眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

【短歌】早指し道場

2020-09-28 15:49:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
朝一の戦果を求め早繰り銀 駒組なんてやってらんねえ

おじさんは大橋流より二刀流 並ぶや否や初手5八飛

行き急ぐ早繰り銀を迎え打つ変則四間飛車の三段

メシだけを食うのは惜しい豪腕の片手はきつねうどん中飛車

投了の一手を読んで長考に沈む頭に光る金将

勝負師が相手の腕を読み切って大無理筋が通る道場

玉頭に反省文を置きながら油断に乗じまくる老将
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蟹とイノセンス

2020-09-28 12:31:00 | 夢追い
「出た!」
 と思って身を引いたけれど、出たはずの場所には何もいない。自分が下がればそれに応じて少しだけ動くもの。見えるもの、感じられるもの。それは自分の影だった。恐れが影を魔物にする。危機は去った。縦に動いたので今度は蟹が食べたくなっている。ならば森へ向かえ。

 リスや鹿と友好を深めながら、世相を語れ。世間を絶て。木々をかき分けよ。猫よりも高く登れ。木漏れ日に迷え。未来へ向いて汗をかけ。水を求め、仙人に会え。遠く離れて、憧れを抱け。憧れを置いて、多くを学べ。木々を集めて海を描け。森のすべてを味わい尽くせ。それからのこと。それから渡るべき蟹。

「本当の仙人は私じゃない。あの木の上の猫に似たものさ」
「似たもの……、それは」
 木から落ちてきたそれを受け止めるとお礼にとっておきのイノセンスをくれた。
「困り果てる前にこれを振るのだ!」
「ありがとう。仙人さま」

(もう蟹に飢えてはいない)

 余裕を持って手を伸ばすと指先を噛まれた。
「放せ」
「よこせ」
 自分かわいさから貼り紙に逆らって餌を投げた。
「もっと骨のある奴をよこせ」
 持ち合わせのクリスピーは犬の心に刺さらなかった。
「向かい風のような抵抗を俺によこせよ。すぐに溶けるようじゃつまらないだろ。難解な骨のパズルを解きたいんだよ。俺たち犬にとっては、少しの苦労こそが楽しみに当たるのだから。生き物って奴はね……」
「くらえー!」
 僕はここぞとばかりにイノセンスを振った。一瞬、犬はたじろいだように見えた。

「ゴーホーム!」
 その時、どこからともなく強い風が吹いた。それはイノセンスが犬に与える攻撃を吸収し無力化してしまう。
「ふっ、骨ほどにもない奴」
 骨付きを求める犬の追走を巻いて浜辺を目指した。

(さよなら、イノセンス)

 恐れからか足下がふらつくと、箪笥もないのに箪笥の角が現れて指を打った。今度の魔物は肉体によりダメージを与えた。
 ほぼ蟹を忘れる頃に波の音が聞こえてきた。
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躊躇いスライダー

2020-09-28 09:04:00 | 【創作note】
心が後ろを向いている時に
言葉を前に運んで行くことは難しい

直接言葉を組み立てることはできなくても
空想するくらいならできるかもしれない

縦には行けなくても
言葉を横に広げることはできる

合理的な取り組みができないからこそ
むしろ自由にイメージを膨らませたり
離れたものたちをつなぎ合わせたり
できることは案外残されているのかもしれない

前に前に書き出せてはいなくても
全く書いていないわけでもない
(書く周辺をさまよっている)

いつもいつも
前向きというわけにはいかないのだから
そういう時間を有効に使うということも
きっと大切なことなのだろう

「書けない」ということはとても苦しい
それは書くことがないこととも違う

得体の知れない躊躇いなのだ

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