ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2018.4.2 レジリエンスには3つのC!

2018-04-02 21:30:10 | 日記
 今日から新年度。私はいつもどおり普通に出勤したけれど、異動者は大変だ。ご挨拶に学内を引き回され、ようやく新メンバー全員が揃って顔見せ出来たのは夕方近くになってから。
 明日からは、学生相手の各種ガイダンスや職員対象の研修等も目白押しだし、水曜日の通院後、木曜日には早速東京横断の会議で出張もある。わさわさしていて事務室にいるだけで人疲れがする。慣れている筈の私がこう感じるのだから、新しく着任された方たちはどれほど気疲れすることか。

 さて、朝日新聞のデジタル版を見ていて、なるほどな、と思った記事があったので、長文だが、以下にご紹介したい。

※  ※  ※(転載開始)
がん患者にレジリエンス外来 心のケア、患者自身の力で 聞き手・伊藤綾(2018年4月1日17時00分)

 人には困難に直面して落ち込んでも、また立ち直っていく力がある――。そんな力として注目されている「レジリエンス」をがん治療の現場で活用する試みがあります。

治療やめてもがんは縮み続けた がんと共生する新治療
 東京都の会社員、千賀泰幸さん(59)は2015年6月、ひどいせきをきっかけに、進行した肺がんだとわかった。「手術はできない。放射線と抗がん剤治療をすると5年生存率は……」。医師からこんな説明を受けた。
 当初、親しい人たちに自分から連絡して状況を話した。妻には自分の葬儀をどうするか話すなど、冷静に振る舞っていた。
 だが、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)に入院した頃から、どうしようもない不安感に襲われるようになった。退院後、職場に復帰したが、感情をコントロールできず、涙があふれてきた。そんな時、相談した主治医から精神腫瘍(しゅよう)科を紹介された。

ため込んでいた思い、医師に打ち明ける
 精神腫瘍科は、精神科医や臨床心理士らが薬の処方やカウンセリングを通してがん患者やその家族の心のケアにあたる。
 科長の清水研医師(46)と対話した千賀さんは、ため込んでいた思いがあふれ出た。
 「家族に迷惑をかける弱い自分が許せない」「60歳を過ぎたら何をしようか、と友人たちと話していたのに、自分にだけ未来がない」「死ぬのが怖い」……。
 「大黒柱」の自分が動揺するところを家族に見せたくなかったんだ。そう気づいた。

困難を乗り越える力、引き出す
 清水医師は「多くの人は10年、20年先も生きていくと思っている。がんになることで想定が根底から覆され、子どもや年老いた両親のこと、自分の仕事のことなど、やり残している課題をどうするか、混乱する人がいるのは当然のこと」と強調する。一方、がん患者が病気をきっかけに新たな気づきを得る姿も目にしており、「重い病気で生きる上での前提が様変わりするような体験をしても、人はそれを乗り越えていく力を持っている」と実感してきた。それを手助けすることを目的に、2016年秋に開設したのが、「レジリエンス外来」だ。
 レジリエンス外来では、原則週1回、清水医師が50分間のカウンセリングを5~8回程度行う。患者はあらかじめ専用のワークシートに「どのような両親のもとに生まれ、どのように育てられたのか」「思春期にはどのようなことを考えたか」「社会とどう向き合ってきたか」などを記入する。それをもとに医師と対話しながら、病気になるまでの自分のこと、病気が自身にもたらしたことを整理する。「自分自身のことを深く理解していく中で、これから進みたいと思う方向が見えてくる」と清水医師。
 千賀さんはレジリエンス外来を通じ、家族や友人に恵まれ、素晴らしい時間を過ごしてきたと実感できたという。
 「がんになったことは自分の物語の中の一部に過ぎない、と気づいた。痛みを感じ、弱っていく自分がいてもいいんだ、と許せた」
 現在は痛みを緩和するなどの治療を続ける。気持ちが揺れることはあるが、落ち着いて向き合えるようになったという。

思い込みを整理 治療へ前向きに
 東京都の女性(51)は16年秋、母親の四十九日の法要を終えてひと息ついた夜、ふと右胸に手を当てると、石のような塊に触れた。ステージ2の乳がんだった。
 手術、抗がん剤、放射線と治療を続けた。夫も息子も支えてくれたが、心のつらさは募るばかり。「病院ではずっと若い患者もみんなががんばっているのに、どうして私だけこんなに後ろ向きなんだろう……」。通院する電車の中で、息苦しくなった。
 紹介を受けて精神腫瘍科を受診。「胸も傷つき、髪の毛もない。もう女じゃない」。そんな風に自分を苦しめていたが、レジリエンス外来に通ううちに「小さい頃のことから振り返る中で、小さな思い込みが整理できて、心につっかえていたものがとれた」と話す。家族だけでなく、医師や看護師ら一生懸命に自分に向き合ってくれる人がいるということに気づき、治療にも前向きになったという。
 レジリエンス外来は国立がん研究センター中央病院の患者でなくても、保険診療で受診できる。清水医師は「がんと診断されて、生きる意味が見いだせないと感じている人、自分自身の価値観を見つめ直したいと思っている人に特に勧めたい」と呼びかける。
 今後も検証を進め、他の病院でも実施できるように、マニュアルづくりもめざしている。問い合わせは同病院代表(03-3542-2511)精神腫瘍科の清水医師(内線7004)へ。

 レジリエンスとは何か。精神科医の大野裕さんに聞きました。
 ――どんな意味の言葉でしょうか。
 レジリエンスは「弾力」や「回復力」を指す物理学用語で、心理学の分野でも昔から使われてきた。手でボールをグッと押すと、ボールはへこみ、そこから戻ってくる。それがレジリエンス。厳しい状況に置かれた時、心が折れそうになりながらも、折れずに戻る。人間には元々そういう力が備わっていると考えられている。日本では特に東日本大震災後、こうした考え方が注目された。
 ――それぞれの人のレジリエンスを引き出すためには、どうすればよいのでしょう。
 ポイントになるのは三つの「C」。一つ目は「コントロール(control)感覚」。「自分が状況をコントロールできている」という感覚を持てると、自信につながる。「できた」「楽しい」という思いが脳の「報酬系」という神経に作用すると、意欲も出る。小さな体験でも「これができる」というもの、やりがいや楽しみを積み重ねることが大事。親しい友達と話す、休んで気分転換をする、といった日常生活の中のちょっとしたことでも良い。
 二つ目は「コグニション(cognition)=認知」。物事は受け取り方や考え方によって見え方が変わる。良くないことが起きるとマイナスのことを想定して自分を守ろうとするものだが、ネガティブな感情はブレーキになる。「自分はもうだめだ」と考えると、ますます意欲がなくなる。だから、いったん距離を置いて現実を見てみる。目の前の問題にとらわれるのではなく、広い視野を持つ。考えを整理して進んでいく方向を見ながら、現状に取り組む。
 三つ目は「コミュニケーション(communication)=意思疎通」。ほかの人と一緒に進む、という感覚を持てると、力が出る。悩んでいる時には人の存在が大きい。例えば、親しい人に手を握られるだけでも気持ちが楽になる。人と話すことで別の見方ができるし、考えを整理できる。
 ――これらを踏まえた上でアドバイスを。
 人にはそれぞれ個性があるので、これらを意識した上で、まずは一人ひとりの力に目を向けることが大切。「つらいにどう切り抜けているか」を意識して、次のつらい状況が起きた、それを生かすことが効果的だ。(聞き手・伊藤綾)

(転載終了)※  ※  ※

 私もこれまで何度も転びながらその都度また立ち上がって、ゆっくりとマイペースではあるが、その歩みを続けてきた。気付けば再発治療10年を超えてなお生き長らえるだけでなく、仕事も趣味も愉しみながら、ごく普通の生活を送ることが出来ている。
 そのことが叶ったのは他でもない、この3つのCのおかげだったのだ、と改めて気付かされたのだ。

 1つ目のコントロール(control)感覚。おかげさまで今、私は「現状ではそれなりに自分の体調や取り巻く環境をうまくコントロールできている」という揺るぎない感覚を持てている。これまであれこれ試行錯誤でやってきて、もちろんうまくいかないことも多々あったけれど、総じて今、それなりにここまでやってこられたという自負を持って前を向けているのだと実感している。

 そして、2つ目のコグニッション(cognition)。ネガティブ感情の負の螺旋に陥ると、身体への影響も大きいことは間違いないのを実感している。心と体はごくごく密接に繋がっているのだ。不思議なことに(能天気なのかもしれないけれど)もう私はだめだ、と思うことはない。まだまだ頑張りすぎずにうまく共存していけるのではないか、と思っている。
 もちろん、現実は甘くないからそれなりに病状は進んでいるし、色々な治療を続けているから、全く何の影響も副作用もなくそうした幸せな事態が続くとは思っていない。
 けれど、良くないことが起きても落ち込みすぎずに心穏やかに受け入れる、良いことが起きても喜びすぎずに心穏やかに受け入れる、これは10年以上続けてこられたヨガの智慧のひとつである。感情の触れ幅はあまり大きくない方が良いように思う。

 そして3つ目のコミュニケーション(communication)。これこそ3つのCで一番大きいのではないか。
 人は一人では生きていけない。重い病気を患えばなおさらだ。それでも、病を得ても決して自分は一人ではない、沢山の人たちに支えられてこれからも歩んでいける、という感覚が治療に向かう上での力になることは間違いない。
 これは患者仲間だけでなく、家族を初め、職場の人たち、ヨガ仲間も含めて、私の人生を彩ってくださる沢山の人たちと一緒に進んでいるという感覚だ。だからこそ、そもそも痩せっぽちでスタミナがなく、頑強とは程遠い私にこんなに不思議な力が出ているのだろう。 同時に、こんな状況であってもいまだにどなたかのお役に立てているということ、同じ病を持つ人を励ます、相談に乗る、話を聴く、そうしたことがますますその力を大きくしてくれ、私が逆に励まされているのだと思う。

 そんなわけで弾力と回復力であるレジリエンスのための3つのC、これからも大切にしていきたいと思うのである。
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