眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ありがとうが言える

2022-03-17 02:37:00 | デリバリー・ストーリー
ありがとう言える大人になりたくて涙を呑んだ300

客じゃない見切れば礼も笑みも欠き注文番号聞くだけのこと

ありがとう1つ忘れた駅前をよぎる信号無視の塊

ありがとう聞いて踏み出す階段の4階くらい何も言わない

ありがとう聞けない夜に慣れていくエントランスの自動解錠

確率にそっぽを向いて雨粒が落ちるスマホに300

「ありがとう♪」
胸に響けば大丈夫 自転車今夜空まで飛べる

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ショート・ラブ(申請社会)

2022-03-17 02:28:00 | ナノノベル
「好きになってもいいですか?」

 最初に通知が届いた時は舞い上がってすぐに許可を押したことを覚えている。毎日のように好きの申請は届いた。はじめの頃はただうれしくて、「いい」の他に選択はなかった。私の存在が大きくなるにつれ好きになる人は増えていった。1日に数人だったものが1時間に数十人を超える頃には、疲れを覚えた。(自分の気持ちに責任をもてなくなった)
 私は好き申請を放置するようになった。申請は続けてあったが、不思議な発見もした。申請中の赤い表示が消えている。3日前に申請された好きが取り下げられていた。その後の経験からそれもそう珍しいことではないと知った。(人の思いも3日まで)それが現代社会の潮流なのか。

 人の心に入るのは苦手な私だが、たまに自分の方から好きになることもある。3日前に申請した好きはまだ許可されていないようだ。私は明日も明後日も待つだろう。だが、そのあとは……。
 ログアウトしてまた新しい街へ向かうかもしれない。

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金の力で逃げ切りをはかる

2022-03-17 02:14:00 | 将棋ウォーズ自戦記
 三間飛車にすると相手は飛車先も突かずに右四間飛車に構えてきた。四間飛車ばかり指していた頃、何度も撃沈されたことを思い出す。ゴキゲン中飛車をしていた時には忘れていたが、三間飛車にするとたまに見かけるようになった。僕は美濃に組み三間飛車の飛車先を伸ばした。三間には三間の対策があるのだ。相手はあまり玉を深く囲わずいきなり歩をぶつけて仕掛けてきた。それには同じく歩と応じる。すると相手は同じく銀と銀を進出してきた。僕は角を交換して飛車の頭に歩を打った。狙いの一手だ。一段金のため生じている。対して飛車を横に動けば攻撃力がなくなり、出た銀を目標にしてさばいていくつもりだ。

 相手は飛車で歩を食べて攻め味を残すことを選んだ。僕は飛車の守備が消えた敵陣に角を打ち込んだ。相手は銀をグイッと前進させたが、さほど脅威ではない。僕は香を食べて馬を作る。すると相手は金を寄せて桂を守ってきた。僕は飛車筋の歩を突き出し、同じく歩に対して香を打って飛車を捕獲した。よろけた飛車を馬で食べ香を成り込む。相手は桂を跳ねてきた。中央に銀桂が集中してちょっとした不安材料だ。僕は金取りに飛車を走り、金が逃げた手に更にもう1枚の飛車を打ち込んだ。

 王手だ!
 一見調子がいいようにみえて甘い順だった。ここは何もせず、すべてを含みにじっと成香を寄って玉に近づけておく手で、脅威に感じた成香を歩で追ってくればそこで飛車を走る。金を逃げれば成香を捨てて王手桂取りに飛車を打ち込む手が成立する。それなら相手の玉を危険地帯に出すことができる上に、せっかく跳ねた桂を抜かれては唯一の反撃手段を失い相手も気持ちが折れるというものだ。

「すぐ飛車を打ち込むな」

 飛車を手にするとすぐ敵陣に打ちたくなる人は多いのではないだろうか。駒を回収できたり攻撃の起点になったりして、それが有効手になることは実際に多い。だが、底歩で止められたり金ではじかれ逃げ場がなかったり、注意すべき時もある。また、持ち駒というのはできるだけ長く持っていた方が、使う場所やタイミングを選べるという利点もある。より玉に近い場所、あるいは逆サイドに打つことも可能になる。持ち駒は駒台で温め、先に盤上の駒を活用する手を視野に入れることも重要だ。

 相手は飛車の王手に対して歩を打って受けた。それは成香で払うことができた。そこで金を玉の方に近づける。一歩を犠牲にして攻撃を渋滞させ時間を稼ぐ手筋なのだった。僕はその価値を軽くみたままじわりじわりと成香を活用して二枚竜を作った。(最短で玉に接近する順を逃し成香が遠回りになってしまったことがこの将棋の最初の問題点だった)

 相手は攻防に角を打ってきた。攻めては銀桂の利きに数を足し、受けては成香の進出を阻んでいた。僕は不動のまま眠っていた左銀を上がって中央の補強に当てた。緩手だ。足してもまだ数が足りていない上に、銀頭に歩を打たれてその応接にまた悩まなければならない。(好んで局面を複雑にしている)余計な手順の間に相手の持ち駒に金を渡したことが大きなマイナスだった。

「時には単純明快に」

 形勢がよい時には勝ち方が何通りか存在することがある。よい時には、話をなるべく単純化した方がよい。(最善最短であるかは別に問題ではない)ごちゃごちゃした形・展開であるほど人間は間違いやすいものだ。
 銀上がりは遊び駒の活用として格調の高さは認められるものの、局面を複雑化して相手に手段を与えてしまった罪の方が大きい。
 攻防の角に対しては歩を打って単純に角の守備力のみを遮断する手が勝った。そうすれば相手は中央から殺到する他に手段がなく、あとは成香を活用していくだけでいい。美濃囲いにはなかなか詰めろがかからず、成香で金を1枚はがしてしまえば二枚竜に対する受けはなくなる。

 明快な順を逃がして自陣でごちゃごちゃと相手をした。桂頭に歩を打って角の攻撃力を遮った。すると相手は自陣にいた成香を角で食べた。
 大きな駒損だ!
 同じく竜に対して今度は自陣に金を打ちつけた。あっという間に金三枚の要塞ができた。二枚竜と言えども容易でない。
 あまりの堅さに恐れをなして僕は竜を中段にまで引き上げた。
 撤退……。
 戦力を自陣に使い果たし、相手の攻めは切れている。形勢は大優勢から必勝に近いと言ったところ。しかし、そんなことは関係ない。

(寄らなければ……)

 僕の方が時間が切れるに決まっている。
 成香を食べた手はただの駒損ではなかった。攻撃の種駒を抜き拠点を減らし、逆に自陣の駒を多くして寄せを遅らせるという終盤の手筋だったのだ。終盤の入り口での歩の犠打が将棋の手筋なら、この馬の犠牲も終盤の手筋に違いない。但し、こちらの方は(遅らせる=時間を引き延ばす)という切れ負け将棋ならではの価値に重きが置かれていたと言える。

 残り7秒……。(相手はまだ1分以上もある)
 金が密に並んだ敵陣をみつめながら、僕は投了をタップする。

「負けました」



~1秒でも勝てないことはない

 3分切れ負けのような特別に短い将棋では、勝ち味の早さを身につけることも重要だ。
「将棋はよかったけどな……」
 必勝の形勢を作りながらも時間に泣いている人も多いだろう。
 1秒の間に3手も4手も指してしまう達人も存在するようだが、なかなか真似のできない芸当と言える。スピードで勝てないからと言って、全く勝ち目がないわけではない。将棋の手数はだいたい決まっている。普通に行けば100手ほどで終わるのだ。無駄な回り道をしないことによって、指し手のスピードに対抗することは可能だ。1手1秒を超えるペースで指しても、大きく止まらなければ勝てない理屈はない。
 手数もテーマにしながら指してみることにしよう。(なるべく長手数にならないように)
 最短ルートにこだわること。受けすぎないこと。迷ったら前に進むこと。決め手を逃さないこと。大事にいきすぎないこと。無駄に複雑にしないこと。飛車を取ること。受けるなら根こそぎにすること。寄せ合いを目指すこと。一手勝ちを見切ること。必至をかけること。

 切れ負けには、戦力不足に陥っても自陣に駒を埋めて寄せを遅延させたり、無駄な王手をかけることに寄って相手の秒を削るなど、特有のテクニックが存在する。ある意味それは裏技のようなもので、10秒将棋となるとまるで無意味だ。
 速さに特化してゲーム上の勝利を追求するという方法も考えられるが、勝ち味を早める(切れ味を高める)という方が、他の条件でも応用が利き、将棋が強くなるためには有効なのではと思う。

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