ON THE ROAD

適当に音楽や映画などの趣味についてだらだら

『サメデター』

2023-01-06 20:33:01 | サメ映画
とうとうサメ映画というカテゴリーを作ってしまった。最近サメ映画三昧だからもっと観ているかと思ったけど数えたら思ったほどであった。

U-NEXTを徘徊していたらこの映画に出会った。みどころには下記のような記載がある。
ダスティン・ファーガソン監督が、近年のサメ映画としては逆に珍しい“海に出るサメ”の恐怖を描く。お色気あり、裏切りあり、背びれありのエンタメ作品に仕上がっている。

ふむふむ、最近奇をてらったサメ映画ばかりだから、たまには伝統的なものも観たくなる。さぞかし「こういうのでいいんだよ」という仕上がりになっているかと期待したら、これがとんでもないシロモノであった。

毎回ボロクソ言っているが、なんだかんだで造り手へのリスペクトはある(と思いたい)。それがどんだけしょぼいCGであろうと、着ぐるみ感満載のサメの造形であってもだ。

しかしこの映画は許されない。肝心のサメ及び水中シーンは、どっかの海洋ドキュメンタリーから拝借したようなもの。明らかにその他のシーンとは乖離がある。他のシーンは家庭用のカメラで撮ったクオリティだもの。
結局撮り下ろしのサメの映像はなく、登場人物が陸でわちゃわちゃしているうちに物語は終わる。何一つ得るものがない映画だった。一応お色気シーンはあるけど、期待していたほどのものではない。

『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』

2023-01-05 22:03:11 | 洋画
世の中何事もバランスというのが大切で、ニールの西部劇である『デッドマン』を観たらディランの『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』も観なければ。
サントラは持っていたが、観るのは初めて。

何よりもまず言いたいことがある。タイトルに21歳とあるが、ビリーを演じたクリス・クリストファーソンが21歳に見えない。事実、このとき彼は30代後半だったようだが、だったらこんな年齢を強調するようなタイトルにするなよ。
一方ライバルのパット・ギャレットを演じるジェームズ・コバーンも40代半ばながら老けて見える。まあ、もともと老け顔な上に役作りもあったのかもだが。

ビリー・ザ・キッドというと英雄的なイメージがあったが、この映画ではそこまでのキャラに思えなかった。ひょっとしたら史実的には正しいのかもだが、物足りないものがあった。むしろジェームズ・コバーンの方がはるかに渋く魅力的ではあったが、この二人のアウトローの対比は物語の核とも言える。
アクションシーンも盛大なドラマティックさはないものの、ペキンパーらしい生々しさはあった。

音楽を手掛けたディランも出演している。この時すでにシンガーソングライターとして名を馳せていたが、初々しく(棒読みで)演じている。
比べるわけではないが、ニールのサントラの良さがあらためてわかった。楽曲としての良し悪しとサントラとしての良し悪しはまた別なんだな。

『デッドマン』

2023-01-04 14:33:05 | 洋画
実は一番好きなギタリストというとニール・ヤングだったりする。ヘタウマなんて評されがちだが、とんでもない。彼ほど美しい音を出すギタリストはいないぞ。
先日ニールが音楽を手掛けている『デッドマン』のサントラを買ってすっと聴いていたら、映画の方も観たくなった。一応15年くらい前に観てはいたが、全然記憶に残っていない。

今でこそジム・ジャームッシュの映画にジョニー・デップが出演しているというのは違和感があるが、当時はそういう俳優だったんかな。
全編モノクロの西部劇だが、しずか〜な映画だね。でもそのおかげでニールのギター美しく響く。

ただ、面白いかと言われるとそうでもないかな。でもスピリチュアルな雰囲気は嫌いじゃない。ロードムービーでもあるが、呪われたような感じ。また15年くらいしたら観たいな。

イギーがどこに出ているかわからんかったが、女装した奴がそうだったのか。

『モームの謎』 行方昭夫

2023-01-03 20:57:08 | 


モームは好きな作家なので著書だけでなくこういう本も読んでみようと手を出してみた。しかし、タイトルが昔に流行った『磯野家の謎』彷彿とさせていかん。中身はモームの翻訳を数多く手掛けている行方さんなので間違いないが。読み方を「なめかた」というのは初めて知った。

本の内容はモームの人生を作品とクロスさせて解説している。モームは自身の体験を作品に反映していることが多く、モームの生い立ちを知るというとは作品を読む上で大いに役立つ。特に代表作でもある『人間の絆』は自身の伝記的作品とも言われているから。
しかしながら、読んでない作品に関してはネタバレにもなってしまう。モームを全く読まずにこの本を読む人はいないだろうが、ある程度読む必要はある。私も積んでいる『サミング・アップ』を読んでから読めばよかった。

一方で作品を読んでいるだけではわからないことを知ることができるのは多い。私の大好きな『お菓子とビール』のロウジーのモデルも解説しているし、モームにとって医者としての経験が大きかったこともわかる。ただ、『人間の絆』のミルドレッドのモデルは未だに不明らしい。
モームが諜報員だったのは有名だが、グレアム・グリーンも諜報員をやっていたんだね。丁度並行して『ブライトン・ロック』を読んでいたから驚いた。

最後にモームと著者の架空の対談が載っているが、お人形遊び感があって薄ら寒い。モームの発言に矛盾がないにしても、本文と重複するし必要性は感じられない。著者が脳内モームに「君は凄い」って言われたいだけなのかな。

『無名』  沢木耕太郎

2023-01-02 20:30:09 | 


今は地域的な理由で聴けないでいるが、学生時代はクリスマスイブの夜は沢木さんのラジオ番組「MIDNIGHT EXPRESS 天涯へ」を聴くのがお約束であった。
10年ほど前だが、その番組の中で沢木さんが自身の父親の俳句を紹介し、それがずっと自分の心の中に残っていた。その句というのが、「差引けば 仕合はせ残る 年の暮」である。俳句には全く明るくない自分だが、その句の庶民的な奥ゆかしさに親しみと憧れを抱いた。

作品は沢木さんの高齢の父親が亡くなる前後のことを描いている。親の死というのは誰にでも訪れることで、当事者には少なからずドラマがあることだろう。しかし、当然ながらそこには、それまで築いてきた親子関係というのがあってこそのもである。
作中でもの述べられているが、沢木さんと父親のやり取りは非常に他人行儀に感じた。でも、そこにはお互いへのリスペクトを感じることができる。無名ではあるものの読書人であった父親を沢木さんは尊敬していたし、物書きを諦めた父親は作家となった沢木さんをまたリスペクトしていたことだろう。

そんな沢木さんの父親はどういう人かというと、自分の名を残そうとかという自己顕示欲とは程遠い人間であった。そう考えると、私が上記の句を聴いたときに感じた「奥ゆかしさ」というのは的外れではなかったのかと思う。たっと17字に人柄が出るとは俳句も面白いものだ。
また、俳句を一時辞めてもいたのだが、その理由も興味深く、引用させていただく。

俳句というのは、溢れるものをあの短い詩形に押し込めるために無理をする。押し潰し、削ぎ落とす。だが、その無理をすることで、逆に過剰になってしまうものがある。歳をとるごとに、その過剰さが鬱陶しく思えるようになってしまった

私は有名所の句を受け取って、その洗練に感嘆するだけだが、これは実際に俳句を詠む人にしかわからない悩みだろう。でも言わんとしていることはわかる。

この本を読むと自分と親のことを重ねてしまうことだろう。私は30代前半で両親も60代と沢木さんとは状況が違うが、必ずいつかはこのような日が来る。別に不仲ではないが、2年近く両親に会っていない私にも、もっと会っておけば良かったと後悔する日が来るのかな。