経営コンサルタント田上康朗の雑感帳

経営コンサルタント田上康朗が、気ままに本音で記す雑感帳です。書く日もあれば書かないときもあります。

風の盆と町

2010年09月04日 | Weblog
昨日で、あの「風の盆」は終わった。
残園なことだが、今年もまたいけなかった。鹿児島から、八尾は遠い。
以下、10余年前、雑誌「商業界のコラムに掲載した原稿を再掲。
                 
 
今年も、越中富山、八尾の「おわら風の盆」の季節になった。
人口二万人の町に、今年も九月一日からの三日間で.
二十六万人を越す人々が全国からあっまっきた。

この祭りの凄みは、この町で生活をしている住民たちが、
観光客のためではなく、ただひたすら自分たちが楽しむために
歌い、踊るところにある。

徹底したアマチュアリズムを貫らぬき、
観光客への迎合はやらない、という戒めが、
きちんと守られているのである。


町に足を踏み入れた人々がまず驚くことは、
どこの祭りにも見られる喧騒さがないことである。
人々のざわめきすら薄闇にすいこまれてしまうのであろうか、
寂しく哀しい夜祭りである。

男は黒はっぴ、黒股引き、黒足袋姿で、直線的かつ躍動的な踊り。
女は揃いの浴衣に自足袋。そして編み笠を被るその陰影と、
白いあごを結ぶ紅紐の鮮やかさが醸しだすほんのりとした美しさ:。

しなやかな指先や腕の流れとともに膝から下、腰から背中にかけての
うねりが,闇夜に踊りの表情を映す。

八尾町には十一町があり,その数だけのおわら支部がある。
年配の地方衆(三味線、胡弓、太鼓)と唄い手と若い踊り子たちが同じ空間で,
三百年の歴史ある芸能を練り上げる。

見逃してならないのは、町を構成している店(たな)である。
この町には、よその町ではほとんど見られなくなった
和紙屋がある。
胡弓屋がある。
三味線屋がある。
指物屋がある。
染物屋がある。
それも祭りのときだけでの出店ではなく,昔からある老舗なのである。

その佇みは、他の店もそうであるが、「風の盆」と
町の人々の生活を支えている伝統と自信がそうさせるのか、
呼び込みも売り込みも媚もしないし、またお祭りだからといって
値段を吊り上げるようなこともいっさいない。

今は忘れ去られている商いの原点と商人の有り様が,この町にはある。