本日の朝日新聞朝刊の森治文氏の署名記事で標題のような見出しで記事が掲載されておりました。
-以下引用-
「世界の風力発電の総出力は昨年末で約2億3800万キロワットに上り、10年間で10倍になったことが分かった。横ばい状態の原発とは対照的で、今の伸びが続けば、5年以内に逆転しそうな勢いだ。」
-以上-
記事は引き続き、世界風力エネルギー協会によるデータを紹介していきます。そういった意味では、事実を指摘しただけの記事で、そこに書いてある内容は事実なのでしょう。ですが、読み方によっては、後5年もすれば原発に追いつき、追い抜くような印象を与えるのではないかと思います。即ち、風力発電がこのまま伸びれば、原発依存度を下げることに繋がるのではないか。あるいは、原発に依存することない近未来に繋げられるといった楽観を与えているようにも思えます。
しかし、ここには意識してか無意識にかは分かりませんが、発電量に関する内容が欠落しております。確かに出力はその通りなのでしょう。実際に大切なのは、風力発電によって作り出される電力量(エネルギー)です。発電する能力は高くても、実際に発電できなければ意味がありません。例えが悪いのですが、原発はあっても実際に稼動させなければ電力は生まれません。風力発電設備がいくら沢山あっても風が吹かなければ何の役にも立ちません。以前、つくば市の小中学校に設置された風力発電機が期待を大いに裏切り、大問題になったことは記憶に新しいことだと思います。
欧州などのように、常時風が吹いているような地域では、有効に発電できるでしょう。発電量は当然の如く立地条件によって大きく左右されます。日本において、風力発電が伸びていないのは、そのような地理的条件があるからに他なりません。
今回の記事は、出力ベースでの話ですので、それ自体は何ら問題はないのですが、一般的には「電力と電力量」の違いを明確に説明できる方は少ないでしょう。新聞は社会の公器とも言われます。ここは、いらぬ誤解を与えないことが大切なのではないかと考える次第です。
<参考> 「電力と電力量」