超大作の上映が終わると間もなく立ち上がって出て行く人もあったが僕は目を見開いていた。主演に続いて名のある役者たち、そしてオール人類の名が流れる。1人、1人と。「あなたが出てくるのはずっと先ですよ」見え透いた嘘までついて現実に引き戻そうとする、あなたは誰でしょうか。#twnovel
いくつもの海を越え、長い飛行の末ついに求めていた色を見つけた。甘い香りに誘われるまま、羽を降ろすと欲望の限りに密を吸った。二千年後、「ひっかかったな!」花は毒のある舌で獲物を引きずり込んだ。「既に十分よくしてもらったさ」一瞬の裏切の前には壮大な幸福が広がっていた。#twnovel
1つ1つは小さな仕草だった。小刻みに人参を切ったり細かいパスをつないだりする内に大きな時間が奪われていた。「もう行かなくちゃ」僕にはまとまった時間が必要なんだ。「種は持ったの?」そう、そんな優しさが届かない場所が僕の行き先だ。「向こうに行ってから探すよ」現地でね。#twnovel
「絶え間なく惑星たちを照らし続けること。契約は40億年。20億年以内に解約した場合は違約金が発生します」熟読の上、星はサインをする。その瞬間、宇宙の片隅で甲と乙の間の正式な契約が交わされるのと同時に契約書は燃え上がった。その中から姿を現したのが私たちの祖先である。#twnovel
「行ってこい!」監督が背中を強く押し出したが今更何ができるというのか。中盤がぽっかりと空いていた。ちょうどいい。広大なスペースに落ち着いてノートを開いた。頭上をロングボールが時を惜しみながら通過していく。僕は今からレギュラーをかけた短い物語を書かなければならない。#twnovel
俺が古株だ、俺が年長だ、いや俺が1番上手い、俺が1番人気がある、俺が人望が厚い、いや俺こそがカリスマだと個々が主張する内に守備が崩壊してゴールを決められてしまうと主審はキャプテンに向けレッドーカードを出した。「俺のカードだ!」カードは新しい火種を作り出してしまう。#twnovel
「私に作れないものなど何もない!」かみさまがそう思った瞬間、キーは外れ、詩情にまで達することができなかったものが地上へ降り注いだ。不完全なものたち、生命の誕生だった。「かみさまありがとう!」天空に広がる星々を見上げながら、私たちはかみのおごりに感謝のキスを投げた。#twnovel
人が近づいてくると尾を振ってうれしそうにするが、すぐに顔を垂れてしまうのは本当に思う人ではないからなのだろう。長く一緒にいるためか電信柱は夏の終わりの夜の中で犬の毛色に染まり始めている。「やあ、待ったかい?」近づくと犬は満面の笑みを浮かべ、私の膝に飛び掛ってきた。#twnovel
なんとなく歩いていると壁に突き当たった。「おめでとうございます!」ナビが言った。「師に当たりました」今までの方法では越えられない壁は、過去を振り返り突き詰めることを求めた。自分なりの答に行き着いた時、私はおかしくなっていた。あはは、そうか。今までのは何だったんだ。#twnovel
雨のカーテンに隠れて、魂の命じるように指先の前の宇宙を打つ。無数の候補の中から導き出された言葉を決定付けるためには最後に確定キーを押さなければならない。この瞬間のために私は生きてきた。雨音に負けないように、強く強く、このキーを押すまでは、私はまだ何者でもないのだ。#twnovel
今年度に入ってから犯人を取り逃がすことが多くなった。2週にまたがっても捕まえられない、と国民からはクレームが殺到した。捜査体制に問題はないのか。「相棒が変わっていることは気づかなかった。最近は若い人の感覚についていけず、ひきこもりがちだ」あるベテラン刑事は述べた。#twnovel
今年度に入ってからゲームが終わらなくなったと多くの不満が寄せられた。調べてみると曲の進行に合わせて椅子が増え、友達の輪が広がってゆくことに原因があるとわかった。「今後はガバナンスを強化することでゲームの進行をより早めたい」ストーリーテラーは眼鏡の奥の瞳を輝かせた。#twnovel
今年度に入ってから株価が乱高下するにつれて服装やマインドも乱れ、時には取り返しのつかない暴投によって乱闘騒ぎにまで発展した。「大臣が予想以上に飛ぶと思っていた。今後は党首と連携を密にし、ガバナンスをより強固にすることで国民の審判を仰ぎたい」とある大臣は襟を正した。#twnovel
今年度に入ってからどうも戦いがねちねちしている、画面に粘り気が感じられるなどの声が寄せられた。調査の結果、いつの間にかすべての石が納豆に変わっていたことが判明。会長は本来なら蓋を開けた段階で気づくべきだが、今後はガバナンス強化により碁石の健全化に努めたいと述べた。#twnovel
今年度に入ってから手を使ったゴールが認められたり、少し高く跳んだだけで即退場になったり、判定にブレがあるとの声が多く寄せられた。チェアマンは、調査の結果、審判のアンドロイドが旧タイプのものと入れ替わっており、不祥事の責任を取って直ちに自らの椅子を低くすると述べた。#twnovel