年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

大寒の日溜まり

2007-01-26 | フォトエッセイ&短歌
厚い落ち葉の絨毯を心地良さそうに踏み散らしながら少女が歩いてくる。クッキーでも入っているのだろうか、ぶら下げた赤いボックスが揺れている。就学前の年長組なのにえらく娘振りの雰囲気を持って「何か人生でも語り合いながら散策している」感じである。
カメラを向けると「ありがとう。可愛く撮って!」と言ったかと思うと二人で落ち葉をかけ合いながらはしゃぎ合って日溜まりの子供を演技をしてくれた。ヤラセではない子供の姿にホットする。
すでに大寒も過ぎ東京の年間最低気温を記録する寒さの峠にさしかかっているが、裸樹をかすめる陽は暖かい。深山幽谷を想わせてくれる閑静なオアシスが東京のど真ん中にまだあるのだ。有栖川公園。日比谷線広尾駅から5分、横文字だらけの妙に陽気に賑わう無国籍街路に面しているのも印象的である。


有栖川公園は江戸幕藩の東北の雄、盛岡藩の南部美濃守の中屋敷の跡地。廃藩置県の後、有栖川宮家に譲られたが紆余曲折を経て1975(昭和50)年から港区を代表する自然公園として市民の憩いの場となっている。公園を取り囲む道路は江戸時代の地図とピッタリと重なり、公園南側の坂道の「南部坂」という由来がわかる。面白いのは現在の南麻布の町名がつく1966(昭和41)年以前は盛岡町と呼ばれていた。町名変更で暮らしが詰まった歴史を語る地名が消滅していくのは何とも侘びしく小役人の想像力不足が情けない。そういえば市町村合併などで命名される「ひらがな市」名の何とも味気ない事か。
  
          

<台地・谷地を利用した公園でせせらぎが池に続く。鴨と家鴨がまあ一服、寒椿の濃い緑葉が輝いている>