昨季からの活躍で注目を集めている、アイスダンスの“うたしん”こと吉田唄菜/西山真瑚組。ユース五輪や世界ジュニアで実績を残し、今季も西日本選手権でますます洗練されたところを見せてくれている。
現在17歳と18歳なので、シニアに出場することも可能。ネットでは「まだシニアに上がらないのか」「シニアのプログラムを作ってNHK杯に出ればいいのに」等の声が 今季参入する村元哉中/高橋大輔組のライバルになるから、シニアに上がらせてもらえないのでは?と憶測する声も
シングルやペアでは、全日本ジュニア上位が推薦で全日本に出場し、年齢基準をクリアしていればシニアの国際大会に派遣されたりもする。しかし、アイスダンスでは難しい
最大の理由は、ジュニアとシニアでリズムダンスの課題ステップが違うこと。アイスダンスでは、シーズンごとにリズムダンスのテーマ・リズム・課題ステップが決められている。今季の課題ステップは、シニア:フィンステップ、ジュニア:ティータイム・フォックストロット。こちらのブログでわかりやすく説明してくれている。
ステップの説明(フィンステップ/ティータイム・フォックストロット)を読んでもよくわからないけど、図を見ただけでも、かなり違うらしいということはわかる。うたしんと小松原美里/ティム・コレトの映像で、難易度も違うのが見えるだろうか。
フリーは、シニアのほうが30秒長くなり、技術要素がリフト1つ、コレオグラフィックエレメント1つ増える。リズムダンスよりは楽に作り直せそうな感じがするが、シングルと違って、ただ滑っている時間を入れるわけにいかないので、ちゃんと振付し直すことになるだろう。
国際大会では、たまに1つのシーズンでジュニアとシニアを掛け持ちするカップルを見かける。昨季ではマリア・カザコワ/ゲオルギー・レヴィヤ(ジョージア)、ナタリー・タシュレロヴァ/フィリップ・タシュレル(チェコ)がいた。その国にほかに有望なカップルがいない、シニアでも十分戦える実力がある、等の理由と思われる。
日本はシニアのカップルが複数組いるので、無理に掛け持ちさせる必要がない。選手たちも、わざわざ負担の大きいことをしたくはないだろう。
掛け持ちじゃなくて、さっさと今季からシニアに上がればよかったのでは?と思う人もいるだろうが、、、
シングルやペアでは、シニアに出られる年齢になるとすぐシニアの大会に出て、ジャンプをガンガン決めて上位に入るケースが多い。しかし、ジャンプのないアイスダンスは、積み上げてきたスケーティング技術がそのままスコア、順位に出る。ベテランになるほど高得点が出やすい。
世界ジュニアでメダルが取れても、シニアの中に入ればまだまだ下のほう。グランプリシリーズに出ても表彰台になかなか届かず、選手層の厚い国なら世界選手権代表にもなれない。というわけでアイスダンスでは、年齢制限ぎりぎりに近いところまでジュニアで実績を積んでから、シニアに上がっていくカップルが多い。
うたしんの場合、西山真瑚くんはアイスダンスを始めて2シーズン目と日が浅い。2022/2023シーズンまでジュニアに出ることができるから、世界ジュニアでトップ10に入るという目標を達成してからでも遅くない
また国内では、シニアの大会に出るために合格しなければならないバッジテストがある。吉田/西山組は現在そろってプレシルバーと資料にあるので、まだシニアに必要な級は獲得していないかもしれない。これは、十分な技術があると判定されれば、可能かもしれないが
調子がいいからそのまま、ではなく、相当の準備と覚悟を持ってシニアに上がるのがいいと、本人たちもコーチ陣も考えているのだと思う。
先が見えないシーズンだけど、日々頑張っている選手たちを応援したい
13日(金)のNHK「ニュースウォッチ9」で紹介された、村元哉中/高橋大輔組の練習の様子を見て、けっこうやるじゃんと思った。
なかなかスピード感はあるし、ツイズルをちゃんと合わせている。レベルが取れそうな難しいポジションのリフトを、そこそこ安定感をもってできている。
プログラムを通してどの程度できるのかは、実際に大会で見てみないとわからないが 2人が練習からアイスダンスを楽しめているのが伝わってくる。
「今後を期待できるような演技をNHK杯でできれば」と語る大ちゃん、見るのが楽しみ
昨年10月、高橋大輔アイスダンス転向の話から、日本のアイスダンスの状況について、このブログで書いた。その時点で、転向1年目では国際大会エントリーがないと思っていたが、実はグランプリシリーズにアサインされる可能性が元々あった
「過去2シーズンの世界選手権で7位から12位に入ったペア/アイスダンスの選手が、新しいパートナーと組んで出場する場合、直前のパートナーとのベストスコアでリストにのることができる。また、出場のためのミニマムスコアを満たす必要は無い。」(ウィキペディア)
この基準に従うと、村元哉中はクリス・リードとのカップルで、2018年世界選手権で11位になっている。ベストスコア164.38でリストに載るので、少なくとも開催国枠は余裕だったはず。今季NHK杯にアサインされたのは当然なのだった。
短いが映像を見て思ったのは、なんだかんだいってベテランはスケーティングが上手い。そして、世界と戦ってきた経験が表れる。
世界のトップと成績では差があっても、同じ大会の同じリンクで滑り、同じジャッジに採点・評価されてきた経験は「今できることは、できる。」とでもいうような自信になって、選手を支えるように思う。
すると、選手を強くするには世界で戦う経験を積ませるのが大事。それなら、、、西日本選手権2020で2位の平山姫里有/立野在組をNHK杯に出場させてもいいのでは 今回は国際大会基準のジャッジではないけど、NHK杯で実績を残すことは今後につながるはず。
スケートアメリカ2020で8位のエミリー・モナハン/イリアス・フォラティのスコアが127.70。中国杯2020で5位の林宇飛(Yufei LIN)/高子鍵(Zijian GAO)のスコアが142.33。国内大会とはいえ、139.82の平山/立野は、出しても恥ずかしくないと思うんだけど、、、今からでも出せないかな、、、
NHK杯は27日から。
この名前を知っている人はそんなに多くないかな 全米選手権を毎年見ている人なら、お馴染み
Sean Rabbitt、この綴りでショーン・ラビットと発音する。180cmとすらっとした体型で、のびのびと気持ちよい滑り。4回転など高難度のジャンプはなかったが、マンボ・メドレーなど観客を引き込む楽しいプログラムで魅了してくれた。
国際大会出場は多くなかったが、スケートカナダ・オータムクラシック2015では銅メダル。このとき優勝が羽生結弦だった。
日本語がぺらぺらで、キス&クライでは日本のファンに向かってメッセージを言ってくれる。日本でチャリティショーに出たこともある。この引退を発表するfacebookでも、英語と同じくらいの分量のしっかりした日本語で伝えてくれた。
今後はコーチや振付、ショー出演などで活躍してくれるだろう。またどこかで見られる日を楽しみに