエルピーダメモリの買収を企てる何てことも当然考えられるわけです。

 今の国際経済は、事実上株式市場に支配されているとっても過言ではありません。ヘッジファンドは、言わば影の実力者。一部の富裕層の為に市場が引っかき回されるのは大変面白くありませんので、規制すべきという考えは非常によく分かりますし、一方、市場に任せるべきという日米の考え方もまた、分かります。
 なんにせよ、監視という一歩前に進んだところで合意できたのは評価できると思いますよ。