試合が終わって何日も経つのに、まだこの話か>自分^^;
全日本フィギュアスケート選手権で、史上もっとも激しい戦いをした高橋大輔と羽生結弦。今回は羽生が逃げ切った形になった。ネットで「羽生の優勝に会場がブーイング」「オーサーの不正?」などの発言があったり、YouTubeの羽生の映像に「He is overscored.(得点出過ぎ)」とコメントされたりしていて、羽生の優勝に納得しない声があるようだ。観客の印象と違ったらしい。
これが以前の6点満点・順位点の採点方式なら、間違いなく高橋大輔の優勝だった。フリー1位のほうが上だからだ。
比較的拮抗する得点になったのは、滑走順の影響もあると思う。第3グループで一番いい点だったのは田中刑事の145.98。続く最終グループ最初の滑走がいきなり高橋大輔で、遠慮なく高得点を出したとはいえ、ちょっと限度があったかも。そして中村健人・織田信成・無良崇人・小塚崇彦と4人が滑る間に会場もジャッジもいったん落ち着いて、最終滑走の羽生結弦だった。
もし、フリーの滑走順をSP順位の逆にする方式だったら、中村→織田→無良→小塚→高橋→羽生という順。小塚の次なら高橋大輔にもっと高得点が出てたかもしれず、その直後に滑る羽生は見劣りして点が抑えられたかもしれない。
それにしても羽生にはoverscore=得点出過ぎと感じる人が多いのはなぜだろう。そもそも、なぜ内容に対して点が高いと感じることがあるんだろう?
・・・「人が人に点をつける競技」の難しいところだけど、「自分が好きな選手、自分が高く評価する部分に強い選手の得点は高くて当然」で、「自分が好きじゃない選手、評価しない部分が多い選手の得点は高すぎる」と感じる傾向はある。かくいう私も、あの選手とかこの選手とかの得点はいつも高すぎると感じてしまうし
もう一つの理由は、リンクサイドで見るのとテレビ等の映像で見るのとでは違うらしいこと。スピード感やエッジの使い方の細かいところなど、映像で捉えきれない部分でジャッジの評価に大きく影響するものがあるらしいが、その辺は放送であまり解説してくれない そこが理解できないと、なかなかピンとこないんだけど。
ジャッジも何の目安もなしでは大変なので、過去の大会の演技などで「このくらいの演技でこのくらいの点数」という研修とか打ち合わせはあるらしい。今季ほかの大会での映像と得点も参考にするだろう。グランプリシリーズやグランプリファイナルと同等の得点なら、「出しても奇異ではない」という前提になると思われる。
「国際大会より国内選手権のほうが得点高め」というのは世界的な傾向。選手とジャッジの文化的背景が共通する同国人同士では、PCS(演技構成点)の「振付」や「曲の解釈」で共感度が高く、自然と評価が上がるから、得点も高めになるわけだ。
あえて高めに出して、自国選手たちの好調さを他国にアピールするのが近年の流れでもある。カナダ選手権やロシア選手権などを見ると、ちょっとびっくり その点、全日本は明らかに控えめだが
無暗に高得点を出しても、ジャッジスコアと同時に映像も世界中に流れる時代。「この程度の演技でこんな点?」と眉唾で見られたら結局意味ないから、控えめに“盛る”くらいでちょうどいい
ジャッジが思わず甘い点をつけてしまう、逆になんとなく低くつけてしまうのはどんな場合かな?
「演技中に目が合ったりすると、PCSで0.25くらい高くしてしまう」なんて話も聞くし、多くの選手は演技中にジャッジ席に向かってアピールする場面を持ってくる。好きなタイプの選手(ジャンプの軸がまっすぐとか、スケーティングがきれいとか、ダンスの表現が上手とか)に甘くなったりもあるかも。
ISUが「競技としてこうあってほしい」と理想とする形を体現する、あるいは体現しようとしているスケーターには、間違いなく高い評価が与えられてると思う。今は“滑れて跳べて踊れる”だろう。
選手個人でいうと、確実に前より成長してるのが見えたとき、思わず高めに出るんじゃないだろうか。「お、上手くなってる!」みたいな 一方、毎回同じで新鮮味がないと、だんだん抑え気味になるような・・・。演技全体でいまいちな出来が続くと、PCSもじわじわ下がっていく気がする。昨季の小塚崇彦がそんな感じだった。
羽生結弦のフリーは、スケートアメリカのぐだぐだ→NHK杯終盤バテた→グランプリファイナルのサルコウが2回転になったミス1つでまとめ、と続いてきて、全日本は根性でこらえた4回転2本となんとか最後まで持たせた体力、だった。少しずつ、つなぎや表現は完成に近づきつつあるところは見えた。グランプリファイナルのPCS85.16を踏まえて、今回89.70。もっと厳しい点でもあり得るが、このくらい出してもおかしくはない、というところか。
「芸術要素点も今回は高い評価をしてもらえましたが、自分としてはまだまだだと思っていますし、その評価に匹敵するスケーティングや表現力まではいっていないと思う。その点数を、しっかりと自分の力で出せるようにしていきたいと思う」とコメントする羽生結弦(記事)。次は誰をも納得させる演技を見せてもらおう