以前もご紹介したことのある朝日新聞の医療サイト「アピタル」の連載、長尾先生が「町医者だから言いたい」で「抗がん剤と副作用・抗がん剤の止めどき」を書いておられる。後半の“止めどき”も気になるところだが、以下転載させて頂く。
※ ※ ※(転載開始)
町医者だから言いたい!【941回】抗がん剤と副作用 抗がん剤の止めどき・その5 筆者:長尾和宏
ひとくちに抗がん剤と言っても、いろんなお薬があります。副作用の強い薬、少ない薬、点滴する薬、口から飲む薬。実に多様です。最近のトピックスとして、分子標的治療薬があります。
従来の抗がん剤が、全身に作用するのに対し、分子標的治療薬は、がん細胞のみ攻撃するという発想です。戦争に例えるなら、じゅうたん爆撃とピンポイント爆撃です。
当然、従来薬より副作用が無いかと思いきや、結構、多彩な副作用に悩まされるのが現実です。
従来の抗がん剤に分子標的治療薬を併用することが多いですが、分子標的治療薬単独で用いられることもあります。抗がん剤の潮流は、分子標的治療薬に向かっています。
分子標的治療薬は高価です。1カ月のお薬代が、10万円単位でかかるものが多いようですが、健康保険が効けば自己負担は1カ月最大8万円ですみます。
さて、昔、自分がしていた抗がん剤の話をしましょう。白血病の場合、1~3種類の抗がん剤を投与すると、2週間あたりから、徐々に骨髄に効いてきます。
白血球と血小板が減ってきます。白血球数は、通常4000~8000ですが、1000や500を下回ると抵抗力が無くなるので無菌室に入りました。
今は、白血球を増やすお薬を注射すれば2~3日でメキメキ増えて助かります。一方、血小板は、通常20~30万ですが、3万以下になれば黄色信号です。鼻血や歯ぐきから出血しやすくなります。
3万を下回ると血小板輸血をします。10単位というのは、10人の献血分です。1回献血しても、血小板はほんのわずかしか取れません。スープの上澄みをすくって集めるような感じでしょうか。
しかし、血液センターがかき集めた10人分の血小板を、3日間連続で輸血すると、一時的とはいえ、血小板は、数万以上に上がり一安心します。赤血球も同様に、輸血することがあります。
抗がん剤の治療経過で、白血球や血小板が最も減少する時期があります。それを「底」と呼びます。2~3週間目です。その「底」の時期を、いかに支えるかがもっとも大切なポイントでした。
実際そうです。要するに、人間に毒を盛るのです。もちろんがん細胞をやっつけるためです。しかし同時に自分の細胞、つまり味方もやっつけてしまうのです。
一方、患者さんから見ればそんなことどうでもいい、という感じです。とにかく「しんどい」のです。これは関西弁ですが、関東では「だるい、かったるい」でしょうか。
全身倦怠感といいます。医者は、当たり前のこととして捕えがちですが、患者さんにとっては、まさに死活問題です。
加えて、脱毛、口の中の出血、味が無いなどに悩まされます。いいことなはど、何も無い状態になります。精神的にも落ちこむのは当然です。
昔の抗がん剤治療といえば、ざっとこんなイメージでした。(続く)
(転載終了)※ ※ ※
そう、分子標的治療薬は狭義の抗がん剤に比べてずっとマイルドであるには違いない。吐き気も倦怠感も脱毛も味覚異常もない。けれど、ハーセプチンもタイケルブ(ラパチニブ)も副作用として皮膚障害が出ることは事実だ。ハーセプチン投与開始から4年以上経ち、皮膚がとても薄く弱くなってしまった。テープかぶれが酷いので、採血でも点滴でもビニールテープは使えなくなった。いつも紙テープで、とお願いするけれど、それでも少し長い時間貼っていると赤く腫れる。ラパチニブは顔や体にも湿疹が酷いと聞く。さらには下痢も。仕事を続けていく上で、皮膚障害も下痢も結構辛いだろうなと思う。
一方、今分子標的治療薬をお休みしてEC治療の真っ只中の私は、上のコラムに出てくる白血球を増やすお薬の注射(G-CSF:グラン)のおかげで、2回目、3回目投与後、好中球減少症による入院を何とか免れている。本来なら、今回の治療では今日、明日、明後日あたりが白血球数は底値のはずだ。だから見た目は元気そうだけれど、やはりだるくて疲れやすい。さらにはグランの副作用で胸骨の痛みと腰痛。ついでに初回投与後の入院時、免疫抑制による急性歯根膜炎と診断された右の下奥歯が、ここ数日なんとなく疼いている。
けれど、体の方はまた食べられなくなったら大変、と飢餓感を感じているのか、食欲だけはとても旺盛だ。
今クールからグランは3日連続で打っているが、次回以降もなんとかこれで済みますように、と思う。あと1日追加で4日連続で、と言われると、体調不十分な中、通院のため週のうちのほぼ毎日、時間休暇をとって往復することになる。それはかなり辛いと思う。かといって、注射一本打つために3泊4日の入院もないものだし・・・。注射だけでも近くのクリニックで打てれば有り難いのだけれど。
そして、今のところ白血球だけの低値で、血小板の低値からは免れているが、いつかはこちらも・・・と思うとちょっと心配になる。輸血は出来れば避けたい。
もちろん私にとって心穏やかに再発治療を続けて行くための極意は「そうなってから考える、無駄にいろいろ想像して思い患わない」なのだけれど。
今日は日中はとても暖かくなったが、帰路は天気予報通り冷たい風が身に沁みた。11月半ばにして早くもタートルネックとダウンとショートブーツ解禁。ちょっと大げさかしらと思ったけれど、骨や腰の痛みには冷えは大敵。今朝は腰に湿布もして出かけていたから、結果オーライだった。
※ ※ ※(転載開始)
町医者だから言いたい!【941回】抗がん剤と副作用 抗がん剤の止めどき・その5 筆者:長尾和宏
ひとくちに抗がん剤と言っても、いろんなお薬があります。副作用の強い薬、少ない薬、点滴する薬、口から飲む薬。実に多様です。最近のトピックスとして、分子標的治療薬があります。
従来の抗がん剤が、全身に作用するのに対し、分子標的治療薬は、がん細胞のみ攻撃するという発想です。戦争に例えるなら、じゅうたん爆撃とピンポイント爆撃です。
当然、従来薬より副作用が無いかと思いきや、結構、多彩な副作用に悩まされるのが現実です。
従来の抗がん剤に分子標的治療薬を併用することが多いですが、分子標的治療薬単独で用いられることもあります。抗がん剤の潮流は、分子標的治療薬に向かっています。
分子標的治療薬は高価です。1カ月のお薬代が、10万円単位でかかるものが多いようですが、健康保険が効けば自己負担は1カ月最大8万円ですみます。
さて、昔、自分がしていた抗がん剤の話をしましょう。白血病の場合、1~3種類の抗がん剤を投与すると、2週間あたりから、徐々に骨髄に効いてきます。
白血球と血小板が減ってきます。白血球数は、通常4000~8000ですが、1000や500を下回ると抵抗力が無くなるので無菌室に入りました。
今は、白血球を増やすお薬を注射すれば2~3日でメキメキ増えて助かります。一方、血小板は、通常20~30万ですが、3万以下になれば黄色信号です。鼻血や歯ぐきから出血しやすくなります。
3万を下回ると血小板輸血をします。10単位というのは、10人の献血分です。1回献血しても、血小板はほんのわずかしか取れません。スープの上澄みをすくって集めるような感じでしょうか。
しかし、血液センターがかき集めた10人分の血小板を、3日間連続で輸血すると、一時的とはいえ、血小板は、数万以上に上がり一安心します。赤血球も同様に、輸血することがあります。
抗がん剤の治療経過で、白血球や血小板が最も減少する時期があります。それを「底」と呼びます。2~3週間目です。その「底」の時期を、いかに支えるかがもっとも大切なポイントでした。
実際そうです。要するに、人間に毒を盛るのです。もちろんがん細胞をやっつけるためです。しかし同時に自分の細胞、つまり味方もやっつけてしまうのです。
一方、患者さんから見ればそんなことどうでもいい、という感じです。とにかく「しんどい」のです。これは関西弁ですが、関東では「だるい、かったるい」でしょうか。
全身倦怠感といいます。医者は、当たり前のこととして捕えがちですが、患者さんにとっては、まさに死活問題です。
加えて、脱毛、口の中の出血、味が無いなどに悩まされます。いいことなはど、何も無い状態になります。精神的にも落ちこむのは当然です。
昔の抗がん剤治療といえば、ざっとこんなイメージでした。(続く)
(転載終了)※ ※ ※
そう、分子標的治療薬は狭義の抗がん剤に比べてずっとマイルドであるには違いない。吐き気も倦怠感も脱毛も味覚異常もない。けれど、ハーセプチンもタイケルブ(ラパチニブ)も副作用として皮膚障害が出ることは事実だ。ハーセプチン投与開始から4年以上経ち、皮膚がとても薄く弱くなってしまった。テープかぶれが酷いので、採血でも点滴でもビニールテープは使えなくなった。いつも紙テープで、とお願いするけれど、それでも少し長い時間貼っていると赤く腫れる。ラパチニブは顔や体にも湿疹が酷いと聞く。さらには下痢も。仕事を続けていく上で、皮膚障害も下痢も結構辛いだろうなと思う。
一方、今分子標的治療薬をお休みしてEC治療の真っ只中の私は、上のコラムに出てくる白血球を増やすお薬の注射(G-CSF:グラン)のおかげで、2回目、3回目投与後、好中球減少症による入院を何とか免れている。本来なら、今回の治療では今日、明日、明後日あたりが白血球数は底値のはずだ。だから見た目は元気そうだけれど、やはりだるくて疲れやすい。さらにはグランの副作用で胸骨の痛みと腰痛。ついでに初回投与後の入院時、免疫抑制による急性歯根膜炎と診断された右の下奥歯が、ここ数日なんとなく疼いている。
けれど、体の方はまた食べられなくなったら大変、と飢餓感を感じているのか、食欲だけはとても旺盛だ。
今クールからグランは3日連続で打っているが、次回以降もなんとかこれで済みますように、と思う。あと1日追加で4日連続で、と言われると、体調不十分な中、通院のため週のうちのほぼ毎日、時間休暇をとって往復することになる。それはかなり辛いと思う。かといって、注射一本打つために3泊4日の入院もないものだし・・・。注射だけでも近くのクリニックで打てれば有り難いのだけれど。
そして、今のところ白血球だけの低値で、血小板の低値からは免れているが、いつかはこちらも・・・と思うとちょっと心配になる。輸血は出来れば避けたい。
もちろん私にとって心穏やかに再発治療を続けて行くための極意は「そうなってから考える、無駄にいろいろ想像して思い患わない」なのだけれど。
今日は日中はとても暖かくなったが、帰路は天気予報通り冷たい風が身に沁みた。11月半ばにして早くもタートルネックとダウンとショートブーツ解禁。ちょっと大げさかしらと思ったけれど、骨や腰の痛みには冷えは大敵。今朝は腰に湿布もして出かけていたから、結果オーライだった。