よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

MOTはWissenschaftかKunstlehreか・・・

2008年05月01日 | 技術経営MOT
学部時代、ドイツ経営経済学という古風な科目の教授は初講開口一番こう言った。確か鈴木英寿先生といったろうか。「経営学とはWissenschaftではなくてKunstlehreである。しかしWissenschaftが経営学を支えるのだ」と。

Kunstlehreとしての経営学は実践の学であるとかの先生は喝破し、うぶな学部生だった自分は、「そういうものか」と思った。Wissenschaftとは言うまでもなく求知・窮理の学問である。すなわち、science=学問一般であり、Kunstlehreとは技術すなわちtechnologyである。

日本語では科学技術というように、いっしょくたんにくくられてしまうがScienceとTechnologyは明確に異なる。Service Scienceの提唱者のジム・スポラーは、分かりやすく次のように書いている。

"Science is a way to create knowledge.
Technology is a way to apply knowledge and create new value.
Business model is a way to apply knowledge and capture value."

ズバリ、これなら分かりやすい。

さて、技術経営はScience≒WissenschaftではなくてKunstlehre≒Technologyを志向する。思いっきりはしょって、前者を学問的知識、後者を実践的知識と言ってよいだろう。

MOT専門職大学院には実務家教授というカテゴリーの教員が存在する。実践的知識を体系化して学生に伝える役割を持つ。汗まみれでビジネスの現場で練りこんできた悪知恵、もとい、プロフェッショナルな実践的知識を学生に向かって職業としての学問≒Kunstlehreを真摯に告白するからProfessorなのである。

自分のMOTアントレプレナーシップなる講座は、起業・企業を対象とするため、極めて世俗的、土着的なKunstlehreである。むせるような泥の臭いさえする。泥のなかでグチャグチャになって七転八倒してきたから、告白する息もさぞかし臭くなるだろう。

それやこれやで、鈴木先生といったか、今はもうとっくに引退しているであろう、ドイツ経営経済学の教授の言葉が身に沁みるのである。やはり、Kunstlehre≒Technologyを志向すればするほど、反作用的に技術経営には学問一般≒science≠科学の求知・窮理的な知が必要になってくるのだと思う。

対象に向かって現実的にアタマと手を動かすことが技術経営とするならば、アタマと手を支える足腰の知が学問一般≒scienceであるとでも言ったらよいか。果実を結ぶ葡萄の木が根を張る土壌のような知とでも言うべきか。

ドイツ経営経済学は日本では見る影もなく廃れ、昨今の経営学、技術経営学はアメリカ一辺倒だ。しかしながら、アメリカ系経営学に勝っているものがドイツ経営経済学にはあると思う。ドイツ経営学はすぐれて弁証的に論を構築する、その論理の済一性に、えもいわれぬ審美的な美しさがあるのだ。シュマーレンバッハの動態的貸借対照表理論はその精華だろう。有機的、あるいは生態的存在として企業を分析する視点は、シュマーレンバッハから始まった。そのドイツ経営経済学の系譜に少なからぬ影響を与えたマックス・ウェーバーこそ、今、Wissenschaftの一端に触れるため読まれなければならないと思う。

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