思い描くなら

　こんなに青い空と白い雲が毎日続く夏も珍しいように思う。外出することも多いので、移動の合間に目をチカチカさせながら空を見上げる。街には光が満ち、影が濃い。年々低下している視力でも、今年の夏は遠くまで見える気がする。ふと見える通りの向こうの路地の奥に、行き交う車や人の流れとは交わらない、妙に静かな別の世界が続いているような気がしたりする。ただ、そんな感じがしてからと言って、どうする訳でもない。行かなければならない場所があり、待っているお客様がいる。
　足を止めて向きを変え、時間が止まってしまったような妙に静かな路地の奥に足を向けたら、どんなことが起きるのだろう。

　この世界は１１次元でできている、という説があるらしい。こんな話を聞いても何のことか想像もつかない。しかし、何が起きても不思議ではない、という感触だけはある。
　路地に踏み込んだ途端、世界がゆがみ、気を失い、気が付いたら別の世界にいた、などと始めると、ここから先は、人によって大きく異なるストーリー展開を想像することができよう。

　時間をかけて練りに練って考えるならともかく、ふっと思いつくストーリーは、その人の性質をそのまま投影しているように思う。いや、ストーリーそのものを心に思い浮かべることができない人も多いかもしれない。ちょっとした妄想は抱くが、それがストーリーにまで至らない、という人も多かろう。

　できれば、明るいストーリーを心に浮かべられるようにしたい。男性と女性では違うイメージの物語を思い描くだろう。だが、異なるシチュエーションの中でも、誰かを助けてハッピーな未来を作る物語を思い描けるように試してみることはできる。
　自分の心を取り巻く様々な世界を、どう受け止めるか。思いも寄らない不思議な世界で冒険する場合も、この世界で日常を過ごす場合も、結局は自分の心の持ちよう次第だ。ハッピーは、ハッピーなストーリーを思い描ける人のところにやってくるように思う。

　青い空と白い雲の下で汗をぬぐいながら、しわくちゃの顔はせず、ハッピーなストーリーを思い描いて、ちょっと微笑みを浮かべてみよう。


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