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自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

医療機器メーカーに求められる戦略の立て直し

2010年04月02日 | 技術経営MOT
とある医療機器メーカーの社長さんとお会いした。先端医療に食い込みをはかっているのですが、ヒット商品になるのかどうか、まったく不安で、いいアドバイスが欲しい人のことでした。

医療機器メーカーは戦略の立て直しが迫られているようです。これについては、Hope is on the Way
経済産業省の健康安心イノベーションプログラム担当による活動記録
がピリッとしたことを書いています。

<以下貼付け>

まずは医療機器市場全体のアウトルックから。

 世界の医療機器市場は2000年に1600億ユーロ、シェア内訳がEU 26%、米国37%、日本15%、その他22%であったのに対し、2005年の時点で全体の市場は1870億ユーロに拡大したにもかかわらず、内訳はEUが34%、米国が42%、日本が10%、その他14%と、世界の市場が伸びている中で相対的に日本のシェアが縮小傾向にあることがわかります。
 
 では、日本国内ではどうなっているかというと1985年前後、海外企業シェアが20%前後で推移してきたのに対し2007年には40%程度に倍増、それに正比例して国内企業の日本市場におけるシェアは少なくなっています。

 一体どんな問題が起因しているのでしょうか?

 少し前の資料ですが、この業界が抱える問題点を的確に指摘した資料が国家産業技術戦略検討会が平成12年4月にまとめた「医療機器産業技術戦略」にまとめられていました。いずれも大切であり解決しなればならない問題なので敢えて列記します。

・国による一元的・一貫した協力な研究開発支援体制の欠如
・組織的な医工連携システムの欠如
・国立研究所・国立大学医学部・国立病院における研究者のインセンティブがないこと
・臨床・教育における医用光学の重要性の認識が低いこと
・人材の流動性が低い
・ベンチャー企業が育ちにくい環境
・大学医学部と企業との共同研究が円滑でないこと
・迅速で質の高い臨床試験実施体制の未整備
・有効性、安全性、品質表か技術の未開発
・薬事法による規制、保険制度
・テクノロジー・アセスメントが行われない
・リスクの高い製品に対する素材・部材等の国内供給が困難なこと
・規制の国際未整合
・戦略的な知的財産権対策
・アジア地域への取り組みが不足

 そしてそれらの問題を認識するのと同時に、厚労省、文科省、内閣府、経産省でも様々な政策検討がなされてきました。バラバラに、バラバラに、バラバラに・・・そして10年後の今も問題点は何ら解決されてませんでした。


 がっかりだ。

<以上貼付け>

 しかし、がっかりばかりではいけない。現場のコンサルティングではいろいろは処方箋を書きますが、戦略に関するヒントほんの一部だけ、ここにも記しておきます。

世界の優良医療機器メーカーの基本戦略はプラットフォームによるロックイン。まず日本の業界慣行から離れて世界の動向を見ることが大事です。

1)プロダクト戦略
内=インテグラル(擦り合わせ)、クローズド、技術秘匿、外=モジュラー、オープン、標準化による製品アーキテクチャ。この2段構造で、内側のキモは隠しながら、外側は標準化して、他のシステムと連携しやすいようにオープン化してゆく。

2)知財戦略
プロダクト・イノベーションのゆきかたは、当然、内側の急所技術にはIPをかけて秘匿、保護する。技術軌道上に関所をつって防衛する。または関所から先は自社しかいけないようにする。先に書いたように、外側はモジュラー、オープン、標準化路線を採用して、ユーザーにとっても他のシステム、機器メーカーからも連携しやすくする。

3)Diffusion戦略
以上の相乗効果として普及戦略が立てられる。マーケティングとはプロダクトの見込み客づくりだが、その見込み客づくりを、特許、標準化を駆使する戦略的知財マネジメンでおこなってゆく。

***

もちろん、イノベーションエコシステムとして、先端医療分野での産学公連携は必須。ただし、タコツボ的連携はダメです。標準化、知財、医療イノベーション、戦略を総合的に見れる目利きというか、参謀役が必要です。そのためには、大学病院はオペレーションを立て直すとともに、R&D機能の根っこになる知財部や産学連携部門を強化してゆくべきでしょう。


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