よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

医療機器まわりの医療サービスイノベーション

2010年03月15日 | 技術経営MOT
裾野が広い医療サービスのなかででも加工物の技術的進化によってもたらされる新しい技術群をいくつかピックアップ。医療機器イノベーション界隈のセミナーやシンポではよく出るテーマ。

○早期診断技術
→生体内の分子レベルでの機能変化をとらえ疾病の早期発見、早期診断サービス
(悪性腫瘍等治療支援分子分子イメージング機器など)

○低侵襲治療機器技術
→薬剤と医療機器の融合による低侵襲、効果的な医療サービス
(深部治療に対応した次世代DDS型治療システムなど)
→医療スタッフが使いやすい手術支援機器導入によってQOL向上
(インテリジェント手術機器)

○再生医療技術
→失われた組織や臓器の再生技術
(再生評価技術、心筋再生治療技術など)

患者の便益を増すような医療サービスを医療の現場で展開するためにはいったいなにが必要なのか?開発側、審査側、医療側から医療イノベーションの課題は:


<開発サイド>
創薬ベンチャーの成功確率は千にひとつもない。巨大なリスクを取り、膨大な投資をして、知財まわりを固めて、創薬に関わる特定フェーズにコミットしても上市されるまでには15-25年はかかり、投資の回収のメドが極端につきにくい。また不明確、煩雑で時間を要する当局の審査に対応するリスクも大きい。

このリスクをベンチャービジネスとVCサイドを中心として負担するのは過大。よしんば、そこに大学をかませて、産学連携スキームを立ち上げたところで、この構造的な問題は解消されない。創薬ベンチャーが日本で不振をかこっているひとつの理由は、現行のやりかたでは負担しきれないほどリスクが巨大化しているから。

<審査サイド>
新しい技術に基づく新治療方法の提案をしても、それを審査し、有効性、安全性を検証・反証する手法が開発サイドと共有されていない。ようは、共通言語がない状態のなかで、審査する側も合理的な意思決定はできない。このような制限のなかでの「意思決定」は、決定しないことと、決定を先延ばしにすることがまかり通ってきた。

臨床導入が遅れ、欧米に先を越されてしまう事例は山ほどある。屍ごろごろ。ドラッグラグとしてもこの問題は叩かれている。評価・審査体制が「目づまり」をおこしていたのでは、日進月歩で発展を続ける医療の先進技術が普及フェーズにまで達しない。

<医療サービス提供者サイド>

大学病院など高機能病院にはR&D機能がある。GLP、GMP、GCPに準拠した体制の中で、臨床試験、PMSなどいろいろな局面で開発者(製薬・医療機器、材料メーカーなど)と協業して初めてR&Dは成り立つ。しかし、そのためのインセンティブはまったくもって不十分。診療報酬制度のなかでももっと手厚くインセンティブをデザインしないとダメ。

R&Dドライバーの一翼を担う高機能病院では知財・産学連携を戦略的に推進する部門を立ち上げることを担保するインセンティブが必要だ。

                   ***

いままでは開発、審査、提供サイドがバラバラにやってきた。共通言語もタコツボ的で共通の知識基盤があるとは言えない。

開発、審査、提供サイドを一気通貫してイノベーション生態系をマネジメントする知のプラットフォームがやはり必要だ。その「知のプラットフォーム」として、医療レギュラトリ・サイエンス(Healthcare Regulatory Science)のような新しい体系が求められている。

医療機器まわりの医療サービスイノベーションは、医療レギュラトリ・サイエンスなどの一気通貫イノベーション支援型の知の体系を要請している。