AKB48の旅

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「AKB48 in Tokyo Dome 1830mの夢 3rd DAY」DVDの感想

2012年12月10日 | AKB
「桜の花びら」、以前、「声かぶり」について書いたけど、そしていつか取り上げようと思ってたけど、前田さんの声はとても個性的で、独特のハイトーンで、それでいて耳障りではない。むしろ耳に残る。心地よく刺さる。声だけじゃない。顔も個性的で、これも以前に書いたけど「顔かぶり」しない。スタイルの見栄えの良さは言わずもがな。

こうして前田敦子というアイドルの完成形を見るなら、前田さんが逸材中の逸材だったことは明らか。けれどもオーディション時点の映像を見る限り、それこそTgskさんの言葉通り、こうなるなんて全く思い描けない。これが、立場が人を育てるということなのか。いやそんな生やさしいものではないというのは既に書いた。命を賭して期待に応え続け、私を捨てて公たらんとして、やり切って見せたことで神の愛を確信するプロテスタントの如く、かな。それとも対偶的に「一切衆生悉く仏性有り」か。

「口移しのチョコレート」、篠田さん、高城さんはともかく、横山さんが来るとは。案の定というか、横山さんに引きずられるように、こんなにエロくない「口移しのチョコレート」を初めて見たような。念のため書いとくけど、けなしてないからね。

「ハート型ウイルス」、柏木さん、河西さん、北原さんで。柏木さんの台詞が「ぜーったいにありえない。新曲、ギンガムチェックのMVの中でゆきりんがキスだって!」なのにはワロタ。それより、大きなロングのフレアスカートの衣装で、前半は上半身だけの身振り手振りの不自然なフリだなと思ったら、スカート部分だけが自分で歩いて行って(床との隙間から歩いてるのがわずかに見える)、中に隠れてた阿部マリアさん、竹内美宥さん、あと一人一番奥は誰だ?DVDの解像度だと今一分からん、の3人が立ち上がった演出には???。なんだこれ。

前田さんのアイドル最後の勇姿をこれでもかとばかり。「渚のチェリー」はバックダンサーが島崎さん、川栄さん、木崎さん。「着替え中」カウントダウンに続いて「黒い天使」は渡辺麻友さんとJ。研究生のポンポンガールズ?が囲んでの舞台上で早着替えで「アイドルなんて呼ばないで」は、大島さん、小嶋さん、板野さん。AKBGができ得る最強の布陣で見せてくれる。最後はソロで「君は僕だ」。もう完璧。

そしてアンコールは前田さんの卒業セレモニー。2ndDAYの「思い出のほとんど」同様、「夢の河」もまたこの日のため、この場面のため、MVで予告されていたとおりのメンバーのために作られた曲。河を渡るという歌詞に、白い舟というかゴンドラで送り出すという演出は、これは間違いないと思うけど「死出の旅路」が意識されてると思う。ファーストラビットとなって、乗り越えられるべき屍となる、「漂流教室」的には未来に蒔かれた種という比喩ということになる。前田さんは正にAKBの未来そのもの。

命あるもの、必ず死は訪れるものだし、意識するとしないにかかわらず、私たちは先人の屍を乗り越えて、今ここに立ってる。生かされてる。ならばこそ、私たちもまた、進んでそんな屍に加わろう、むしろ積極的にそう考えてみるのも悪くはない。

「桜の花びらたち」、この曲がこんなふうに聞こえるなんて気づけなかった。梶井基次郎を持ち出すまでもなく、日本人にとっての桜は死と直結してる。間違いなく卒業ソングなんだけど、桜の花びらが散るというたった一言がまとう意味空間は、そんな歌詞の描く世界を突き抜けるだけの力を持つ。

そして、死と再生の物語は紡ぎ出され続ける。アイドルというのは、死を前提とした生の輝きそのものなんだろう。