よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ

2010年03月26日 | 技術経営MOT
「スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ」の案内です。
医療サービス・イノベーションの視点から有意義な議論が展開されてる模様です。

<以下貼付け>

昨年度まで12回にわたって開催いたしましたTRレッスン&レクチャーシリーズに変わり今年度から「スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ」を開始いたします。昨年度に、内閣府は先端医療開発特区(スーパー特区)(平成20-24年度)として公募により24課題を選択しました。日本の最先端に位置付けられるこれらの課題のいくつかにつき、その内容、実用化実現の計画、課題等につき話していただき、討論したいと考えています。第2回としまして下記の講演会を開催いたしますので、是非ご参加いただきたくご案内申し上げます。

また、今後のスケジュールにつきましても、以下に予定を記載していますので、ご参照下さい。第3回目以降に関しましても順次ご案内申し上げます。

「スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップ」の検討シリーズ第2回講演会 


講師: 浜松医科大学光量子医学研究センターゲノムバイオフォトニクス研究分野 
教授  間賀田 泰寛 先生

課題名:【メディカルフォトニクスを基盤とするシーズの実用化開発】

日時: 4月21日 (水) 18h30~

場所: 東大医科学研究所2号館2階会議室
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/access/access/
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/access/campus/ (地図の10番の建物です)

参加費: ¥5,000 (健康医療開発機構会員および学生は無料)

定員: 50名

参加ご希望の方は事務局(sanka@tr-networks.org)までご連絡下さい。
特に申し込み受付のご連絡はいたしませんが、定員になり次第申込を締め切りますので、ご参加いただけない場合には、事務局よりご連絡いたします。

///////////////////////////////////////////////////////

スーパー特区・先端医療実用化へのロードマップの検討シリーズ

昨年度まで12回に渡り実施してきたTRレッスン&レクチャーシリーズでは、TRに実際に取り組む方々の知見・ノウハウを共有し、具体的なTR推進のイメージを描くという点において一定の成功を収めました。一方、このシリーズの運営、あるいは、ここ数年間のTRを取り巻く状況・意識の変化を通じて、新しい先端的な医療を患者・社会に届けるためには、もう一段階具体的かつ未来指向の視点に切り替えた取組を行うことが必要とされてきていると感じております。昨年度成功裏に実施したシンポジウムの副題を「医療化のロードマップ」としたのも、まさにこのような意識の現れによるものでした。

そこで、今年度は、「TRレッスン&レクチャーシリーズ」に代わり、「先端医療実用化へのロードマップ」を開催し、そこでの議論、検討、あるいは作業を通じて、具体的に近い将来に先端医療を医療化するためのロードマップを描くことの一歩を踏み出したいと考えております。

昨年度に、内閣府は先端医療開発特区(スーパー特区)(平成20-24年度)として公募により24課題を選択しました。本特区では、我が国での優れた基盤研究の速やかな実用化を目指してiPS細胞応用、再生医療、革新的な医療機器の開発、革新的バイオ医薬品の開発、国民保健に重要な治療・診断に用いる医薬品・医療機器の研究開発
(がん・循環器疾患・精神神経疾患・難病等の重大疾病領域・希少疾病領域その他)の幅広い5分野での研究課題が選ばれました。特区選択課題では、公的資金のより柔軟な運用が可能となり、又開発を進めることについて医薬品医療機器総合機構(PMDA)との早期からの話し合いの機会を得ることが可能となります。現在未だ内容が明らかではありませんが、開発に必要な経費についても特別に措置され得ることも期待されています。

選択された24課題に関わる開発研究が次世代医療に貢献できる様なものに発展することは、日本の医学・医療という観点はもとより、経済的観点からも極めて重要と位置付けられています。24採択課題に関わっているNPO会員も多く、本年度は日本の最先端に位置付けられるこれらの課題のいくつかにつき、その内容、実用化実現の計画、課題等につき話していただき、討論したいと考えます。

スケジュール:

1.京都大学 放射線腫瘍学・画像応用治療学 教授  平岡 真寛 先生 【終了いたしました】

3月25日 (木) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【イメージング技術が拓く革新的医療機器創出プロジェクト-超早期診断から最先端治療まで】

2.浜松医科大学光量子医学研究センター
ゲノムバイオフォトニクス研究分野 教授  間賀田 泰寛 先生

4月21日 (水) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【メディカルフォトニクスを基盤とするシーズの実用化開発】

3. 北海道大学大学院 医学研究科 教授  白土 博樹 先生

5月21日 (金) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【「最先端放射線治療技術パッケージング」によるミニマムリスク放射線治療聴き開発イノベーション】

4. 国立循環器病センター研究所副所長  妙中 義之 先生

6月18日 (金) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関する横断的・総合的研究】

5. 国立長寿医療センタ 室長  中島 美砂子 先生 

7月8日 (木) 18h30~
東大医科学研究所2号館2階会議室
課題名:【歯髄幹細胞を用いた象牙質・歯髄再生による新しいう蝕・歯髄炎治療法の実用化】

<以上貼付け>

起業家、社会性、資本主義をめぐる議論

2010年03月26日 | ビジネス&社会起業
すべての起業家は「社会的」なのだ、とStanford Social Entrepreneurship ReviewのなかでEwing Marion Kauffman FoundationのCEO,Carl Schramm は書いています。

その全文はこちらです。

ちなみにCarl Schrammは、 The Entrepreneurial Imperativeの著者でもあり、Good Capitalism, Bad Capitalismを共著しています。Carl Schrammの言説は、起業という社会現象を資本主義という体制から俯瞰して議論するものであり、注目に値します。

さて、Carl Schrammに限らず、社会民主的な伝統が強い欧州では、社会起業と起業を峻別する傾向が強いのに対して、アメリカでは、社会起業と起業をことさら区分すべきではない、という議論が存在してきました。

もちろんこのブログでも何回かとりあげたように、アメリカでもsocial entrepreneurはブームのような状況で、fashionable な響きさえ帯びています。金融資本主義や強欲資本主義の暴走の成れの果てにリーマン・ショック、そしてそれに続く長期的な資本主義の衰退が見て取れる、とする立場からは、あたかもSocial Entrepreneurshipを、それらに対する対置概念として位置づけたいとする願望もなくはないのでしょう。


<以下貼付け>

Over the past decade or so, the term social entrepreneur has become a fashionable way of describing individuals and organizations that, in their attempts at large-scale change, blur the traditional boundaries between the for-profit and nonprofit sectors. Given the ceaseless appearance of innovations and new institutional forms, we should welcome a new term that allows us to think systematically about a still-emergent field.

One danger, however, is that the use of the modifier social will diminish the contributions of regular entrepreneurs―that is, people who create new companies and then grow them to scale. In the course of doing business as usual, these regular entrepreneurs create thousands of jobs, improve the quality of goods and services available to consumers, and ultimately raise standards of living. Indeed, the intertwined histories of business and health in the United States suggests that all entrepreneurship is social entrepreneurship. The pantheon of model social entrepreneurs should thus include names such as railroad baron Cornelius Vanderbilt, meatpacking magnate Gustavus Swift, and software tycoon Bill Gates.

<以上貼付け>

日本の「社会起業」に対する見方は、欧州や米国とも異なり、情緒的なものが多いように見受けられます。

先日、Ashoka財団のBill Draytonさんと議論した際にもこの点があがりました。本質は起業という行為であり、ビジネスモデルとステークホルダーとの関係性のなかに「社会性」が埋め込まれていれば、営利企業とて社会的企業であり、そのような企業を創業する起業家は社会起業家である、という点で議論は一致しました。

またBase of Pyramidの健康に深く関与している社会的企業として名高いオーロラボ(Aurolab)社を起業したDavid Greenさんも、「私は、最近は自分たちのことを社会的企業とはあまり言わなくなりました。高ボリューム・低マージンモデルのビジネスを市場の中で行っていることが社会に受け入れられているだけなのです」と言っていました。

Bill DraytonさんやDavid Greenさんとの対話してみて考えたことについては、こちらで掘り下げて書いています。

「社会性」という概念は、企業の外縁部にあるときには、フィランソロピー(社会貢献活動)、CSRとして位置づけられますが、外縁部ではなくビジネスモデルやステークホルダーとの関係のど真ん中に埋め込まれるときに、企業は必然的に「社会的企業」となってゆくのでしょう。しかし、それが成就された暁には、「企業」と「社会的企業」を区別するのは、さほど有意味なことではなくなるのです。

資本主義の主要なプレーヤーはイノベーションとそれに伴なうリスクを引き受ける起業家です。その起業家が創発させる「企業」のあるべき姿と、そこにいたるプロセスである「起業」のスタイルが問われていると思われます。これらが変化すれば、必然的に資本主義のスタイルも変化するからです。

旧態依然としたゾンビのような企業がぬくぬくと保護されて延命している社会では資本主義は変化できません。

このような文脈では、起業家育成とは「まっとうな」資本主義のfostering(涵養、育成)と同義なのです。金融資本主義や強欲資本主義に蹂躙されているアメリカで、「まっとうな」資本主義をはぐくむための起業家育成がブームになっているのはコインの表裏ということです。この動向については、アメリカ社会のダイナミズムを直視すべきでしょう。

さてGlobal Entrepreneurship Monitorのレポートにもあるように、日本の起業動向は長期低迷傾向が続いています。社会のダイナミズムが端的に顕れる領域が起業なので、この傾向を素直によめば、日本資本主義の自己再組織化、卑近な言葉でいえば「変化」は活発とは言えません。

日本は、アメリカの直接的な影響下にありますが(「属国論」など参照)、「まっとうな」日本的資本主義に変化させてゆくためには、「まっとうな」起業家の輩出が待たれるところです。「まっとうな」起業家はすべて社会的な存在であり、「まっとうな」起業家の溌剌たる活動が「まっとうな」社会の再構築、ひいては社会原理としての資本主義の再定義に結びついてゆきます。