眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

魔法のお茶

2022-12-29 07:32:00 | グレート・ポメラーへの道
素敵な note ですね!

さて本題に入らせていただきます。
私は九州の方で美味しいお茶を作っております。
読ませてもらったお礼と言っては何ですが、今なら通常価格不明のところを特別限定価格初回に限り最大で0円にてご提供させていただけることになりましたので、いますぐご注文してください!
なお、翌月からは前金で最小で2万、他に別途サービス料(時価)、翌々月からは更新料として総額最小で1000円(時勢によって変動の可能性あり)をお支払いいただくものとする。(なお、これには一切の例外は認められない)


 素晴らしい提案に乗って僕は迷いなくお茶を注文した。お茶は美味しいことは言うまでもなく、飲むだけで体が軽くなるようだった。一日の始まりから食事の友から、お茶のない日常は考えられなくなった。辛いことがあって落ち込んでしまいそうな時でも、お茶を飲むことによって乗り越えられる。本当に素晴らしい出会いだった。最初はただでよかったものの、翌月からは馬鹿にならないほどの代金が必要となった。通常の食費にも匹敵するようなお金だし、それでなくても物価はとめどなく上昇し日々の生活を圧迫しつつあった。僕は働き方を変えなければならなかった。


 路上に出て自転車を漕いでは食事や酒や医薬品や雑貨を見知らぬ家に届けてまわった。その報酬は1件あたりがだいたい300円であり、1キロでも3キロでも5キロでも6キロでも10キロでも、どこまで行っても、雨降りでも、暴風でも雷でも真冬でも深夜でも、揺るぎなく300円だったが、希に調整されて301円になることもあった。(自転車でなくバイクの場合はこれが基本400円あるいは500円だったりし、これはバイクが自転車よりも優れた乗り物としてリスペクトされているためだろうか)
 路上に出てみれば様々なハプニングがあって、ただAIの導き出したルートに従ってバーガーやベーグルを運んでいればよいというのは、大きな間違いだった。逃げたマルチーズを追いかけて捕まえたり、眼鏡を落として困っているおじいさんを助けたり、沼にはまって身動きできないおばあさんを助けたり、モンスターをたずねて迷っている小学生を助けたり、人のためにやるべきことはいくらでもあるのだった。

「スカイオはどこですか?」

「この道をずっとまっすぐです」

 50キロの道を走り疲れ切っていた僕は時として小さなうそもついてしまった。道に落ちていた釘を踏むとパンと弾けてアカウントを見失った。気がつくと僕は自転車を降りて、危ない道を歩いていた。


「息子さんがYouTubeに上げた論文が問題になってましてね。事もあろうに宇宙の起源を握りつぶしてしまわれた。それで先方の方がかなりお怒りでして、今広報の方に代わります。どうも宇宙広報の者ですが、このままでは収拾困難な事態なのです。そこを私どもの必死の交渉でですね、少し話をさせていただきまして、解決策としてある程度の餅を用意していただきたいと思います。よろしいですか。これよりドローンに乗ったおじいさんが、受け取りに参りますので、迅速な受け渡しの方よろしくお願いします。息子さんは元より人類の命運に関わってきますのでくれぐれも他言はせぬように……」
 と、まあこんな調子でテレホン・アシストの仕事をしているとエイリアンがきて僕の首根っこを捕まえたので目を覚ました。


 まもなく僕はキッチン・スタッフの仕事についた。運ぶ人から作る側になったというわけだ。
「15番、ラッキーストライクですね。780円ちょうどいただきます。ありがたーす!」
 意外と僕は接客も上手くできた。
「君! レジに入らなくていいから!
それは他の人がいるから」
 調子に乗っていると店長に怒られてしまった。
 そうだ。僕はキッチン・スタッフ。レジ係ではないのだ。

「すみませーん!」
 すみませーん!
 すみませーん!

 誰かが誰かを呼んでいる。
 僕はここで地に足を着けながらお茶のためのお金を稼ぐのだ。ああ、早く家に帰ってお茶を飲みたいぞ。お茶だお茶だお茶だお茶だお茶だお茶だお茶だお茶だ。お茶があるから僕は元気です。
 す・み・ま・せーーーーーん!
 他の人はどこから現れるというのだろう。

「すみませーーーん!」

「はーい!」

 駄目だ。やっぱり知らんぷりは苦しいよ。


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