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源太郎、、、あの冬季オリンピックの地へ(1)

2017年03月12日 | 旅行の話

そういえば、ガルミッシュ(Garmisch-Partenkirchen)への旅の話は詳細には書いていなかった。書類を整理しているといくつかの資料が出てきたので、一応旅の記録として久しぶりに書いてみたい。

ガルミッシュへの旅(1)

 今から21年前、悪友のM教授と源太郎は成田からミュンヘンに向けて飛び立ことになったが、その前の欧州への旅の時は、教授の希望で成田市内まで戻ってチェーン店での飲み会だったので、今回は危険を避けるため、源太郎は自分が泊まるホテルのレストランに予約を入れ、文句も言わせずここでの飲み会をセットした。

「教授、今夜は私のホテルのレストランを予約しておいたので、前夜祭をやりましょう」

「ああ、どんな料理だ」

「中華料理ですが。どうせあっちにいけばソーセージとジャガイモ、酢キャベツぐらいだから、今夜ぐらいまともな食事をしましょうよ」

「中華料理かぁ。しゃぁないな。お前のおごりなら仕方ないか。ところで何時に行けばいい」

「冗談じゃありませんよ。割り勘ですからね。時間ですか、そうですね。7時に予約しておいたので、ロビーに6時45分でいいですよ」

「まだ、だいぶ時間があるな。どうする」

「シャワーを浴びるでしょ。すっきりしてきたらどうですか。その格好じゃ絵になりませんよ」

「この格好で何が悪い。まぁいい、早めに着いたら連絡する」ヨレヨレのズボンに、ポケットが膨らんだジャケット姿はいつものパターン。源太郎は笑って「6時45分ですよ」と返事して、タクシー乗り場に向かい、彼もホテルに向かった。

 

 この旅は、ある国際学会に三人で執筆した論文を発表する機会を得たので、教授ともう一人で行ってきて欲しいと頼んでいたので源太郎は行くはずではなかった。しかし、もうひとつの論文発表グループの一人が都合で間際にキャンセルしなければならなくなり、キャンセル料が発生するとになり、それなら「お前来いや」との命令で同行する羽目になった。源太郎は飛行機嫌いだから、そもそも行きたくはなかったが、それも仕方なく

「僕は行っても発表しませんからね」

「まぁ、その辺は道中で考えればいいし、お前だって俺と旅したいだろ」と強引に決定してしまった。

「冗談じゃねぇ。あんたと旅したら俺は侍従みたいなもんだよ」と心の中で思うが、「わかりましたよ。同行するだけで、僕はプライベートですから自由行動ですよ」と答えた。

「それでもいいから来い」と一言。そんなこんなで、再び彼と旅することになった訳だ。

 

 部屋の電話が鳴った。「おい、今ロビーに着いたぞ」

「早いですよ。まだ45分もありますよ」

「俺にここで待っていろというのか」だから嫌なんだよなぁ。彼は我慢ができない。

「わかりましたよ。今から降りていきます」

「おお、待っている」

 エレベーターを降りると、さっきの格好のままロビーをうろうろしている。まぁ、中華料理だし、問題はないが、ちっとは気を使えよと思いつつ「どうしますか」と聞いた。

「そこのラウンジで飲めるぞ」既に彼は偵察済みだった。

「じゃ軽く一杯やりますか」彼は常連のように我が家のように椅子に座ってボーイを呼んだ。

「バランタイン17年、ダブルで」おいおい、高い酒飲む顔じゃないぞ。

「源太郎は」

「私は、バランタインの10年でいいです。シングルで」

「つまみは頼まないのか」忙しい。

「ミックスナッツをお願いします」ボーイは伝票にメモるとカウンターに戻って行った。

 

「相変わらず、お前はいいホテルに泊まるんだなぁ」

「そんなことはないですよ。Uさんに頼んだんですよ。空港に近いいつものホテルでと」

「どうせ、泊まるだけだろ。安いホテルでいいじゃないか」

「楽なんですよ。明日は嫌な飛行機に乗らなくちゃならないでしょ」

「まぁな、飲んで、飯を食べて、寝たら着くんだから関係ないがね」

 

酒が運ばれてきて、彼は何も言わず飲み始めたので、源太郎も口に運んだ。

「ところで、Uさんは一緒に行動か?」

「いいえ、彼女はローマから北上してきます。私は行くならそっちの方が良かったんですがね」

「そんなコースがあったのか」

「ええ、そっちは観光が主体でご夫婦連れが多いですよね。でも教授は出張だからダメですよ」

「お前は旅行社みたいなやつだなぁ」

「こんにちは。明日からよろしくお願いします」

「おっ、お前も行くのか」

「一緒ですから、私から夕食に呼んだんですよ。二人で夕食は耐えられないですからね」

そこには、それ以降何度も旅を共にすることになるAが立っていた。

「ありがとうございます。電車混んでなかったですか」

「いいえ、車で来たので」

「Aさんは、よく海外に行かれているので慣れたものですね。安い駐車場あるんですね」

「ええ、送り迎えしてくれるし、帰りは車も洗車してくれるんでねぇ」

「よろしく頼むよ。いっぱい飲むか」

「教授、そろそろ夕食ですから」

「そうか。じゃ行くか」

 

三人は中華料理店に移動を始めた。精算は源太郎がいつものようにサインし、後にしっかり割り勘したのでご心配なく。

 

「源太郎さん、ところでガルミッシュってどんなところですか」

「いいところか?」と教授が続けた。

「教授が言ういいところではないですよ。何もないところだし、田舎も田舎の町ですね」

「そんなところか」

「ちょっと詳しく説明しますね」

「手短にしろや。それより紹興酒を頼んでくれ」

「自分で頼んだらいいでしょ」

「ああ」

「この街はあのヒトラーが関係しているんですよ。元々はGarmischという街とPartenkirchenという街があったんですが、幻の札幌冬季オリンピックの前の大会がここで実施されたんですね」

「お前、札幌オリンピックは開かれたぞ」

「違うんですよ。1936年にここで冬季オリンピックが開かれたんですよ。札幌は1940年に開かれることが決まっていたということです。で、その時ヒトラーのナチスがドイツ帝国を支配していたんです。一つの街ではスペースがなかったので二つの街を一緒にしてしまったんです。それ自体はいいんですが、今でも残っている公式の大会記録は400ページを超える本で残っているんですが、その冒頭にヒトラーの挨拶文があり彼のサイン、そして随所に彼の写真が載っているんですね」「そんな本が残っているのか」

「公式記録ですから、彼の顔や文書にモザイクやすみ塗りはできないんですね。そんな街だから何にもないところなんです。でも、この公式記録にはちゃんと日本選手のジャンプの写真が載せてあったり、その点はプロパガンダにはなっていないです。ただ、ドイツの国旗があのマークですがね」

「源太郎は本当にその時代に生きていたみたいだなぁ」

「教授。優秀な生徒を教えているんでしょ。専門外のこともちっとは勉強したら」

「うるせえなぁ。いいんだ俺は。専門馬鹿で」

「はいはい。そうですね。じゃ現地ではお互いに干渉しないことでいいですよね。私はAさんと楽しみますから。僕らはプライベートですからね」

「そうしましょう。源太郎さん」

「馬鹿野郎。誰のおかげで欧州に行けると思ってんだ」

「ええ、奥様のおかげですね」

「何ぃ」

「まあ、飲みましょうよ」

明日は成田から最新鋭のB777で飛び立つ。ほろ酔い気分の夜は更けていった。(続く)