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ジェイエスピー社員が綴る日替わりブログ

モローの教え

2012-01-30 08:46:53 | 日記
 牧羊犬を家の中で飼ってはいけない。死んだ爺さんが言い伝えてくれたわが家のささやかな家訓を守らなかったために、たまの休みにもゆっくり寝ていることが出来ない。
 わが家の牧羊犬は、働き者である。自分以外の生き物は自分が世話をしてやらなければ生きていけないと強い責任感を持って暮らしている。だから怠け者は決して許さない。牧羊犬の時間感覚はネットにつないだ時計のように正確で、10分も寝坊しようものなら、飛んできて「こら起きろ」とばかりに寝室のドアを前足で引っ掻く。
 ザリ、ザス、ドス、ザー、知らん振りをしていても止めない。仕事熱心なのである。
 
 そんな不快な音が部屋中を満たしている最中、ああ起きなきゃなと思いながら先日私はストンと夢の世界に落ちた。
 
 まだ暗く、ちょうど現実世界と同じような明るさの中、私は戦闘で破壊された建物の瓦礫を背に地面に腰掛けていた。戦闘地域である。周囲では盛んに砲声が響く。私は戦闘中隊の指揮官であるらしい。腰に拳銃をぶら下げてはいるが大型のマシンガンやライフルなどは手にしておらず、生意気にも葉巻などをくわえている。大きな爆発がすぐそばで起き、土砂が爆風で飛ばされてくる中、一人の兵士が私に近づいて来る。
 見ると『コンバット』のビック・モローではないか。私の隣に駆け込んで背を壁に付け、ヘルメットを少し上げながら「ここはかなり厳しいですね」などと言う。夢の中の私は葉巻を噛み締めながら「ああ」と相槌を打つ。「このまま進むのは危険です。一旦町外れまで退却し迂回ルートを試しましょう」モローはじっと私の目を見ながら進言する。
 ここまで来るのにどれだけ大変だったかわかって言ってるのか?ここで踏みとどまって夜明けに突撃だ!などと私は言わず、モローの目を見て「わかった。そうしよう」と言うなり右手を上げて周囲に大声で「撤退!」と叫ぶ。物陰に潜んでいた何人もの兵士がごそごそと暗がりから撤退を開始する。と、そこで目がさめた。
 
 いつものように牧羊犬を朝の散歩に連れ出し、白い息でゴジラの真似などをしながらも妙にさっき見た夢の場面が頭から離れない。モローは戦闘の恐怖から逃げ出したくて撤退しようと進言して来たわけではなかった。落ち着いた澄んだ目で、うまく前進するためには時には一旦撤退することも必要だと教えてくれたのだ。
 
 坂の上の雲を目指して前へ前へと進んで行くと坂の上の高地でしゃれこうべになってしまうことがある。歴史はそんなことも教えている。それでもなお頑張り通してくれた先輩諸氏のお陰でわれわれは今ここでこうして安穏と暮らしているわけだが、もっと別の道を試す余裕を持っていたら、今は一体どんな暮らしになっていたのだろうか。
 
 未来はどこにあるのかわからない。求めるものが何かによって、手にしたい未来は遠くにも近くにもなる。チャンスは飛びつかなければ逃げてしまうものなのか、自分のほうに引き寄せて来るものなのか。モローなら町外れまで戻ってどんな迂回ルートを試すのだろう。
 
 冷たい空気の中、いつもの散歩コースのあちこちを鼻をひくつかせてパトロールして回る牧羊犬に引きずられながら、そんなことを考えていた。口の中にはまだ葉巻の味が残っていた。(三)
 
 
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株式会社ジェイエスピー
  横浜に拠点を置くソフトウェア開発・システム開発・
  製品開発(monipet)、それに農業も手がけるIT企業
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